WitchHunt"

シナリオ概要

このシナリオは、KADOKAWA/enterbrain ログインテーブルトークRPGシリーズ ”新クトゥルフ神話TRPG”および”クトゥルフ2020”に対応した非公式のオリジナルシナリオである。ただし一部のデータについては"クトゥルフ神話TRPG"を参照する必要がある。作りたての探索者2〜4人向けにデザインされている。プレイ時間は探索者の作成時間を含まない場合、4〜5時間程度だろう。
このシナリオは1692年のマサチューセッツ州セイレム村で起こったセイレム魔女裁判をテーマにしている。探索者たちはほんの遊びのつもりで参加した降霊会を発端として、セイレムの魔女を巡る騒動に巻き込まれていく。




本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『新クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「新クトゥルフ神話TRPG ルールブック」


※注意:以下にはシナリオのネタバレが含まれます。























キーパー向け情報

このシナリオのテーマはダニッチのはじまりの物語である。1692年のセイレム魔女狩り騒動が起きた年、危機を察した「信じる者たち」がセイレムを脱出し、ミスカトニック川上流の渓谷に新たなる安息の地を築き上げる。その過程をモチーフにプレイ可能な物語に落とし込むため、本シナリオには独自の設定や解釈、史実と異なる事柄などが含まれることを予めご了承いただきたい。
史実にあるセイレム魔女裁判の出来事やセイレムに住むランドルフ・カーターの祖先の話が登場する原作「銀の鍵」、セイレム出身の魔女ケザイア・メーソンが登場する「魔女の家で見た夢」はこのシナリオを理解する上で役に立つだろう。セイレムの魔女事件をもととした映画「クルーシブル」もおすすめである。またセイレムに住む「信じる者たち」の祖先と彼らのダニッチへの移住についてはクトゥルフ神話TRPGサプリメント「ダニッチの怪」に記載された設定を参考にしている。
本シナリオでは大勢のNPCが登場する。キーパーは予め彼らの行動や発生するイベント、それにより物語にどんな影響を与えるのかを前もって確認しておく必要がある。本シナリオは探索者が行動可能な範囲が広く、探索者の行動によって物語の進行が大きく変化する。そこで以下には想定される大まかたストーリーラインを提示する。キーパーはこれを元にイベントの管理と物語の進行を整理するとよい。尚、1日あたりおよそ3〜4箇所を探索すると時間が経過して日が暮れる。キーパーは探索者たちの行動に応じて、適度にゲーム内での時間を調整する必要がある。

プレイヤー向け情報

このシナリオの探索者はセイレム周辺に住む農耕的自然崇拝”信じる者たち”に属する信徒の12歳の息子または娘であり、セイレムと”信じる者たち”の信仰になじみがあるものとする。12歳の探索者を作成する際のルールは”クトゥルフ2020” P.70の「年少探索者の創造」ルールを採用するかキーパーの裁量で設定するかしてもよい。

NPCの立ち絵画像について

NPCの立ち絵画像をご利用の際は、以下をお守り頂くようお願い致します。

・本シナリオページに掲載しているNPC立ち絵画像の著作権はおまつりミート@NIPque様に帰属します。
・改変、二次配布、別シナリオでの使用はご遠慮ください。
・リプレイ動画、ネット配信などでご使用の際は著作権者を表記お願いします。
・営利目的の使用はご遠慮ください。

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シナリオの導入

形式の上では、この物語の開始は史実上のセイレムで一連の出来事が始まった1692年1月末に設定されている。この物語はマサチューセッツ州セイレムから始まる。"信じる者たち"の信徒である探索者たちはある夜、村の中心部に住む幼馴染のアビゲイル・ウィリアムス(11)とエリザベス・”ベティ”・パリス(9)に誘われて、深夜に村はずれの森の中で執り行われる降霊会に参加する。アビゲイルは幼くして両親を亡くし、叔父の家で3歳年下のベティと共に暮らしている。アビゲイルとベティは、この「未来を見ることが出来る」という儀式を南アメリカの先住民で、彼女たちの世話役のティテュバから教わったという。彼女たちはこの儀式で「未来の旦那さま」を見ようとしたり、恋占いをしようというのだ。いわゆる現代で言うところの「占い」や「おまじない」に類する他愛のないものである。
この日の降霊会には探索者たちとアビゲイル、ベティ、村の有力者の娘であるアン・パットナム・ジュニア(12)が集まる。”信じる者たち”に属する探索者たちとは違い、アビゲイル、ベティ、アンは清廉潔白な清教徒のグループに属しており、特にベティは父親が村の教会の牧師という厳格な家柄である。そんな彼女たちにとってこのような儀式は禁じられたものではあったが、そのような規律はかえって多感な時期にある彼女たちの好奇心を刺激して夜中にこっそり家を抜け出しやってきたのだ。
背の高い老木に囲まれた森の奥に開けた広場に石のモノリスが立っており、降霊会ではその石を囲んで呪文を唱えながらダンスを踊るらしい。モノリスの近くの木々には茶色い中型の鳥、ウィップアーウィル(夜鷹)が何匹かとまっている。〈オカルト〉に成功した探索者は「人が死を迎える時、ウィップアーウィルが周囲に集まり死者の魂を捉えようと待ち受ける」という言い伝えを思い出す。
アビゲイル
アビゲイル・ウィリアムス(11歳)
STR 35 CON 45 SIZ 30 INT 70

POW 80 DEX 55 APP 65 EDU 25

正気度 80 耐久力 7

ダメージ・ボーナス:-1

技能:回避 60% 聞き耳 45%、天文学 11%、自然 20%、図書館 15%

ベティ
エリザベス・”ベティ”・パリス(9歳)
STR 20 CON 30 SIZ 25 INT 80

POW 35 DEX 50 APP 75 EDU 15

正気度 35 耐久力 5

ダメージ・ボーナス:-2

技能:回避 50、図書館 10%、歴史 15%、天文学 6%、自然 15%

アン
アン・パットナム・ジュニア(12歳)
STR 40 CON 40 SIZ 40 INT 75

POW 55 DEX 60 APP 70 EDU 30

正気度 55 耐久力 8

ダメージ・ボーナス:0

技能:回避 50%、芸術(絵画) 15%、聞き耳 35%、図書館 25%


降霊会の呪文

降霊会に参加するにあたり、探索者たちはアビゲイルたちから次の呪文を教えられる。キーパーが探索者に公開する呪文の詳細は次のものである:
降霊術:
この呪文は夜に行う必要がある。任意の人数の参加者がモノリスを囲み、合計20点のマジックポイントを消費し、踊りを踊る。参加者は1D3の正気度ポイントを失う。儀式の参加者が知りたいことを何でも教えてくれる精霊を召喚する。

降霊術の真実
キーパー向けの情報。この呪文は他の神格の招来と同様の呪文で、この呪文の真の名は、ニャルラトテップの悪意のない姿の1つである「角を持つ男」を呼び出す〈角を持つ男の招来(Call Horned Men)〉である。この呪文を唱えた場合、ニャルラトテップは「角を持つ者」として顕現し、知識の神として”その望みの善悪に関わらず”召喚者が知りたい知識のすべてを授けてくれる。


降霊会の儀式

準備が整い儀式が始まると、しばらくしてモノリスの正面にうっすらと光る人型が現れる。やがて光は次第に収束し1人の少女が姿を現す。彼女は褐色の肌をした整った顔立ちをした探索者たちと同年代ほどの女の子で、その頭部には小さな角が生えている。そこにいた者たちには彼女の神秘的な容姿を非常に魅力的に感じる。〈人類学〉や〈考古学〉に成功した探索者は彼女の浅黒い肌と整った顔立ち、優雅な立ち居振る舞いから古代エジプトの王族の姿を連想するだろう。アビゲイルはいち早く彼女に質問を投げかける。「わたしたちは未来が知りたいの」。彼女がそう願うと現れた少女は参加者たちに向けて右手の平を掲げて何か呪文のようなものを唱える。そして途端に降霊会の参加者たちは意識を失い、次の2つの夢を見る:
<絞首台の夢>
バサバサとウィップアーウィルが羽ばたく音で探索者たちは目を開く。降霊会の参加者たちはいつの間にかセイレムの広場に立っており、周辺の木々には大量のウィップアーウィルが集まって耳障りな鳴き声をあげている。広場の中央には絞首台が複数設けられており、信じる者たちが列を作り教会のローブを着た男たちに先導されていく。彼・彼女たちは1人、また1人と首に縄をかけられて絞首台に吊るされていく。彼・彼女らの無実の訴え、悲痛な叫びが周囲にこだまする。〈目星〉ロールに成功すれば、その中に自分の両親の姿も発見できる。その光景に、探索者たちは0/1D2の正気度ポイントを失う。

<約束の地>
そしてもう一度場面が変わる。そこでは探索者たちは満天の星空のもと、見知らぬ丘の頂上に立っていた。その場所からは森に囲まれた深い渓谷を一望することができた。誰かが指を差した空の先を見上げると、流れ星がひとつ、またひとつと流れては消えていく。


──約束された安息の地。そんな言葉が思い浮かぶ。

やがて目を覚ますと、探索者たちは儀式を行った森で倒れている。周りには他の参加者もいる。彼女たちは探索者と同じように目を覚まして状況を確認するが、アビゲイルとベティの2人は倒れたままである。探索者たちが彼女たちの様子を伺うと彼女たちは突如その場で苦しみ始める。アビゲイルとベティは恐ろしい形相を浮かべて全身をひどく痙攣させ、腕や足の関節をねじり交差させながら地面をのたうち回るのだ。幼馴染のこのような異常を目撃した探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。その時、子供たちを呼ぶ声が聞こえてきて村の方からアビゲイルの叔父でベティの父親であるサミュエル・パリスと医者のグリッグスを含む大人たちがやってくる。彼らは深夜に家を抜け出した子供たちを探していたのだといい、パリスは豹変したベティを見つけると慌てて駆け寄って声をかける。こうしてアビゲイルとベティの2人はグリッグスの病院へと運ばれ、無事だった子供たちは各々の家へと帰されることになる。
角を持つ少女
角を持つ少女
儀式により現れるニャルラトテップの化身。
「新クトゥルフ神話TRPG P.326-327」の「ニャルラトテップ、這い寄る混沌」を参照。


禁忌の対価

降霊会の騒ぎの後、探索者たちは両親に連れられて、アブサラム・ウェイトリーの家へと行く。そこには信じる者たちの指導者であるアブサラム・ウェイトリーと助手のジョン・ビショップ。ジョンの家系で女性たちの代表である若きマザー・ビショップが待っている。アブサラムは何はともあれ探索者たちが無事であって良かったと言うと、もう2度とあの儀式は行わないようにと念を押す。そしてマザー・ビショップが前に出る。
彼女は角を持つ者のことを「知りたいことを何でも教えてくれる知識の神だ」と説明する。その神は善良な者には善良なことを、邪悪な者には邪悪なことを、ただ求められるままに無尽蔵の知識を授けてくれる。しかし人は誰しもが心のなかに少なからず邪悪さを持っており、故にそれは非常に危険なものだ。
マザーは彼女のことを邪神ではなく「あれは邪神よりも邪悪な、無関心の神だ」と評して、探索者にもう二度と彼女を呼び出さないと約束をさせる。
マザー
マザー・チャリティ・ビショップ(年齢不詳)
STR 55 CON 90 SIZ 55 INT 85

POW 100 DEX 50 APP 80 EDU 70

正気度 80 耐久力 14

ダメージ・ボーナス:0

技能:天文学 45%、威圧 80%、クトゥルフ神話 12%、オカルト 65%、説得 60%、自然 45%、心理学 60%、男たちを尻に敷く 90%、近接戦闘(キック) 90%

呪文:神格との接触/ニャルラトテップ、角を持つ男の招来、布石、他




探索パート

この後、二度と降霊術を行わないことをしぶしぶ約束し、探索者たちは一ヶ月の謹慎を命じられて家に帰される。そしてその謹慎が明ける1692年3月1日。この日からようやく探索者たちは家の外に出る許可を得ることができるようになる。謹慎期間中、探索者たちは自身の両親や家族から、友人であるアビゲイルやベティの情報を欲しがるかもしれない。しかし信じる者たちの大人は、清教徒たちとの関わりを持たず、彼女らの事情には疎い。大人たちは揉め事を起こさないようにとだけ忠告する。
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アブサラム・ウェイトリー

信じる者たちの指導者であるアブサラム・ウェイトリーはセイレムでガラス製造業を営んでおり、彼の家はその傍らにある。彼を尋ねると、彼の家から出ていく清教徒の審問官たちの姿を目撃することになる。
アブサラムは焦燥した様子で、探索者たちが何をあったか尋ねれば、セイレムの村で魔女狩りが始まっていることを教えてくれる。あの降霊会の後、病院へ運ばれたアビゲイルとベティに加え、村の有力者の娘であるアン・パットナム・ジュニアが痙攣症状を起こしはじめた。医師のグリッグスは彼女たちの症状を悪魔憑きによるものと断定し、教会は彼女たちに悪魔をとりつかせた魔女を血眼になって探しているのだという。魔女狩りを先導するのは、アビゲイルとベティの保護者であるサミュエル・パリス牧師だ。ボストンから3年前にセイレムに移り住んだ敬虔な清教徒で、パリスは彼が雇っていた世話役のティテュバを魔女と断定して捕らえたのだ。
「問題はここからだ」と彼は言う。清教徒の審問官たちから尋問を受けたティテュバは、村には他にも8人の魔女がいることを告げ、サラ・グッドとサラ・オズボーンの名前を上げる。最悪なことに、ティテュバが告発した2人は共に”信じる者たち”の信徒だった。こうして必然的に異教徒でもあり、魔女の疑いがかかる2人が所属する”信じる者たち”へと審問官たちの疑いの目が向かうことになったのだ。
資産家のサラ・オズボーンは既に審問官たちに捕まり、彼らは行方不明のサラ・グッドを探している。アブサラムは探索者たちに、あまり清教徒の者たちを刺激しないようにと伝える。もし探索者たちが望めば、彼はサラ・オズボーンとサラ・グッドに関する情報を教えてくれる。詳細は「村での情報」の項目を参照すること。
pentagram
アブサラム・ウェイトリー(65歳)
STR 40 CON 55 SIZ 65 INT 70

POW 75 DEX 50 APP 55 EDU 60

正気度 75 耐久力 12

ダメージ・ボーナス:0

技能:信用 40%、法律 80%、歴史 85%、説得 75%、経理 80%、クトゥルフ神話 7%、図書館 50%


村での情報

探索者たちに協力的な人物(NPC)に話を聞いたり、セイレム村の近辺で〈聞き耳〉または〈信用〉技能を使っい聞き込みをすることで、次のような噂や情報を入手することができる。キーパーは物語の進行に応じて、これらの情報を探索者に公開する。:
<魔女狩りについて>
アビゲイル・ウィリアムスとベティ・パリスが降霊会の後、痙攣症状に苦しんでおり、後に彼女たちと一緒に降霊会に参加していたアン・パットナム・ジュニアも発症した。清教徒の審問官たちは彼女たちの世話役であるティテュバを魔女として捕らえ、彼女はさらにサラ・グッドとサラ・オズボーンを魔女であると告発した。

<サラ・オズボーンについて>
サラ・オズボーンは資産家の夫人ではあるが、三度の離婚歴があり、嘘つきであるとの評判である。妖艶な魅力を醸し出す彼女は確かに、魔女と言えないこともない。

<サラ・グッドについて>
サラ・グッドはボロを着たボサボサ髪の物乞いのような姿で、魔女と言われれば違いない。彼女はいつも一匹の黒猫を連れており、時折、セイレム北西にある森の近くで目撃される。彼女が森に入っていくのを見たという証言もある。


マザー・ビショップの夢

ビショップ一族は信じる者たちの高位のメンバーの一族で、もう1つはウェイトリーの一族である。ビショップ一族の現在の当主はジョン・ビショップで、彼はアブサラム・ウェイトリーの助手を努めている。
彼の家を尋ねると、玄関先に出てきたジョンから、現在マザー・ビショップが重要な儀式の最中であるから帰るようにと告げられる。ジョンはマザーが授かったという夢について説明する。マザー・ビショップは数ヶ月ほど前から、このセイレムの地に大きな災いが降りかかる夢を見るようになる。そこでは大勢の罪なき人々が犠牲になり、疑心暗鬼と恐怖がはびこり、セイレムは炎に包まれるのだという。そんな中、マザーの夢は信じる者たちに、はるか北西にあるという避難所を約束する。
「清教徒たちの間では魔女の仕業だのと、疑心暗鬼が広がり始めているとも聞く。何も起こらなければ良いが」。
彼は例の降霊会の後、少女たちが悪魔憑きのような症状を発症したことについて、清教徒たちが犯人探しを始めていることを探索者たちに話す。信じる者たちは普段、清教徒たちとは距離を置いている。ビショップの一族もこれは同じであり、これ以上詳しい話を聞きたい場合は、信じる者たちのリーダーであるアブサラムに話を聞くと良いことを教えてくれる。
pentagram
ジョン・ビショップ(43)
STR 60 CON 45 SIZ 60 INT 65

POW 85 DEX 45 APP 45 EDU 65

正気度 70 耐久力 10

ダメージ・ボーナス:0

技能:天文学 45%、医学 55%、薬学 70%、信用 50%、説得 75%、オカルト 40%、クトゥルフ神話 6%、図書館 70%


アン・パットナム・ジュニア

アンには彼女の家か探索者たちが教会へ向かう道中で出会うことになる。探索者たちがそのどちらへも向かわず村を散策している場合はキーパーは適当なタイミングで彼女に遭遇させると良いだろう。彼女は探索者たちに会いたかったといい、教会で治療を受けているアビゲイル、ベティに会いに行こうとしていると教えてくれる。「あなたたちは無事だったのね、しばらく見ないから心配してたわ」。アンは探索者たちまで発症していたのではないかと心配していたと伝え、探索者たちが無事であるというとほっと胸をなでおろす。
アビゲイルやベティたちは悪魔祓いのため教会に連れて行かれており、アンも彼女たちに一ヶ月近く会っていないという。「アビーやベティに会わせてもらえないか、教会のパリス牧師に頼んでみようと思うの」。彼女はこれから教会に行ってみるつもりであるといい、一緒に行かないかと誘ってくれる。

ドクター・グリッグスの病院

降霊会で倒れたアビゲイルとベティが最初に担ぎ込まれた病院に赴くと、医師のグリッグスが探索者たちに対応する。ドクターは診察の結果、彼女たちの症状が魔女によって呼び出された悪魔によるものだと断定した。彼女たちの症状は病院では手に負えず、悪魔払いの儀式を行うために彼女たちを教会へ移送したのだと言う。

教会

教会には牧師であるサミュエル・パリスと清教徒の審問官が詰めている。教会にはアビゲイルとベティが運ばれている。彼女たちはサミュエル・パリス牧師たちによる悪魔払いを受けているが、一向にして症状は改善していない。探索者たちが友人への面会を望む場合、パリス牧師は悪魔に取り憑かれて苦しむ彼女たちの姿を友人である探索者に見せるわけにはいかないと要求を拒む。
2人は教会の一室に捕われており、彼女たちに会うには最もらしい主張をしてパリスを言いくるめるか(〈言いくるめ〉または〈信用〉技能の1/2に成功する必要がある)小屋の窓などから忍び込む必要がある。小屋の窓には鍵がかかっており、忍び込むには〈忍び歩き〉または〈隠れる〉に加えて〈鍵開け〉に成功する必要がある。

◆アンの発症
アンと教会に行った場合、パリス牧師との話の途中でアンが突然発症する。彼女はアビゲイルたちと同様に悲鳴を上げて地面に倒れ込み、全身を痙攣させる。彼女を襲う異常な事態に、探索者は0/1D2の正気度ポイントを失う。
パリス牧師はアンに駆け寄ると必死に彼女を抑えようとする。しばらくしてアンの発作は収まるが、彼女は以前意識を失って時折苦しそうな声を上げる。パリス牧師は探索者たちに一緒にアビゲイルたちが治療を受けている部屋へと運ぶようお願いする。
pentagram
サミュエル・パリス牧師(39歳)
STR 70 CON 50 SIZ 70 INT 75

POW 40 DEX 50 APP 60 EDU 75

正気度 40 耐久力 12

ダメージ・ボーナス:+1D4

技能:聞き耳 70%、経理 40%、心理学 65%、説得 55%、図書館 45%、歴史 70%、オカルト 30%

部屋の中ではアビゲイルとベティがそれぞれベッドに体をロープなどで縛り付けられている。彼女たちに意識はなく、時おり苦しそうにうわ言をつぶやくだけだ。幼馴染たちの変わり果てた姿を見た探索者はショックを受け0/1D2の正気度ポイントを失う。
彼女たちは正常な状態になく会話は不可能であるが、〈聞き耳〉ロールに成功すれば、彼女たちの言葉から「ブラウン・ジェンキン」「魔女」「アザトース」といった言葉を聞き取ることがでる。さらには彼女たちが「ネズミがやってくる」としきりに怯えていることが分かる。〈アイデア〉ロールに成功すれば「ブラウン・ジェンキン」というのが「ネズミ」の名前のようなものであること推測できる。「ブラウン・ジェンキン」や「アザトース」についてサミュエルに尋ねても、彼は魔女の関わる何かであることしか知らないと答えるだけである。
しばらくすると彼女たちは落ち着き、眠りに落ちる。サミュエルが面会を打ち切るか、忍び込んだ場合はそのことが彼にバレるなどにより、探索者たちは病室から追い出されることになる。「分かっただろう。これが魔女の所業なんだ。僕たちは彼女たちを救うため、魔女を探さなくてはならない。そしてすまない。これ以上、君たちに彼女たちが苦しむ姿を君たちに見せるわけにはいかない」と彼は言う。

行き倒れの愛猫家

このイベントは探索者がセイレム村をうろついている間に発生する。なるべく1日目の序盤など、探索があまり進んでいない段階で差し込むのが良いだろう。探索者たちは道端のベンチに突っ伏して横になっている長身で大柄な男の姿を目撃する。年齢は20代半ばほどで、黒いスーツにコートを羽織っている。彼の近くを通り過ぎようとしたところで、探索者は彼の腹がと大きく鳴る音を聞く。
探索者たちに気づいた男はムックりと起き上がる。縦に長い大きな顔が特徴的だ。彼は最近セイレムに越してきた売れない小説家で、ここのところヒットがなく、さらには自宅で飼っている愛猫につぎ込みすぎたせいで貯金が底をついてしまったのだという。セイレムに越してきたのも、都会よりも猫たちにとって居心地の良さそうな田舎を求めてのことである。猫の餌だけは欠かすことがないものの、彼自身は数日間何も食べていないらしい。猫のために生きているという彼は、猫を残して餓死するわけにはいかないと探索者たちに食料を懇願する。名前を聞かれれば、彼はエドマンド・カーターと名乗る。彼は「カーター」の名の指すとおり、原作に登場するランドルフ・カーターの祖先にあたる人物である。猫好きな設定もそれによる。
彼に食べ物を恵んであげた場合、この恩は絶対忘れないと探索者たちに礼を言い、腹を満たした彼は愛猫の待つ自宅へと帰っていく。ただし、もしここで探索者が食料として彼に海産物を与えてしまった場合、海産物が大の苦手な彼は驚き、即座に発狂する。1D10を振り、短期の一時的狂気表の効果を適用する。この後、彼は愛する猫が待つ自宅へと走り去っていくだろう。
pentagram
エドマンド・カーター(27歳)
STR 65 CON 75 SIZ 85 INT 70

POW 90 DEX 65 APP 70 EDU 80

正気度 50 耐久力 16

ダメージ・ボーナス:+1D4

技能:エキセントリックな芸術を高く評価する 43%、歴史 50%、図書館 65%、聞き耳 40%、クトゥルフ神話 2%、考古学 20%、信用 10%、経理 30%、説得 40%、目星 50%、猫の世話をする 80%、猫の言葉を理解する 37%、猫にひっかかれる 60%

魔術的な品物:銀の鍵


黒い森/サラ・グッドのコテージ

このイベントは探索者たちが村を探索している途中でタイミングを見計らいキーパーが挿入する。アンの発症やエドマンド・カーターとの出会いのイベントが終わった後くらいがいいだろう。一匹の黒猫が探索者たちの前を横切って森の方へと向かっていく。セイレムの北西に位置するこの深い森は年老いた木々に覆われ昼間でも薄暗く魔物が住むとも噂される。探索者たちが儀式を行った場所もこの森の一画にある。猫は森の入り口で振り向くと探索者たちの方を見て「ニャー」と鳴く。〈アイデア〉や〈心理学〉に成功すれば、その猫が探索者たちに「付いて来い」と言っているのではないかと推測できる。
猫を追いかけていくと、時折探索者たちの方を振り返りながらモノリスがあるのとは異なる方向の森の奥へと進んでいく。日光の届かない不気味な森を15分ほど歩いたところで探索者たちは開けた場所に出る。そこには朽ちた木で作られた古く小さなコテージが建っている。コテージの屋根には黒と黄色、合計3匹の小鳥が止まってこっちを見ている。猫は玄関の扉を器用に開けて中へと入っていく。
玄関の扉の先はすぐ小さな部屋になっており中央には粗末な木製のテーブルが置かれ壁際には本棚やいくらかの瓶が並べられた戸棚がある。ストーブの上には泡立ち不快な臭いを放つ鍋が火にかけられている。そしてロッキングチェアにはボロを着てボサボサの白髪をした老婆が腰をかけている。猫は彼女の元に行くと探索者たちの方を向いて再び鳴く。
「よく来たね。可愛らしいお客さんたち」。うっすらと目を開けながらしわがれた声で老婆が話しかける。彼女は自分がサラ・グッドであるという。探索者たちが彼女を疑ったり村で容疑をかけられている件を話せば「まったく迷惑な話だよ。”私は”子供たちを苦しめたりなんかしてはいない」と反論をする。そして彼女は子供たちを苦しめているのは別の魔女の仕業であると説明する。 「その魔女は異次元に住み、空間を自由に行き来する魔術を操る。その魔女が自分の血によって育てたネズミの使い魔ブラウン・ジェンキンを使って子供たちを苦しめているのだ」。
その魔女の名は「ケザイア・メーソン」。強大な力を持つ不死の魔女だと彼女は言う。「子供たちの魂はやがて彼女が崇める神アザトースへと捧げられる。子供たちを助けたいならその魔女を倒すしかないが、そんな方法を知る人間などどこにいようか。もちろん私なんかは遠く及ばない。彼女に目をつけられた時点でもう何もかも終わりなのさ。愚かな清教徒たちは手のひらで踊らされているとも知らずに自らの首を絞め合い、やがてこの村は破滅を迎えるだろう」。
サラ
サラ・グッド(外見は80歳以上)
STR 40 CON 45 SIZ 40 INT 75

POW 90 DEX 35 APP 35 EDU 70

正気度 50 耐久力 8

ダメージ・ボーナス:-1

技能:言いくるめ 70%、医学 50%、隠密 46%、心理学 65%、クトゥルフ神話 5%、薬学 70%、歴史 50%、ケーキを焼く 60%

呪文:角を持つ男の招来、邪眼、布石、支配、ヴールの印

pentagram
サラ・グッドの黒猫(8歳)
STR 10 CON 40 SIZ 10 INT 75

POW 70 DEX 105 APP 50 EDU 70

耐久力 5

ダメージ・ボーナス:-2

武器:噛みつき 30%、ダメージ 1D4+DB

引き裂き 80%、ダメージ 2D3+DB

技能:回避 84%、魅惑 30%、夢見 65%、クトゥルフ神話 5%、オカルト 10%


サラと審問官

探索者と話をしていると彼女の表情が急に硬くなる。そして何かに気づいたように立ち上がり彼女は裏口の方に向かう。「審問官たちだ。どうやらここに隠れているのがバレたみたいだね」。彼女は自分と一緒にいたら、探索者たちまで危害が及ぶかもしれないから裏口から逃げるようにと言い、また自分の黒猫を連れて言ってあげて欲しいと探索者たちに託す。黒猫はサラの言葉を理解したかのように小さく鳴くと、探索者たちの足元へ擦り寄ってくる。
コテージの裏手は森に続いており、生い茂った草木に探索者は身を隠すことができる。裏口から出ると、コテージからバン!とドアを蹴破る音の後に審問官たちとサラとの次のようなやりとりが聞こえてくる:
審問官たち「お前が子供を傷つけたのか」
サラ「子供たちを傷つけるつもりはない」
審問官たち「でなければ、動物をけしかけたのか」
サラ「動物をけしかけたりなどしないよ」

そしてサラはまるで誰かに聞かせるように大きく声を張り上げる。

サラ「そんなに魔女をどうにかしたかったら、『角を持つ者』にでも聞いてみりゃいいさね。森の奥でダンスを踊って──魔女のようにね!」
審問官たち「ふざけるな!この魔女め!」

そして殴りつけるような音や怒鳴り声が何度も聞こえた後、審問官たちは抵抗する彼女を無理やり押さえ込むとコテージから連行していく。

無関心の神

森の奥には古い石で出来たモノリスがある。この場所では夜になると〈降霊術〉を行うことができる。探索者たちはアビゲイルたちを苦しめる魔女の正体がケザイア・メーソンであることを突き止め、やがてもう一度この場所に足を踏み入れることになるだろう。〈降霊術〉を行った探索者たちの前には再び角を持つ少女が姿を現す。
ケザイア・メーソンを討ち倒すための方法を尋ねると、彼女はまずケザイアが住む次元へと到達するための方法を探索者に教える。異次元に住むケザイア・メーソンの元に行くには次元を超えるための鍵が必要である。そのための鍵はセイレムの郊外に住む「エドマンド・カーター」という男が持っている(この情報を手に入れた時点で、探索者は少女から彼の自宅の場所を知ったことにしてよい)。この鍵は使用者の願いに応じてどんな時間や場所にでも運んでくれるものだ。
しかし「ケザイア・メーソンは強大な力を持つ魔女。人間の力では勝つことはできない」。彼女はそう言って、探索者たちに「魔女を狩るための狩人」として自らの従者を呼び出し従属させる手段を貸し与えると伝えて手のひらを差し向ける。彼女のその動作によって探索者の頭の中には膨大な量の知識が送り込まれる。これにより探索者は「狩り立てる恐怖の召喚/従属」の呪文を以下に記す「深層の効果」と共に習得し〈クトゥルフ神話〉技能を5%獲得する。
狩り立てる恐怖の召喚/従属:
呪文の詳細は「新クトゥルフ神話TRPG」P.244"狩り立てる恐怖の召喚"、P245"狩り立てる恐怖の従属"を参照。

<深淵のバージョン>
本シナリオ中でのみ使用可能。ニャルラトテップの従者である「狩り立てる恐怖」を召喚・従属させる。召喚に必要なコストは通常の呪文と同じだが、生贄は必要とせずマジック・ポイントを費やした量によらず1ラウンドで召喚が完了する。さらに召喚された狩り立てる恐怖は召喚者に従属された状態で到着する。
従属の呪文を唱える際には従属呪文のコストと生贄を捧げる代わりに「召喚呪文(「新クトゥルフ神話TRPG」P.244)」と同じようにコストを支払いロールに成功することで、狩り立てる恐怖を従属させることができる。この方法で従属の呪文を唱える場合、従属させるために必要な対抗POWロールは行わなくてよい。
またこの呪文は対象との戦闘中であっても効果を発揮する上、別の術者に従属している狩り立てる恐怖に対しても呪文を重ねてかけることで対象を自身に従属させることができる。


破られた契約

呪文を習得すると角を持つ少女の姿はいつのまにか消えている。やがて探索者が村へと戻ろうとすると森を抜けたあたりで探索者たちを囲むように信じるものたちの大人がやってくる。彼らは深刻そうな表情を浮かべていて、どう見ても探索者を歓迎しているようには見えない。そしてその集団の中に混じっているマザー・ビショップが探索者の前に出てきて「二度と降霊術を行わない」という約束を破った探索者たちを咎めようとする。探索者たちがどのように言い訳をしても彼女は決して聞く耳を持たずに「私たちにとって、一度交わした契約は絶対だ。どんな理由があろうと、決してそれを破ることは許されない」と冷たく答える。その後探索者たちは信じる者たちに捕らえられて両手を後ろ手に縛られた状態で小さな小屋に閉じ込められる。マザーは探索者たちにそこでしばらく頭を冷やすようにと伝えて小屋から出ていくと外から鍵をかけてしまう。
〈アイデア〉ロールに成功した探索者はサラ・グッドから譲り受けた黒猫がいつの間にか姿を消していることに気づく。実はこの時、黒猫は探索者たちの危機を察知して助けを求めるために教会のアビゲイルの元へと向かっており後述の「アビゲイルとの再会」イベントにつながっている。小屋に閉じ込められた探索者が〈聞き耳〉に成功すれば、小屋の外からは「清教徒たちが大規模な摘発を始めたようだ」「このままでは我々も・・・」「もう終わりなのかもしれない」といった大人たちの話し声が聞こえてくることに気づく。

アビゲイルとの再会

小屋に閉じ込められたまま、やがて夜が更け探索者たちは眠ってしまう。深夜。カチャカチャと小屋の扉をいじる音で探索者たちは目を覚ます。扉の先には誰かの気配を感じる。やがて「カチリ」と鍵が外れる音がする。小屋の扉が開かれると小さな黒い影が小屋の中へと飛び込んでくる。それはサラが探索者に預けた黒猫で、さらに扉の方に目を向けた探索者はそこに立つ者の姿を見る。そこにはアビゲイル・ウィリアムスが立っている。彼女は片足を引きずり、バールのようなものを枝を杖代わりにしている。 彼女は全身を蝕む苦痛をこらえながら探索者たちに話しかける。「静かに。大人たちに見つかっちゃう」。彼女は声を潜めてこの猫がここまで連れてきてくれたということ、信じる者たちに属するマーサ・コリーとレベッカ・ナースという2人の女性が新たに審問官に捕らえられたことを探索者たちに説明する。審問官は信じる者たちの中に悪魔を呼び出して少女たちを苦しめている魔女がいると考えており、さらに探索者たちもその魔女の容疑者に含まれているのだ。彼女は森での儀式をしようと言い出したことで自分のせいでこんな事態になってしまったと責任を感じており、謝りながら探索者たちだけでも逃げるようにと伝えようとする。 探索者がアビゲイルと一緒に行こうとする場合、彼女は自分が今走れる状態にないことを理由に拒否しようとする。一緒に連れて行くには彼女を説得する必要があり、さらに動けない彼女を背負っていかなければならないだろう。

エドマンド・カーターと銀の鍵

エドマンド・カーターは郊外の一軒家に住んでいる。彼の家の周囲の植え込みは猫の形に切りそろえられ、ガラス細工の猫が並んでいる。玄関の扉と鍵穴には猫をあしらったレリーフが装飾されており、アイデアを振るまでもなく、この家に住む人物が重度の猫好きであることをうかがい知ることが出来る。
探索者たちが訪れるとカーターは突然の来訪者にびっくりする。彼はこの時代での銀の鍵の所有者でありケザイア・メーソンの元へ行くためには彼の助力を得る必要がある。彼を説得する方法には次のようなものが考えられる。もし街で行き倒れの彼を助けていた場合、事情を説明すれば彼は快く探索者たちに力を貸してくれる。あるいは彼は無類の猫好きで、探索者たちがサラ・グッドの黒猫を連れていれば彼は探索者たちに興味を示すだろう。猫を条件に交渉を持ちかければ彼が先代から譲り受けたという大切な銀の鍵を貸すことに合意してくれる。
交渉が成立すると、エドマンドは部屋の奥から約30cm四方の奇妙な装飾のされた香木製の箱を持ってくる。箱の中には羊皮紙で包まれた手のひら大の大きな銀色の鍵が入っている。

不死の魔女との戦い

手に入れた銀の鍵を発動すればケザイア・メーソンとの最後の決戦が待っている。ケザイア・メーソンが住む次元への門が開かれるのだ。探索者がその先に足を踏み入れると瞬く間に目の前に信じられないような光景が広がる。そこは不可思議な色彩と名状しがたい角度を持つ物質に満たされた異様な空間で、見るものすべてが言語に絶し理解することができない。探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。
やがて突然視界が開ける。探索者が気がつけば、セイレムによく似た村の街道に立っている。周辺に人影はなく、そこがセイレムとは違うどこかであると理解する。そしてその先に、ブラウン・ジェンキンを率いた背の曲がった老婆の姿がある。老婆の醜く長い鼻とひび割れた頬は伝説に聞く魔女そのものであり、足元のネズミの顔はまるで人のようで、5本指の手足は人間のそれに似ており、冒涜的な声で笑う。ブラウン・ジェンキンおよびケザイア・メーソンの姿を目撃した探索者はそれぞれに対して0/1D4、0/1D4の正気度ポイントを失う。
ケザイアと対面すればいよいよ最後の戦闘に突入する。彼女はしわがれた声で「お前たちは踏み込みすぎた。お前たちは混沌の王の座すアザトースの玉座へと行かねばならぬ。」と伝えて肉切り包丁を抜く。
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ケザイア・メーソン、不死の魔女
「新クトゥルフ神話TRPG」にはデータが存在しない。このため「クトゥルフ神話TRPG」P.245を参考にして「新クトゥルフ神話TRPG」向けにキーパーが設定する。

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ブラウン・ジェンキン、ケザイアの不死のネズミ怪物の使い魔
「新クトゥルフ神話TRPG P.295」の「ネズミ怪物」を参照。

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狩り立てる恐怖、巨大な飛行する蛇
角を持つものに授けられた魔女を狩る力。
「新クトゥルフ神話TRPG P.280」を参照。


魔女を狩るもの

ここからは戦闘として処理を行っていくが、キーパーは戦闘が始まる前に探索者側に「狩り立てる恐怖」を呼び出すための時間を与えてもよい。ただし戦闘に入って最初のラウンドでは狩り立てる恐怖は行動を起こさず、次のラウンドから攻撃を開始する。

呼び出されたそれはいつの間にか君たちの頭上にいた。巨大なクサリヘビのような生き物で、奇妙に歪んだ頭を持ち、翼があり、長い体をうねらせながら空を泳ぐ。
その目を不気味に光らせて、忌まわしき狩人は邪悪な魔女へと狙いを定める──

狩り立てる恐怖が探索者の支配下にある場合、ケザイア・メーソンは前述の<深淵のバージョン>の「狩り立てる恐怖の召喚/従属」の呪文でそれを奪い取ろうとする。狩り立てる恐怖が彼女の支配下にある場合は、彼女は手にした肉切りナイフで探索者に襲いかかる。
ケザイアに「狩り立てる恐怖」を奪われた場合、探索者はさらに呪文を上書きすることで支配を取り戻すことができる。戦闘はマジック・ポイントが続くか呪文に失敗するまで狩り立てる恐怖の支配を奪い合う呪文合戦になるだろう。もしも途中で探索者のマジック・ポイントが底を尽きた場合、キーパーはサラの黒猫や他のNPCが探索者に同行していれば彼・彼女らがマジック・ポイントを探索者の代わりに提供してあげることにしても良い。狩り立てる恐怖の支配を奪い返すことができれば、狩り立てる恐怖の攻撃でケザイアを倒すことができるだろう。
ケザイア・メーソンが倒れると、探索者がいる空間にはヒビが入りガラスが割れるように砕け散っていく。そして探索者たちが気がつくと元の場所に戻っており、小屋からいなくなった探索者たちを探す信じる者たちの大人と遭遇する。両親をはじめ信じる者たちが村の入り口に集まり探索者たちを待っているというのだ。彼らは懲罰小屋からいなくなったことを怒るより先にかけよって抱きしめると探索者たちの無事を喜ぶだろう。この後「結末」へと進む。



結末

もとの世界に戻って大人たちと合流し、探索者が落ち着いた所で指導者であるアブサラム・ウェイトリーが口を開く。彼はセイレムの審問官たちによる魔女狩りがもはや制御不可能な段階にあるとして、信じる者たちに自らの決断を告げる。「疑心暗鬼は人々の心を蝕み、もはや彼らを止める手立てはない。清教徒たちは我々に標的を定め、今後さらに多くの罪なき人々が犠牲となっていくだろう。我々は決断しなければならない。この地を捨て、新たな安息の地を目指すのだ」。 かくして、アブサラム・ウェイトリーに率いられた「信じる者たち」はセイレムを出発することになる。これは探索者は清教徒のグループに属するアビゲイルたちとの別れを意味している。キーパーは村の出口でカーターや魔女の呪縛から開放されたアビゲイルたちとの別れのシーンを演出しても良いだろう。


信じる者たちはマサチューセッツの荒野を横切り、ミスカトニック川上流の人里離れた渓谷を目指す。一方この後、セイレム村では史実にあるセイレム魔女裁判が始まっていく。この騒動は最終的に200名近い村人が告発を受け、19名が処刑されるまで続き、同年の5月に収束を迎える。

ケザイア・メーソンは滅んではおらず、セイレムで魔女として捕らえられるも後に脱獄。以来、永きに渡りアーカムに混沌の影を落とす存在となる。

銀の鍵はいつの間にか探索者の手元から消え、持ち主であるエドマンドの元へと帰る。彼はこの年アーカムへと移り住み、カーターの名は子孫であるランドルフへと受け継がれていく。

やがて満天の星空のもと、信じる者たちは丘の頂上に立っていた。後にセンティネル・ヒルと呼ばれるようになるその場所からは、森に囲まれた深い渓谷を一望することができた。

誰かが指を差した空の先を見上げると、流れ星がひとつ、またひとつと流れては消えていく。
──約束された安息の地。その町は後にこう命名される。

「ダンウィッチ」と。


こうして無事にケザイア・メーソンを撃退し、ダニッチへとたどり着いた探索者はシナリオクリアの報酬として2D10正気度ポイントを獲得する。
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