君は何を祈り
そして僕達は何を願うのか?

シナリオ概要

人口数千人の小さな村──探索者はそこで生まれ、大切な仲間に出会い共に成長していく。
しかしそんな彼らの元に、運命の日が訪れる。

推奨人数:2〜4人
想定プレイ時間:4〜5時間(オンラインのテキストセッションの場合は9〜12時間)


本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


※注意:以下にはシナリオのネタバレが含まれます。























キーパー向け情報

G県の山間部に位置する人口数千人の小さな集落、上白沢村。シナリオの舞台となるこの村では古くから「無夜様」と呼ばれる神様が信仰されている。「無夜様」はこのシナリオに登場するニャルラトテップの化身の1つで、こぶし大ほどの黒い奇妙な鉱石の姿をしている。「無夜様」は上白沢神社の御神体として”精霊の森”と呼ばれる場所の最奥に祀られていて「どんな願いでも叶えてくれる」という言い伝えだ。”精霊の森”は神社の裏にある聖域で、樹齢数百年の木々が立ち並んでいる。

探索者はこの村で生まれ育っていく。小学4年生になった頃、足が不自由な少女、鳥待志保と出会う。友人となった探索者と彼女は長い時間を共に過ごしていくが、高校に上がる頃、障害を持つ彼女は探索者たちとは別の、設備が整った都会の学校へと進学することになる。そんな中学最後の夏祭りの夜、「無夜様」の言い伝えを思い出した探索者と志保は”精霊の森”へと足を踏み入れるが、その時、村の中心部に巨大な隕石が落下する。

志保はとっさに探索者の無事を祈り、それを聞き入れた「無夜様」の力によって探索者は一命を取り留めるが、祈りの中に含まれなかった彼女の命と村は失われてしまう。さらに「無夜様」を目撃した代償として精神崩壊を起こした探索者は、療養施設へと運ばれる。そしてそこから、失ったものを取り戻すための戦いが始まっていく。

このシナリオはロールプレイを重視した内容になっている。戦闘は発生しないが、代わりに探索者は最後の場面で大きな選択に直面することになる。キーパーは時間に余裕をもたせながら、探索者同士やNPCとの交流を楽しんでもらうといいだろう。



NPC

◆ 鳥待 志保(とりまち しほ)、探索者の幼馴染
上白沢村に暮らす足の不自由な少女。小学4年の春に探索者たちに出会い、探索者たちと友人になる。しかし15歳の夏。上白沢神社の夏祭りの日に、村に落下した隕石により命を落とす。

年齢:10-15歳 職業:学生
STR 8 CON 12 SIZ 10 INT 12 POW 10 DEX 3 APP 12 EDU 4-9(年齢による)
正気度 50 耐久力 11
技能:目星50%、聞き耳65%、操縦:車椅子30%、芸術:金魚すくい60%
志保


◆ 須藤 正則(すどう まさのり)、精神科医
隕石落下の後、探索者たちが入院することになる北里医院の医院長。自身も上白沢村の災害により妻と娘を失う。しかし他の村人が命を落とす中、生存者として「精霊の森」で発見された探索者たちに興味を持ち、生き残った理由を知ろうとしている。しかし、7年の月日に彼は疲弊していく──。

年齢:53-60 職業:精神科医
STR 11 CON 13 SIZ 12 INT 17 POW 15 DEX 9 APP 11 EDU 18
正気度 75 耐久力13
技能:医学60%、精神分析80%、薬学60%、信用60%、心理学75%、目星55%



NPCの立ち絵画像について

NPCの立ち絵画像をご利用の際は、以下をお守り頂くようお願い致します。データは以下からダウンロード頂けます。

・NPC立ち絵画像の著作権はもりそば@morimoritntn11様に帰属します。
・改変、二次配布、別シナリオでの使用はご遠慮ください。
・リプレイ動画、ネット配信などでご使用の際は著作権者を表記お願いします。
・営利目的の使用に関してはご相談ください。

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プレイヤー向け情報

このシナリオは、山間の小さな村で生まれ育った探索者の小学生時代から始まり、中学時代、そして大人へと成長へと成長していく過程での、それぞれ時代の異なるシーンで構成されている。探索者は同年齢の幼馴染として新規に作成する。

シナリオの進行に従って探索者の年齢は10歳から22歳の範囲で変動していくが、年齢毎に探索者のデータを作成するのはプレイヤーにかかる負担が大きいため、22歳の時点でのデータのみを作成し、全ての年齢で共通のデータを使用してよい。ただし年齢によって使用できそうにない技能は使うことができない(22歳時点で車の運転ができるからと言って、小学4年生でこの技能を使うことはできない)。

探索者の職業は何でもいい。シナリオを通して必須となる技能は特にないが、〈目星〉〈聞き耳〉などは役に立つ場面が多いだろう。また〈精神分析〉を持っている探索者は、活躍する機会があるかもしれない。



導入:幼少期


志保との出会い

物語は探索者たちがまだ小さな子どもの頃から始まる。探索者が10歳、小学4年生に上がったばかりのこと。昼休みに皆で一緒に廊下を歩いていると、廊下の先から「邪魔なんだよ!くそ!」といった怒鳴り声が聞こえてくる。見ると、女の子が上級生に絡まれ、尻もちをついた状態で怯えている。近くには彼女のものらしい車椅子が倒れている。探索者は彼女が鳥待志保という今年から同じクラスの同級生になった子であると気づくことができる。車椅子に乗った彼女は上級生にぶつかり、それで怒りを買ったようだ。探索者は彼女が足が不自由で、普段は車椅子で生活していることを知っている。

探索者は彼女を助けることができる。いくつかのやり取りの後で上級生が去ると、彼女は必死に車椅子を起こそうとする。探索者たちが彼女を助けると彼女は感謝を述べ、以後、探索者は彼女と仲良くなっていく。



「無夜様」に関する言い伝え

次のシーンは志保との出会いから2年後の7月の初旬。小学6年生になった探索者が、志保の家の庭先で一緒に遊んでいるところから始まる。何をして遊んでいるかについては、キーパーはプレイヤーと相談し自由に演出していい。

しばらくしたところで彼女の祖母が「スイカを食べないか」と言って、切ったスイカを皿に乗せて縁側へと運んでくる。やや不揃いの大きさのスイカは彼女の家の畑で取れたものらしい。スイカを食べていると、セミの鳴き声に混じって神社の方から笛の音が聞こえてくる。

笛の音を聞いた探索者は全員〈アイデア〉ロールを行う:
成功した探索者は、1週間後の毎年7月18日が村の夏祭りの日であることを思い出す。この笛の音はその練習をしているのだろうと気づく。

もし探索者が全員〈アイデア〉ロールに失敗した場合は、志保の祖母が近々行われる夏祭りの練習をしているのだと教えてくれる。そして夏祭りの話題になったところで、志保の祖母がこんな話をする。

「村の神社の奥にはね。『精霊の森』と呼ばれる場所があって、そこには『無夜様』の御神体が祀られているんだ」
「だからその森には決して入ってはいけない」
「無夜様はどんな願いでも叶えてくれる偉い神様だ。それがどんなに正しい願いでも、どんなに悪い願いでも」
「それはとても危険なことなんだ」

無夜様の話を志保の祖母から聞いたところでこのシーンは終了し、次は中学時代へとシーンを進める。



中学時代、祭りの日

中学3年。季節は夏の終わり。来年は高校に進学することになる探索者たちだが、志保は村を離れて探索者たちが行くのとは別の、施設が整った都会の学校に進むことになっていた。そこで思い出作りをと探索者は志保と村の祭りに一緒に出かけることになる。

上白沢神社には祭り囃子が鳴り響き、鳥居をくぐった先の境内には決して多くはないもののいくらかの出店が並んでいる。客引きの声に誘われながら、探索者たちは楽しい一時を過ごすことができる。

しばらく時間が経過したところで、探索者は〈目星〉で判定する:
成功した場合、志保がうつむいて震えていているのに気づく。探索者が声をかければ、彼女は耐えられなくなり、彼女は皆といられる今までが本当に楽しかったということ、そしてまた、村を離れ、皆とはなればなれになることが辛いと打ち明ける。



祭りの終わりに

祭りで志保の本心を聞いた後、突然に探索者の記憶は途切れてしまう。そして気がつけば探索者は真っ暗な空間にいる。体を引き裂くような激痛を感じ、指先一つ動かすことができない。意識が朦朧として、消えかけていく視界の中に次の光景を目撃する。



……その後の記憶は曖昧だった。ただ探索者たちはどこか暗い場所にいて、遠くに志保がいる。目の前には、石で出来た祭壇の上に黒く輝く多面体の結晶が祀られている。体は硬直して声が出ない。そして探索者は強い悪臭を感じる。わずかな光すら届かない闇の中から浮かび上がったのは、黒い3本の足と鉤爪のついた手のような器官を持つ巨大な人影。顔のあるべき場所には赤い血の色をした長い触手がうねる。その姿は不定形の、原初の宇宙より出て這い寄る混沌───。



探索者は1D10/1D100の正気度ポイントを失う。



失った正気度ポイントの数値に関わらず探索者の記憶はここで途切れてしまう。この結果、探索者の精神は完全に崩壊する。

<狂気の傷跡>
精神が崩壊した探索者は長期の一時的狂気(「クトゥルフ神話TRPG」P.90)の中からランダムで、失った正気度ポイントの数値に応じた数の狂気を永久的に負う。
・正気度を全て失った:長期の一時的狂気からランダムで3つ
・正気度ポイントの1/5以上(端数切り上げ)を失った:長期の一時的狂気からランダムで2つ
・上記以外:長期の一時的狂気からランダムで1つ

これらの狂気は平常時には発現しないが、探索者が恐怖症の対象に遭遇したり、夢や連想、フラッシュバック、正気度ポイントの喪失といった極度の緊張状態に陥った場合に症状が現れる可能性がある。症状が現れた場合は〈精神分析〉を行うことで症状を抑えることができるが、再び同じ状況に陥ると再発の可能性がある。セッション中、この効果を完全に消すことはできない。



夢:優しい時間

その後、探索者が見る夢のシーンを差し込む。探索者たちは気がつくと神社にいて、志保もそこに一緒にいる。そこでは何の憂いもない、優しい時間が流れていく。上白沢神社には祭り囃子が鳴り響いている。鳥居をくぐった先の境内には決して多くはないものの、いくらかの出店が並んでいる。探索者の手をとり、早く行こうと志保がはしゃぐ。平和で穏やかな時間が過ぎていく。

こうしてしばらくのやり取りがあった後、探索者たちは目を覚ます。




青年時代:北里療養施設


サナトリウム:目覚め

探索者は白い病室のベッドの上で目を覚ます。他の探索者も同じ部屋にいるものの志保の姿はない。山奥のサナトリウム──あの日。探索者たちはこの療養施設に運ばれ、その後ようやく僅かな正気を取り戻すまでに2年を要し、さらにそこから現在に至るまで3年の月日が流れ、探索者たちは20歳になっている。家族・友人は皆諦めてしまったのか、ここを訪ねてくる者は誰一人としてなく、探索者たちは精神に深い傷を負いながらも互いに支え合い、これまでを必死に生きてきたのだった。志保の行方は、あれ以来分かっていない…。

<背景>
あの祭りの日。探索者たちは禁忌とされていた聖域「精霊の森」の奥に足を踏み入れる。しかしその時、上空から燃え盛る巨大な隕石が落ちてくる。探索者たちが森の奥深くの祭壇で御神体である黒く輝く結晶を発見し、志保は「無夜様」に皆の無事を祈る。志保の願いにより探索者たちは一命をとりとめるものの、上白沢村は壊滅して志保も命を落としてしまう。探索者を見舞いに来る者がいないのも、志保がいないのもこのためだ。こうして探索者は村の唯一の生き残りとして上白沢の隣町にある北里療養施設に運ばれる。医院長の須藤は探索者がまだ真実を受け入れられる精神状態にないとして、この事実を秘密のままにしており、探索者は未だ村で起きたことを知らない。

ここでは次の処理を行う。
・耐久力を最大値まで回復する。
・ニャルラトテップを見たことで失った正気度ポイントを1/4まで回復(正気度0の探索者は元の正気度の1/4まで回復)する。
・ただし「狂気の傷痕」の効果は消えることはない。

目を覚ました探索者は、現在の正気度を目標に判定を行う。失敗した場合「狂気の傷痕」の効果が一時的に発現する。効果は数分間継続する。落ち着きを取り戻した後、探索者の部屋に食事が運ばれてくる。朝食を食べたら屋外で軽いウォーキングなどの運動、その後回診が終われば午後からは勉強。夜は夕食の後、21時には就寝。それが探索者たちの1日になっている。



屋外:ウォーキング

サナトリウムの白い建物の周囲は白く高い壁に囲われ、その上方からかすかに近辺の山々を見ることができる。見覚えのある頂きの形から、探索者たちにはそれらの向こう側に自分たちが生まれ育った村があることが分かる。



病室:回診

回診の時間になると、医院長の須藤が探索者たちの病室を訪れる。彼は「調子はどうだね?」などと探索者に問いかける。その後は処方する薬の量の話程度の代わり映えのない話をすると病室を出て行ってしまう。

<須藤の対応>
須藤は探索者にはまだ受け入れる準備ができていないと考えており、村のことは秘密にしている。〈心理学〉に成功すれば須藤が何か隠し事をしていることは分かる。しかし何を問われても「今は治療に専念するように」とだけ伝え、病室を後にする。



夢:あの日の選択

探索者は再び夢を見る。あの祭りの日のあの神社の『精霊の森』の入り口で、志保はためらいながら、ずっと抱えていた考えを探索者たちに口にする。それは「無夜様に、お願いがしたい」というもので、彼女はそれを言ってしまった事を後悔するように皆の顔色を伺う。彼女は今のはなしだと訂正するが、ここでどうするかは探索者たちの選択次第となる。どうするかが決まったところで、探索者たちは目を覚ます。



大人時代:退院

あれから2年後。探索者たちは22歳になっている。ここで次の処理を行う。

・耐久力を最大値まで回復する。
・ニャルラトテップを見たことで失った正気度ポイントを1/2まで回復(これは正気度0の探索者も含み、元の正気度の1/2まで回復)する。
・ただし「狂気の傷痕」の効果は消えることはない。



医院長室

この日、探索者たちは医院長室へと呼ばれる。普段の病院着から私服に着替えて医院長室のソファーに座る探索者たちに、医院長の須藤がゆっくりと優しく語りかける。

「君たちには来月、退院してもらおうと思っている」
「本当に、これまでよくがんばってきたね」

彼は探索者がこの後それぞれの職に就きそして自分たちの人生を歩んでいくこと、そしてその前に探索者たちに話しておかなければならないことがあると伝える。彼はテーブルの上に1冊のファイルを起く。そこには新聞の切り抜きが閉じられている。7年前、あの祭りの日の日付で。

7月18日 号外
『上白沢村に、巨大隕石が落下』
本日19時過ぎ、G県上白沢村に巨大な隕石が落下した。懸命な救出活動が行われているが、落下地点から半径15km圏内は壊滅的な被害を受けており住人の生存は絶望的とみられる。

7月19日
『生存者を発見』
昨夜上白沢村に隕石が落下した災害で、初めて生存者が発見された。生存者の名前は(探索者たちの名前が並べられている)。生存者が運ばれた病院の発表によると、未だ意識は戻らないものの外傷はなく命に別状はないとのこと。

そして以降にはさらに、死亡が確認された者の名前が一覧で記されている。

探索者は〈目星〉で判定を行う:
成功した探索者はその中に自分の家族や志保の名を見つけることが出来る。

生まれた村の喪失。家族や大切な友人の死を知った探索者は1/1D6の正気度ポイントを失う。

SANチェックに失敗した探索者は「狂気の傷痕」の効果が発現して発狂する。発作はしばらくすると一旦落ち着き、医院長はそんな探索者たちにこの事実を秘密にしていたことを謝罪する。彼は「辛いかもしれないが、これは君たちが向き合わなければならない事実だ。だが、私は君たちにならきっと出来ると思っている」と告げ、うっすらと涙を浮かべながら今後の探索者たちが苦難の道のりを乗り越えられることを祈っていると伝える。

もう一度、探索者は《目星》の判定を行う:
成功した探索者は、死亡者の一覧の中に「須藤 美佐」「須藤 あやか」の名を見つけることが出来る。須藤は彼女たちが自分の妻と娘であり、須藤はこの災害で家族を失っていることを探索者に伝える。



退院の日

1ヶ月後、探索者は退院の日を迎える。探索者は医院長やサポートしてくれたスタッフたちから花束と励ましの言葉を受け取りながら施設を後にする。大きな柵の扉が開き、7年ぶりに外の世界へと足を踏み出した探索者に須藤が伝える。

「実は・・・私にはまだ1つ、君たちに伝えていないことが残っているんだ。私はこれを言うべきか、ずっと迷い続けてきた。もしこれを聞けば、君たちの今後の人生に大きな影響を与えることになるのかもしれない。聞かない方が、幸せであるかもしれない。しかし、君たちはもう子供ではない。事実を知るか否か、君たちが決めるといい」

須藤は瞼を閉じると探索者の答えを待つ。もしここで探索者たちがそれを知ることを拒むなら、探索者はそのまま自分の人生を歩んでいくことになり、物語はエンディングを迎えるだろう。しかし知ることを望む場合、医院長は次の事を探索者に語る。

「君たちはあの村で『精霊の森』と呼ばれていた場所の奥で発見された。発見された時、君たちの傍らにはもう1人いたんだ。君たちも知っているだろう。そして、彼女は既に死んでいた。隕石落下の衝撃波によるものだろう・・・。しかし私は、どうしても不思議なんだ。どうして君たちだけが無事で、彼女だけが死んでいたのか。どうして君たちはあの場所であのような、精神が弱りきった状態で見つかったのか。隕石の落下というだけではない、そこで君たちは一体何を見たのか。あの時、本当は何が起きたのか」

「君たちが、或いは彼女が何を願ったのか」

「もし君たちが全てを取り戻したいと思うなら、君たちはもう一度、あの場所に行ってみるべきだと思っている」
「すまない、私は少し疲れた。君たちが今後歩む人生が、幸せなものであることを祈っている」



上白沢村

7年ぶりに帰ってきた上白沢村は変わり果て、中央に大きなクレーターが口を開けている。いくらかの倒れた建物の残骸には雑草や蔦が巻き付き、その風景は当時の面影を残しながらもそこにあった穏やかな日々は過去のもので”すべてが終わった”のだという現実だけを探索者に突きつける。

この光景を目の当たりにした探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。
判定に失敗した探索者は「狂気の傷痕」の効果が発現する。




精霊の森

その場所は変わり果てて、7年前の隕石の衝撃で木々は薙ぎ払われ、えぐれた地面、倒れた枯れ木のみが残っている。しかし、その地に足を踏み入れようとした瞬間、探索者は古く高い木々に囲まれた場所に立っていることに気が付く。遠くからはあの日の祭り囃子の音が微かに聞こえてくる。ここからは2つのルートに別れる。


Aルート:志保と共に、森へ行った

立ちすくむ探索者たちの横を、かつての、中学生だったころの探索者と志保たちの幻が通り過ぎていく。本当にいいの?と心配をする志保をなだめ、森の中は足元が不安定であるため、彼らは志保を抱き起こしまたは背負って、楽しげに、談笑しながら森の奥へと向かっていく。

彼らの後を追いかけて奥へと進むと、やがて探索者はナラの木に囲まれた円形の空き地にたどり着く。そこには2.4mほどの石を荒く削ったモノリスが1つ立っており、その前には石で出来た祭壇がある。祭壇の上には、黄色っぽい金属製の蓋の開いた奇妙な箱が置かれている。そして、その中にあったのは多数の微細な不正系の表面から構成され、赤い条線を持つ多面体であり、その表面は黒く輝いている。

そして探索者たちが森の奥までやってきたところで、上空から大きな風が唸るような音が聞こえてくる。見上げた先には今まさに赤く燃え盛る隕石が、上白沢村へと落ちてくる様子が見える。過去の探索者や志保もそれに気づいた様子で、しかし何が起きているのか分からず呆然としている。ここで探索者が自分たちの過去に干渉する行為は全て無駄であることに注意する。彼らに干渉することは元より「無夜様」に願いをかけることもできない。やがて隕石は落下して衝撃が全てをなぎ払い、炎が村を飲み込んでいく。過去の探索者は爆風に吹き飛ばされていく。衝撃で投げ出された志保は石の祭壇に叩きつけられる。

そして消えていく意識の中で、探索者は志保が願った言葉を聞く。

『みんなをたすけて』

それは友人たちの無事を願うものだった。



Bルート:森へ行かなかった

探索者は森の入り口で過去の自分たちの幻を見る。彼らは「無夜様」に願い事をすることを思いとどまり、帰ろうとしている。その時志保が空を指差す。暗くなった空にはいくつかの流れ星が横切っていく。探索者は星に願うように手をあわせるかもしれない。しかしそこで志保はあることに気づき「あれは何?」と伝える。

大気が唸るような音がして、空気が振動するのを感じる。流れ星の中の1つが、みるみる大きくなってくるのが分かる。そしてそれは村へと近づいて来る。過去の探索者たちは慌てて、逃げろ!と声を上げ、志保を抱えて森の奥へと逃げ込んでいく。

彼らを追いかけて森の奥へと進むと、やがて探索者はナラの木に囲まれた円形の空き地にたどり着く。そこには2.4mほどの石を荒く削ったモノリスが1つ立っており、その前には石で出来た祭壇がある。祭壇の上には、黄色っぽい金属製の蓋の開いた奇妙な箱が置かれている。その中にあったのは多数の微細な不正系の表面から構成され、赤い条線を持つ多面体であり、その表面は黒く輝いている。過去の探索者たちがそこにたどり着いたところで、大きな音と振動を感じる。ここで探索者が自分たちの過去に干渉する行為は全て無駄であることに注意する。彼らに干渉することは元より「無夜様」に願いをかけることもできない。やがて隕石は落下して衝撃が全てをなぎ払い、炎が村を飲み込んでいく。過去の探索者は爆風に吹き飛ばされていく。衝撃で投げ出された志保は石の祭壇に叩きつけられる。

そして消えていく意識の中で、探索者は志保が願った言葉を聞く。

『みんなをたすけて』

それは友人たちの無事を願うものだった。



結末

探索者たちが気がつくとそこは何もない漆黒の空間で、原初の宇宙が広がっている。過去の自分たちや志保の姿はない。そして、探索者たちの前には黒く輝く結晶体が宙に浮いている。

この先の展開は、本シナリオでは敢えて規程しない。探索者がそれに何を願うか、願わないのか。それにより何が起きるのか、探索者たちが何を手に入れて何を失うのか。ここから先は全て、本編のキーパー、およびプレイヤーに委ねたいと思います。



シナリオ報酬

・シナリオクリア:+1D6
・トゥルーエンド(トゥルーエンド達成の条件は任意):上記に加え、+2D10
・合わせてトゥルーエンドの場合、「狂気の傷痕」の効果を解除しても良い。

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