#イゴーロナク・ゲーム























シナリオ概要

幸せになれる簡単な方法を、あなたは知りたくありませんか?
これはSNSでうわさのゲーム。参加方法は、キスマークのついた手のひらの写真を投稿するだけ。
『キョウスケ』から届く指令を達成すれば、どんな願いも叶います。

推奨人数:3〜5人程度
想定プレイ時間:2〜3時間(オンラインのテキストセッションの場合は6〜9時間)




本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


※注意:以下にはシナリオのネタバレが含まれます。























キーパー向け情報

舞台は現代日本のとある都市部。場所や季節の詳細はキーパーが自由に設定してよい。探索者は年齢に制限はないが、全員NPCの「灰崎 哀(はいざき あい)」(22歳)と共通の友人であるという設定にする。また全員がインターネット接続が可能なスマートフォンなどの端末を所有しているものとする。探索者を作成するにあたっての推奨技能は特にないが、難易度を下げたいのであれば、キーパーは〈心理学〉〈目星〉〈回避〉〈隠す〉などを提示しておくとよいだろう。

このシナリオでは、探索者がロストしたり重大な肉体的欠損を受ける可能性が多いにある。さらにこのシナリオでは、探索者はいわゆる”善良ではない”行為を実行するよう強いられる場合がある。このため、プレイヤーは悪徳や何らかの心に闇を持つ探索者を作成しても良いし、敢えて善良な探索者として苦悩するのもよいかもしれない。キーパーはそのことを予め伝え、プレイヤーがシナリオに挑む”覚悟”を取り付けること。























NPC

◆ 灰崎 哀(はいざき あい)、探索者の友人
探索者たちの友人。関係は大学時代の知り合いや近所の幼馴染、仕事・友人を通して知り合った、など自由に決めて良い。魅力的な容姿を持つが、人見知りな性格で、打ち解けた相手以外と話すことは苦手。3つ年上の姉と非常に仲が良かったのだが、とある事件(神話生物が絡んだもの)に巻き込まれて姉が帰らぬ人となり心に深い喪失感を受けている。彼女は姉からプレゼントされた写真入りのロケットペンダントを大切に持っている。

彼女は姉が残した”グラーキの黙示録 第XII巻”を所有しており、それを読んでしまったことでイゴーロナクを引き寄せてしまった。しかし彼女には司祭としての才能がなかったため、イゴーロナクは次なる”司祭”を求めSNS上でゲームを始めた。

年齢:22歳 職業:保育士
STR 7 CON 10 SIZ 11 INT 13 POW 14 DEX 12 APP 17 EDU 15
正気度 0 耐久力 11
ダメージボーナス なし
武器:パンチ 50%, ダメージ1D3+DB
技能:目星50%、聞き耳60%、応急手当65%、言いくるめ40%、心理学30%、精神分析50%、オカルト50%



◆ 灰色の子供たち

かつてイゴーロナクの犠牲になった子供たちの思念の集合体。なかには人間だけではなくクトゥルーの眷属も含まれる。彼らはイゴーロナクが、地下の夜の深淵をこえた通路の先にあるレンガの壁の向こうから再び帰還することを恐れ、イゴーロナクを阻止するため、探索者たちに手を貸そうと声をかける。























お仕置き

シナリオの中で、『キョウスケ』からの指令に従わなかった場合(従おうとはしたが達成できなかった場合も含む)、『キョウスケ』の元からダイレクトメッセージが届き、探索者は「お仕置き」を受ける。「お仕置き」の内容は、探索者が指令に従わなかった回数に応じて、徐々にエスカレートしていく(回数は探索者ごとに個別に管理する)。


【お仕置き】
<1回目>
『キョウスケ』から次の内容のダイレクトメッセージが届く。
「最初はこれくらいで赦してやる。次からはもっときついから覚悟しておけ」
探索者は、腕(または足、脇腹などのどこか)に鋭い痛みを感じ、探索者は耐久力に1ポイントのダメージを受ける。痛みがした箇所を見れば、そこには人間に噛みつかれたかのような歯型が残っている。

<2回目>
『キョウスケ』から次の内容のダイレクトメッセージが届く。
「これで2回目だ。このノロマめ。どうやら痛い目に合わないと分からないようだな」
探索者は肩、腿など体の一部に強い痛みを感じる。探索者は耐久力に1D2ポイントのダメージを受け、セッション中、痛みでDEXが1ポイント減少する。痛みがした場所を確認すると、そこには人間に噛みつかれたかのような跡がくっきりと残っている。歯型は肉に食い込み、出血している。

そして、さらに『キョウスケ』からメッセージが届く。
「次に失敗したら、お前の指を1本もらう。もう迷ってる暇はない。わかったな?」

<3回目>
探索者は手の指に激痛を感じる。見れば手の指の1本、第二関節から先が鋭い歯で食いちぎられたかのように失われている。探索者は耐久力に1D3ポイントのダメージを受け、1/1D3正気度ポイントを失う。さらにセッション中、痛みでDEXがさらに2ポイント減少する。また〈鍵開け〉〈応急手当〉〈写真術〉など、指先を使う技能の判定に-30%のペナルティを受ける。

その後、キーパーは探索者に1D6を振らせる。これは次の「お仕置き」で奪われる部位を決めるためのものである。

【お仕置き部位表】
1:「右目」失うと〈目星〉技能に-25%ペナルティ。APPを1D3点、永久的に失う。
2:「左目」失うと〈目星〉技能に-25%ペナルティ。APPを1D3点、永久的に失う。
3:「右耳」失うと〈聞き耳〉技能に-25%ペナルティ。APPを1D3点、永久的に失う。
4:「左耳」失うと〈聞き耳〉技能に-25%ペナルティ。APPを1D3点、永久的に失う。
5:「鼻」失うと、隠さない限り、APPの半分(端数切り捨て)を永久的に失う。
6:「唇」失うと、隠さない限り、APPの半分(端数切り捨て)を永久的に失う。

その後、探索者に『キョウスケ』からメッセージが届く。
「俺もあまり気が長い方じゃない。次はお前の【部位】をもらう。いいな?それが嫌なら、お前の使命を果たせ。」

<4回目>
探索者は顔に焼けるような痛みを感じる。探索者の【お仕置き部位表】で決定した部位が、鋭い歯で食いちぎられ、失われている。探索者は1D3点ポイントのダメージを受け、1/1D6正気度ポイントを失う。さらに失った部位に応じて、【お仕置き部位表】の効果を受ける。
「もう後がないと思え。お前のやるべきことを思い出せ!」

<5回目>
「貴様には失望した。能無しめ」
声と共に、探索者は首元に違和感を感じ、目の前が真っ暗になる。仲間たちが見たのは、首から上を失って噴水のように大量の血を吹き出すあなたの体だった。探索者は死亡し、それを目撃した他の探索者は0/1D6の正気度ポイントを失う。
























導入

シナリオは、探索者たちが友人の「灰崎 哀(はいざき あい)」と共にファミリーレストランやカフェなどで食事をしているシーンから始まる。彼女は最近SNS上で噂になっている「簡単に幸せになれる」というゲームを、一緒にやってみないかと探索者たちを誘う。

このゲームというのは、知り合い同士何人かでチームを組み、代表者が手のひらにキスマークをつけた写真を、ゲームに参加するメンバー全員のアカウント名と共にSNSに投稿する。すると登録したアカウントに『キョウスケ』という人物からSNS上のダイレクトメッセージで指令が届く。この指令をクリアしていくと、願いごとを叶えてもらえるのだというものだ。

登録するにはSNSのアカウントが必要なため、アカウントを持っていない探索者はこの場で作成するよう灰崎に促される。アカウントを作成し、リーダーを決めて画像を投稿すると、探索者たちのアカウントにダイレクトメッセージが届く。差し出し人は『キョウスケ』というアカウントで、次のように書かれている。

ゲームへの参加ありがとうございます。このゲームでは、あなたたちに指令を与えます。それらを順に実行していき、最後の指令を達成できたら1人に1つ、あなたたちの願いを何でも叶えて差し上げます。指令は全部で5つあります。指令に失敗した場合はちょっとした「お仕置き」がありますので、みなさんがんばってください。























第一の指令

導入の後、『キョウスケ』から最初の指令がダイレクトメッセージで届く。指令の内容は探索者毎に異なるため、探索者はそれぞれ1D6を振り、出た目に応じた指令を受け取る。

よう、ガキ。貴様がゲームの参加者か?
さあ、最初のミッションだ。達成すればちょっとした報酬をくれてやろう。
失敗、あるいは従わなければ、お仕置きが待っている。

【指令の内容】
1:「好きな異性に告白しろ」。探索者が指令に従って実行すれば、ミッション成功。実行しない場合、ミッション失敗となる。相手がプレイヤーキャラクター以外の場合、実行して[APP✕5]ロールに成功すれば良い返事、失敗すれば断られる(ミッションの成否には無関係)。相手がプレイヤーキャラクターの場合は、プレイヤー次第。
2:「今から15分間、語尾に「ニャア」をつけろ」。リアル15分間、語尾に「ニャ」をつけなければならない。付け忘れるとミッション失敗となる。
3:「他のメンバー1人を選び、罵倒しながら思い切りビンタしろ」。実行すると、対象に1点のダメージを与える。実行しない場合、ミッション失敗となる。
4:「5分以内に、携帯のアドレス帳をすべて削除しろ」。探索者が指令に従って実行すれば、ミッション成功。実行しない場合、ミッション失敗となる。
5:「大盛りパフェを15分以内に完食しろ」。[CON✕5]ロールを行い、成功すればミッション達成。判定に失敗したり、実行しないとミッション失敗となる。
6:「仲間にお前が過去に犯したなかで、最も重い罪を告白しろ」。探索者が指令に従って実行すれば、ミッション成功。実行しない場合、ミッション失敗となる。
【達成報酬】
 指令をクリアすると、探索者は報酬としてちょっとした小さな幸運を得ることができる。指令をクリアした探索者には「よくやった、これはちょっとした報酬だ。ありがたく受け取れ」と『キョウスケ』からダイレクトメッセージが届く。報酬の内容はキーパーが探索者の性格や願望に合わせて決めると良いが、おおよそ次のようなものがある。

・少額のお金(500〜千円程度)を拾う。
・家から「今夜の夕飯は○○(探索者が喜びそうな食べ物)」といった連絡が入る。
・思いを寄せていた人から、今度遊びに行こうとメッセージが入る。
・懸賞、コンサートチケットなどに当選したとの連絡。
・カバンの中から失くしたと思っていた物が見つかる、など。























Voice 01

第一の指令の成功・失敗によらず、第一の指令が終わったところで、探索者はどこからともなく聞こえてくる小さな男の子の声を聞く。

『Yが来るよ。Yは素質を持った者を探している。もう逃げられない』

辺りを見回しても、子供の姿はなく、〈聞き耳〉に成功しても、どこから聞こえてきたのか分からない。〈心理学〉に成功すれば、その声がどことなく、あなたたちに忠告を発しようとしていることに気づく。























第二の指令

第一の指令が終わると、『キョウスケ』から続けて新しいダイレクトメッセージが届く。そこには『キョウスケ』から次のような指令が記載されている。

『さあ、次の指令だ。金を払わずそのまま店を出ろ』

店は混雑している。探索者が指令に従うのであれば、店員に気づかれないまま簡単に出ることができる。しかし、指令に従わなかったり、一旦出てから再び戻って料金を払うなどした場合には指令は失敗したこととなり、従わなかった探索者は「お仕置き」を受ける。

【達成報酬】
指令を達成すると、『キョウスケ』からダイレクトメッセージが入る。
「すぐ近くに街路樹があるだろう?そいつの根本を見ろ」
見れば確かにすぐ近くに銀杏の木が植えられており、その根本には買い物用のビニール袋が置かれていることがわかる。中身を確認すれば、そこには指令をクリアした人数✕100万円の札束が入っている。























Voice 02

指令の成功・失敗によらず、第二の指令が終わったところで、探索者はどこからともなく聞こえてくる小さな男の子の声を聞く。

『Yは邪悪なものを読み、彼の司祭となる人間を求めている』

辺りを見回しても、相変わらず子供の姿はなく、〈聞き耳〉に成功しても、どこから聞こえてきたのか分からない。〈心理学〉に成功すれば、その声がどことなく「Y」を恐れていることが分かる。























第三の指令

第二の指令が終わると、『キョウスケ』から続けて新しいダイレクトメッセージが届く。そこには『キョウスケ』から次のような指令が記載されている。

『道路を渡ったところに店があるだろう?』
『そこで、万引きをしてみせろ。煙草とライターだ』
『安心しろ、お前ら全員で1つで十分だ』

見れば道路を渡った先に、葉巻たばこ等を扱う雑貨屋がある。店には海外製の珍しい煙草や葉巻、装飾された金属製オイルライターがいくつかならべられている。店のカウンターには、入れ墨にスキンヘッド、ヒゲを生やした大柄の男が作業用エプロンを着て座っている。彼の目を盗んで万引きするには、〈隠す〉技能に成功するか、他の探索者が〈言いくるめ〉などの技能を使いながら彼の気を引く必要がある。

◆ 雑貨屋の店主
年齢:22歳 職業:店長
STR 17 CON 14 SIZ 15 INT 11 POW 10 DEX 11 APP 8 EDU 14
正気度 50 耐久力 15
ダメージボーナス +1D4
武器:パンチ 70%, ダメージ1D3+DB
組みつき 60%, ダメージ組みつき
技能:目星60%、聞き耳60%、経理70%、値切り60%

もし店員の男に見つかってしまった場合、彼から逃げる必要がある。これには男とのDEX抵抗ロールに勝利する必要がある。DEX抵抗ロールに敗北した場合、店員に捕まって説教を受ける。万引きがばれて捕まった探索者は、売り物にならないという理由で定価の倍の値段で買わされた上、さらに〈信用〉技能が20%低下する。
タバコ+ライターの入手に失敗した場合は全員が、指令に従わなかった場合は従わなかった探索者が指令に失敗した扱いとなり「お仕置き」を受ける。























Voice 03

指令の成功・失敗によらず、第三の指令が終わったところで、探索者はどこからともなく聞こえてくる小さな男の子の声を聞く。

『彼の「本」を探すんだ。でも……』

声はそこで途切れてしまう。周りを見渡しても、声の主を発見することは出来ない。また、近くを見ても本屋や本を取り扱っているような店などはない。探索者たちが「本」を探そうとすると、灰崎は突然焦ったような態度を示しながら「そんなものより、早く指令を」などと「本」のことから気を逸らそうとする。〈心理学〉に成功すれば、灰崎が「本」について何かを知っており、何かを隠そうとしていることが分かる。























第四の指令

第三の指令が終わったところで、キーパーはプレイヤーに見えないようにダイスを振る。このダイスの出目には意味がない。プレイヤーに、次の指令の対象をランダムに選んだと思わせるためのものだ。そして『キョウスケ』から続けて新しいダイレクトメッセージが届く。そこには『キョウスケ』から次のような指令が記載されている。

『お前らのなかの、そうだな。灰崎哀という女』
『そいつが大切にしているペンダントを奪って破壊しろ』

指令を見ると、灰崎は怯えた顔で自分のバッグを抱え「やめて、お願い。これだけは」と必死に懇願する。彼女はどれだけ説得されても、それに応じることはない。そうしていると『キョウスケ』から再びダイレクトメッセージが届く。

「ぐずぐずするな、このクソザコナメクジども!抵抗するなら無理にでも奪え」

灰崎からバッグを奪う場合は彼女との戦闘になる。彼女は組みつきなどで完全に抑え込まれるか、気絶あるいは死亡するまで抵抗し続ける。彼女から無理やり取り上げようとするなら、探索者は1/1D3の正気度ポイントを失う。彼女のバッグの中を見ると、中には写真入りのロケットペンダントと古びた1冊の本を発見することが出来る。

【ペンダント】
ペンダントに収められた写真には、彼女と彼女に似ているが少し年上らしい女性とが仲良く一緒に映っている。灰崎の友人である探索者は、彼女には仲のいい年上の姉がいたことを思い出す。しかし彼女は数ヶ月前に事故で死んだのだという。ロケットペンダントは探索者が宣言すれば破壊することができる。また中の写真を破り捨てたりライターで燃やすにも判定は必要ない。ペンダントを破壊すれば指令達成となるが、指令に従わなかった者は失敗した扱いとなり「お仕置き」を受ける(これには灰崎も含まれる)。

【グラーキの黙示録 第XII巻】
本は真っ黒な表紙に、表題のようなものは書かれていない。これは”グラーキの黙示録 第XII巻”の不完全な和訳であり、内容を理解するには平均6週間、斜め読みで12時間が必要である。このためシナリオ中に内容をすべて解読することは出来ない。しかし軽く目を通せば「イゴーロナク」と呼ばれる存在と、彼に付き従う小さな者たちについての事柄が書かれていることが分かる。内容はいずれも荒唐無稽で狂信的、あるいはオカルトじみており、理解することはできない。
この本の中には、イゴーロナクを召喚するための呪文が密かに織り込まれており、これを頭の中でも読んでしまったものは、知らないうちにイゴーロナクを呼び出してしまうことになる。これにより、この時点ですぐにはイゴーロナクは登場しないが、シナリオのクライマックスシーン(「最後の指令」を参照)で分岐が発生する。

【達成報酬】
指令を達成すると、『キョウスケ』からダイレクトメッセージが入る。

「近くのベンチの横にキャリアケースがある。暗証番号は15679だ」

見ればキャリアケースが置かれていて、暗証番号式の鍵がかかっている。彼のメッセージに従い暗証番号を入れるとロックが外れる。キャリアケースの中には数千万相当の札束と白い粉の入った袋が複数詰まっている。























Voice 04

指令の成功・失敗によらず、第四の指令が終わったところで、再び探索者はどこからともなく聞こえてくる小さな男の子の声を聞く。

『決してそれを読んではいけない。名前を知れば引き返せなくなる』

そしてこれまでと同様に、周りを見渡しても、声の主を発見することは出来ない。























最後の指令

第四の指令が終わると、『キョウスケ』から続けて新しいダイレクトメッセージが届く。そこには『キョウスケ』から次のような指令が記載されている。

『すぐ近くに7階建ての廃ビルがあるな?その屋上へ行け。10分以内だ』

見ればすぐ近くに古びた廃ビルがある。ビルにはエレベータはなく、階段を使って屋上に上がる必要がある。探索者は〈登攀〉あるいは[DEX✕5]の判定を行い、成功すれば問題なく屋上にたどり着くことが出来るが、失敗した場合は時間に遅れてしまい「お仕置き」を受ける。そして、屋上に揃ったところで再び『キョウスケ』からのダイレクトメッセージが届く。そこには次のように書かれている。

『揃ったようだな。ここからが本題、最後の指令だ』
『お前たちにはここで殺し合いをしてもらう』
『生き残れたならば、お前を司祭にしてやろう』

もしここで灰崎の持っていた”グラーキの黙示録 第XII巻”の一文を読んだ探索者がいた場合、その中で指令を最も多く達成したもの(=最も「お仕置き」を受けた回数が少ない者。同じ場合は、そのうち正気度の低い方)が、イゴーロナクに変身する。また誰も”グラーキの黙示録 第XII巻”の一文を読まなかった場合は、代わりに灰崎がイゴーロナクへと変身する。対象者は突如体が膨張して、頭部のない巨大な人影へと変異する。そして鋭い歯が並ぶ、赤い口の開いた両手を振りかざす。

人間からイゴーロナクへ変身する様を目撃した探索者は1/1D20の正気度ポイントを失う。

イゴーロナクは探索者たちへと襲いかかる。ここからはイゴーロナクとの戦闘を行う(イゴーロナクのデータは「クトゥルフ神話TRPG」P.207を参照)。戦闘中、キーパーは探索者に〈聞き耳〉の判定ができることを伝える。〈聞き耳〉に成功すると、再びあの子供の声が聞こえて、次のように言う。

『「本」を燃やすんだ。早く!』

ここで探索者が灰崎が持っていた”グラーキの黙示録 第XII巻”を燃やせば、イゴーロナクを退散させることができる。本を燃やすには、シナリオ中で入手できるオイルライターを用いるか、探索者が所持している、火を起こすことができる道具を使う必要がある。”グラーキの黙示録 第XII巻”や火を起こすための道具をイゴーロナクに変身した者や灰崎が所持していた場合、これらを入手するための受け渡しや、屋上の床に落ちたそれらを探して拾うために〈目星〉ロールと1ラウンドが必要だ。”グラーキの黙示録 第XII巻”に火を付けると炎は1D3ラウンドをかけて”グラーキの黙示録 第XII巻”を燃やし尽くす。触媒である”グラーキの黙示録 第XII巻”が燃え尽きると、イゴーロナクは退散し、変身していた者は元に戻って意識を失う。

”グラーキの黙示録 第XII巻”をその場にいる誰もが所有していなかったり、燃やす手段がない場合、イゴーロナクへ対抗する手段はない。本は燃やす以外の方法では、なぜか破ることも切り刻むようなこともできず、破壊できない。この場合、探索者はその場から逃げるか、またはイゴーロナクをビルの屋上から突き落とすなどの行動を取ることができるだろう。イゴーロナクから逃げるには、彼のDEX14と探索者のDEXを抵抗表で競わせる。またイゴーロナクをビルから突き落とすには、イゴーロナクのSTR25と参加する探索者のSTRの合計値とを抵抗表で競わせる。判定に勝利すれば探索者はどうにか生還することができるが、失敗すればイゴーロナクの餌食になってしまうだろう。こちらのケースでは、イゴーロナクに変身した者は元に戻ることはない。彼または彼女は、イゴーロナクの大司祭となり、イゴーロナクは再び人間の世に歩み出す。























クリア報酬

・イゴーロナクを退散させた:2D10
・退散には失敗したが、どうにか逃げて生き延びることが出来た:1D10












inserted by FC2 system