底闇

トコヤミ

※※注意事項※※
これは呪われたシナリオです。このセッションに参加した者は皆死にます。実際、私の友人も命を落としました。


探索者はそんな出だしから始まるオンラインセッションの募集に応募する。その時はただの冗談だと思っていたのに……。
やがてセッションが開始すると、探索者の身の回りで次々と恐ろしい事態が起こりはじめる──

推奨人数:2〜4人
想定プレイ時間:2時間(オンラインのテキストセッションの場合は5〜6時間)




本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


※注意:以下にはシナリオのネタバレが含まれます。























シナリオの背景

昔、ある村に女の子が生まれた。彼女は静子(しずこ)と名付けられる。彼女は異様な容姿と超能力を持ち、常人の何倍もの速さで成長すると生後7ヶ月で歩きはじめ、10ヶ月で言葉を喋りはじめたという。そんな彼女が3歳になった頃、海外からやってきた1人の学者が村を訪れる。彼は彼女が外なる神の血を引く子であると見抜き、その危険性を危ぶんだ彼は村人を先導して彼女の殺害し、彼女の遺体を井戸へ捨ててしまう。その後、村では原因不明の病が蔓延してほとんどの村人が死亡。またわずかに生き残った者も村を去ってしまう。それは村人を恨みながら死んでいった、静子の呪いだった。

そして現代。村が消滅しても、静子の呪いは終わってはいなかった。そしてその呪いは、とあるTRPGシナリオの作者が彼女の話を元にホラーシナリオ【魔女の家】を作ったことで現代に蘇る。呪いはセッションに参加したプレイヤーに降りかかり始める。そして彼女は暗く冷たい井戸の底で1人、この世を呪うと共に助けを求め続けているのだった──。



静子(しずこ)、呪いの元凶
STR 18 CON 18 SIZ 7 INT 15 POW 20 DEX 14
正気度 0 耐久力 20
ダメージボーナス: +1D4
武器:首絞め 65%、窒息
爪 45%、ダメージ 1D4+db
髪の毛 55%、ダメージ 1D4+db
装甲:なし。ただし物理的な武器からはダメージを受けない。
正気度喪失:1/1D8




プレイヤー向け情報

探索者はヘッドセットを着用して行うオンラインのTRPGセッションに参加したという設定で進行する。探索者は通常の名前の他、ハンドルネームとセッション内のキャラの名前を決めておくとよい。探索者の職業・年齢などは何でもいい。ただしシナリオの都合上、現在はマンションで1人暮らしをしている設定が必要だ。推奨技能は〈図書館〉あるいは〈コンピュータ〉のいずれかと〈目星〉などがあげられる。



このシナリオについて

このシナリオでは探索者が参加するセッション内と現実世界での探索の2つが同時並行して進行する。以下ではこれらを区別するため、セッション内のセッションで得られる情報には【セッション内】、探索者の現実世界で起きるイベントには【現実】と記述する。



導入

【現実】
探索者はTRPGのオンラインセッションに参加を申し込む。ホラー系のシステムで、タイトルは「魔女の家」、募集要項にはシナリオ冒頭にあるような注意事項が書かれている。セッションはヘッドホンを着用して行うオンラインのボイスセッション形式のようだ。そしてセッション当日、探索者たちはパソコンを立ち上げセッション会場のサーバへと集まる。探索者が集まると、キーパーは探索者たちに今回のシナリオはインターネット上で入手したシナリオであるということを伝える。

会場となるセッションルームには家の間取りを表したような地図と何枚かのハンドアウトが記載されたカードが置かれている。カードにはそれぞれ「居間」「押入れ」「風呂場」「誰かの部屋」という言葉が記述されている。カードを裏返すと、探索して得られる情報が書かれているようだ。全ての探索者が揃い準備が終わるとキーパーはセッションを開始する。



【セッション内】
セッション内のキャラクターは「気づいたら見知らぬ部屋の中にいた」という場面から始まる。キャラクターたちは古い和風の平屋建ての家の居間で目を覚ます。窓はあるものの外は真っ暗で何も見えない。またこの窓はどんなにがんばっても開くことができず、破壊することもできない。

「気がつくと、あなたたちは古い日本風の家屋の一室で目を覚まします。あなたたちにはなぜこんなところにいるのかという記憶はありません」

キーパーは上記のように状況を説明した後、「居間」のカードを裏返して情報を公開する。



居間

古い和風の部屋。古いテレビや電話が置かれているが、どれも機能していない。窓はあるが外はまっくらで何も見えず、開くことも破壊することもできない。部屋の中央には小さなちゃぶ台があり、その上には一冊の絵本が置かれている。

絵本のタイトルには「かわいそうな魔女」と書かれている。本の中身を読もうとすると、キーパーは新たにカードを取り出してそれを表側にする。その中には次のような情報が書かれている。



かわいそうな魔女

ある所に、1人の女の子がいました。彼女は生まれつき不思議な力を持っていて、怪我や病気を治したり手を触れずに物を動かしたり、一瞬で遥か遠くに移動することが出来ました。彼女はその力を村の人のために使いましたが、村人たちはそんな普通ではない力を持つ彼女を恐れました。


【現実】
「かわいそうな魔女」の絵本の情報を読んでいると突如、カードに書かれた文字がうねるように動き始める。文字は形を変え、カードの上に別の文章が浮かび上がる。


痛い

<プレイヤー資料:浮かび上がった文章>


文章が浮かび上がると同時に、探索者の自宅の電話が鳴る。電話に出た探索者は、電話先からは不気味な息遣いを聞くことになる。さらにドタドタと何かが天井裏をかけまわり、誰かが壁をバシバシと叩きはじめる。

● 不気味な現象に探索者は0/1の正気度ポイントを失う。



セッションの進行

【セッション内】
キーパーは「アップロードする画像を間違えたかな。音はきっと猫か何かだろう」などと事態を深刻に考えようとはせず、探索者に探索を続けさせようとする。キーパーは「押入れ」「風呂場」「誰かの部屋」の3枚のハンドアウトを提示して、行動の方針を決めるように促す。それぞれのカードの場所を調査すると探索者が宣言すると、キーパーはカードを裏返してハンドアウトを公開する。そして裏返したカードに応じて、現実世界でイベントが発生する。

『誰かの部屋』のカード

【セッション内】
カードには次のように記されている。
「小さな部屋。小さなちゃぶ台と角にたたまれた小さな布団がおかれており、子供のものだろうか、手毬やはじき等の古い昔の遊具が散らばっている」


【現実】
探索者のうちの1人をランダムで選ぶ。カードを開いた直後にこの探索者の背後でボールが弾むような音が聞こえる。振り返って見るとそこには探索者に見覚えのない手毬が転がっている。手毬を観察すると「静子」と刺繍されていることが分かる。


『押入れ』のカード

【セッション内】
カードには次のように記されている。
「誰かの部屋にある押入れからガタガタと音がする。戸を開けるが、中には何もいない。
壁には子猫の落書きがある。小さな子供が書いたもののようだ」


【現実】
カードを開いたとたん「ガタガタ」と探索者たちの部屋のクローゼットが音を立てはじめる。そして最初に中を開けた探索者に対して、中から長い髪の女が飛びかかってくる。クローゼットを開いた探索者が〈回避〉の判定に失敗すると凄まじい力で首を締め付けられて1D4のダメージを受ける。気がつくと女の姿は消えており、代わりに首には手の跡がくっきりと残っている。恐ろしい事態に遭遇した探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。

その後、クローゼットを開けた探索者はその中の壁に落書きが描かれていることに気づくことができる。描かれているのは花や子猫、人物などの絵で、小さな子供が描いたものと思われる。さらに〈目星〉の判定に成功すると、クローゼットの隅に赤いペンで書かれている文章を発見する。


助けて

<プレイヤー資料:押入れのメッセージ>



『風呂場』のカード

【セッション内】
カードには次のように記されている。
「風呂場の浴槽には、茶色く濁った水が溜まっている」


【現実】
情報が公開された後、〈聞き耳〉に成功した探索者は、自宅の風呂場からポタポタと水滴の垂れる音が聞こえてくることに気づく。探索者が風呂場に行くと、浴槽には茶色い水が溜まっている。キーパーは浴槽に近づいた探索者から1名をランダムに選ぶ。選ばれた探索者は、突然浴槽の水の中から伸びた青白い手に首元を掴まれて、強い力で浴槽の中へと引きずり込まれる。探索者が逃れるには、青白い手のSTR18と探索者のSTRを対抗表で競わせ、探索者側が勝利する必要がある。探索者が負けた場合、探索者は浴槽に引きずり込まれる。浴槽に引きずり込まれた探索者はさらにCON×5で判定を行い、失敗すると1D6のダメージを受ける。成功した場合は窒息せずにどうにか抜け出すことができる。また探索者が機転を効かせて浴槽の栓を抜くなどした場合は、受けるダメージを半分にしてもいい。

● 恐ろしい体験をした探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。

● 濁った水に対して〈目星〉
成功した探索者は濁った水の底に何か見たことのない模様が描かれていることに気づく。尚、風呂の水を抜いた探索者は〈目星〉を振るまでもなく同じことに気づくことができる。

● 模様に対して〈クトゥルフ神話〉技能で判定
成功した探索者はこれが《門の創造》の呪文により作り出されたこの場所と別のどこかとをつなぐ門であることに気づく。

この模様は静子の家の井戸と探索者の自宅の浴槽をつなぐ門になっている。この門を通り抜ける方法は、インターネット上の情報提供者から入手できる【魔女の家】のシナリオに記載されている。それまでは〈クトゥルフ神話〉技能に成功したとしても、門を通り抜けることはできない。



キーパーに起きたこと

このイベントは【セッション内】でカードを1〜2枚程度開いたところで差し込むこと。突如、通話先でガシャン!と大きな音がして、キーパーが苦しみ始める。キーパーは「まさか本当にこんなことが。噂は本当だったのか」などと叫ぶ。ヘッドセットからは、ドタドタとキーパーが部屋のなかを逃げ回るような足音が聞こえてくる。やがてキーパーは大きな悲鳴をあげたのを最後に反応が途絶える。探索者がセッション会場からログアウトしたりブラウザを閉じる、パソコンの電源を切るなどの試みは全て失敗する。これらの操作はなぜか全て受け付けられず、セッション会場から抜け出すことはできない。また探索者が自分の部屋から逃げ出そうとしても、自宅の窓・玄関が硬く閉ざされ、脱出することができないことが分かる。携帯電話等で外部に連絡をしようとしても、通話先からは不気味な息遣いのようなものが聞こえてくるだけだ。

● 異常な事態に探索者は0/1D4の正気度ポイントを失う。



定期イベント

以降のパートでは探索者らが1回行動を起こす毎に、キーパーは探索者1人につき1回、探索者に見えないように25%を目標に判定を行う。成功した場合は1D6を振り、出た目に応じて次のようなイベントが発生する。尚、この表の内容は一例であるので、キーパーはこの他にも探索者の恐怖を煽る演出を加えてもよい。

1:廊下から子供のすすり泣く声が聞こえてくる。覗きに行っても誰もいない。
2:青白い手が探索者の背後から伸びる。気配を感じて振り向くと何もいない。探索者は0/1の正気度ポイントを失う。
3:インターフォンが鳴る。覗き穴から見ると、血走った目が向こう側からこちらを覗き込んでいる。探索者は0/1の正気度ポイントを失う。
4:天井から頬に水滴が垂れる。見上げると大量の髪の毛がびっしりと天井を覆い、その中から恐ろしい形相の女が探索者を睨みつける。探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。気がつくと女の姿は消えている。
5:ドンドンと隣から誰かが壁を叩く。ここは角部屋で、隣に部屋はないはずなのに。探索者は0/1の正気度ポイントを失う。
6:窓の外に一瞬、誰かが通り過ぎる。ここは地上4階のはずなのに。探索者は0/1の正気度ポイントを失う。




インターネット上から得られる情報

キーパーがいなくなった後も、セッション会場にはハンドアウトのカードが残されたままになっている。まだ開かれていないカードはキーパーがいなくとも開くことができる。またセッション内に残されたこれらのカードに加え、探索者がいる部屋の中やインターネットを通じて現実世界での探索を行うこともできる。



シナリオ「魔女の家」について調べる

それは実在した人物「長村静子」をモチーフにしたシナリオだということが分かる。しかし詳細は明らかになってはおらず、本当に存在するのかすら怪しいということだ。さらにこのシナリオをプレイした者は例外なく、セッション中に魔女の呪いで死ぬと噂されている。

● この事実を知ってしまった探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。



「静子」について調べる

「長村静子」という名前がヒットして、次のことが分かる。

G県の山奥、三富根村という寒村で静子は生まれた。彼女には不思議な力があり、そして彼女は異様な風貌をしていた。彼女はおどろくべき速さで成長し、生後7ヶ月で歩きはじめ、10ヶ月で言葉を喋りはじめたという。村人たちは彼女を「魔女の子」「真っ黒な娘」と忌み嫌った。

やがて彼女の3歳の誕生日、村に海外から1人の学者が招かれる。彼は静子を化物の子だと言い放ち、彼女を恐れる村人と共謀して彼女を殺害するとその遺体を彼女の家の井戸に投げ捨ててしまった。

彼女が死んだ数日後、村では恐ろしい異変が起きる。原因不明の病が蔓延し、住人のほとんどが死んでしまったのだ。生き残った僅かな人間も村を去り、現在三富根村は廃村になっている。病気の原因は現在に至るまで判明しておらず、一説には静子の呪いだとも噂されている。



キーパーのブログ

さらに「魔女の家」または「静子」について検索した場合に、図書館、またはコンピュータの判定に成功すると、キーパーのSNSの書き込みがヒットする。どうやら彼(彼女)は静子に関する例のシナリオを探していたようで、少し前にそのことが書かれている。

○月○日
念願の「魔女の家」を手に入れた!
以前からやってみたいと思っていた例の静子に関するシナリオ。
「参加したら死ぬ」という噂は果たして本当か、これからセッション開始です。

そしてこの書き込みに対して、ほんの30分ほど前に匿名の返信がつけられている。

投稿者:名無しさん
以前にそのシナリオに参加した者です。
本当にやめた方がいい。私以外の参加者は皆死にました。
もう遅いかもしれない、もし何かあったら返信下さい。

ブログのコメントを見て「名無しさん」の投稿に返信を返した場合、「名無しさん」からの次のような返信が返ってくる。そのコメントにはURLのリンクが貼られている。探索者がそのリンク先をクリックすれば、そこから「魔女の家」のシナリオデータをダウンロードすることができる。

投稿者:名無しさん
呪いを解くには、シナリオを拡散して誰かに見せるしかありません。
そうすればあなたは助かります。ここにシナリオのファイルがあります。
ただし、中身を見る場合は注意して下さい。
既にセッションを行っている場合、呪いが一気に進行する可能性があります。



魔女の家

ダウンロードしたシナリオデータを読むと、次のことが分かる。このシナリオは典型的なクローズドシナリオで、殺害され井戸に投げ捨てられた「静子」の怨念が残る屋敷に閉じ込められた探索者が脱出方法を探すというものだ。このシナリオには2つのエンディングがある。1つは《門の創造》の呪文によって屋敷を脱出するノーマルエンドで、そしてもう1つは静子が沈められた井戸の中から彼女の遺体を見つけ出すことで、静子の怨念を沈めるというトゥルーエンドだ。探索者はシナリオを読むことで《門の創造》(クトゥルフ神話TRPG P.289)の呪文を手に入れることができる。さらに風呂の浴槽にある印を見つけていた場合は、その印が《門の創造》によって作られた門であることに気づくことができる。

《門の創造》を習得することで、探索者は風呂場にある門から静子の遺体が沈められた井戸の底まで行くことができるようになる。風呂場の門を通過するには2マジック・ポイントを消費する。そして探索者のうち誰か1人でもシナリオを読むと探索者たちにかけられた静子の呪いの進行が一気に加速する。探索者のうち誰かがシナリオを読んだ場合、探索者の部屋が揺れて激しく軋みはじめる。そして窓ガラスが割れて大量の黒く長い髪の毛が襲い掛かってくる。尚、シナリオを読んだ探索者が1名だとしても、全ての探索者の元に静子が同時に現れることに注意する。

● 探索者は1/1D8の正気度ポイントを失う。




結末

静子との戦闘が始まる。探索者が場から逃れるには風呂場の門から井戸の底へと移動するか、シナリオをインターネット上に拡散するしかない。風呂場へ向かう場合、風呂場へと到達するまでには1戦闘ラウンドが必要となる。その次のラウンドの行動で2マジック・ポイントを消費すると門を通り抜けることができる。またインターネットにシナリオを拡散するには手元に【魔女の家】のシナリオファイルを保存したコンピュータやスマートフォン、タブレットなどが必要になる。そして〈コンピュータ〉あるいは〈言いくるめ〉などの技能のロールに成功すると【魔女の家】のシナリオをインターネット上に拡散することができる。



拡散される呪い

シナリオをネット上に配布すると、即座に探索者たちの呪いを解除することができる。シナリオはまたたく間にインターネットに拡散し、静子の呪いは日本中のTRPGファンに広がっていく。やがてそれは、取り返しのつかない事態へと発展していくだろう…。



井戸の底へ

シナリオを読んで《門の創造》の呪文を習得した後であれば、風呂場の門を使って静子の遺体が沈められた井戸の底へと行くことができる。それには襲い来る静子の攻撃を避け、風呂場へたどり着く必要がある。無事に門をくぐり抜ければ、三富根村の井戸の底にたどり着くことができる。井戸の底で〈目星〉あるいは〈水泳〉のロールに成功すれば、濁った水の中から白骨化した静子の遺体を発見することができる。そして彼女の遺体を見つけ出し、井戸から引き上げれば、彼女の呪いは消失する。



クリア報酬

• シナリオクリア:2D6
• 呪文の習得:+1D3
• 静子の遺体を発見し、シナリオの呪いを解いた:+1D6
• シナリオを拡散した:-1D4

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