雪花 -sekka-

シナリオ概要

冬の花 呪われた血筋 母子の愛──
神の御心は無慈悲にて
それでも求むるは人の業か、人の心か

ある町に蔓延する自殺・精神症、病の友人、冬に咲く桜、それらの出来事を繋ぐものとは。 雪に咲く花は、美しい──。



推奨人数:2〜4人 想定プレイ時間:3時間(オンラインのテキストセッションの場合はで9時間)

キーパー向け情報

今から400年ほど昔、村には1人の豪族がいた。彼は善良な男だったが、20の歳に若くして妻を亡くし、以来40を迎えても父親になる幸せを知らなかった。そこで彼は無夜様に願かけを行い、シュブ=ニグラスとの間に娘を授かる。娘は「露」と名付けられ、彼女のために「お袖」という名の乳母が雇わた。やがて露は美しい少女へと育っていくが、15の歳に病に倒れ、医者からは死が近いことを告げられる。 母親同然の愛情で露を育てたお袖は、無夜様に自らの命と引き換えに露の命を助けてほしいと願う。するとほどなくして露の病気が全快し、その代わりにお袖は病に倒れて命を落とす。彼女は亡くなる直前、皆が悲しみに暮れる中で全てを打ち明け、自分が死んだら屋敷に桜の木を植えて欲しいと伝えたという。こうして彼女の死後、屋敷の庭には桜の木が植えられる。その桜は人々から乳母桜と呼ばれ、その花が満開となる時、”等価の代償と引き換えに病を癒やす”と云われるようになっていった。

……かくして、シュブ=ニグラスの呪われた血は、露の子孫である桜塚家の者へと紡がれた。桜塚家の女性は成長して15歳になると必ず病に倒れ、死の淵を彷徨う。これはその血に流れるシュブ=ニグラスの因子が覚醒して「膿の母」へと変異を遂げるためであり、やがて彼女は完全に「膿の母」へと変異を遂げ、地球上に数日間顕現した後死を迎えることになる。これを止めるには変異が完了する前に彼女を殺害するか、彼女を救いたいと願う者が満開の乳母桜に願をかけ、自らの命と引き換えに彼女の変異を止めるしか手段はない。


プレイヤー向け情報

今回の導入は2つのグループに分けて開始される。また、各グループ少なくとも1人は探索者が所属する必要がある。進行を円滑にするために探索者は事前に全員が何らかの形で知り合いであり、導入後は分散せず常に行動を共にするものするのがいいだろう。また本卓の探索者は「誰かが困っていれば助け、謎を解き明かし事件の解決に努めよう」とする性格の持ち主であることが望まれる。〈目星〉などのよく使用されるもの以外では〈心理学〉、〈生物学〉or〈博物学〉、〈信用〉or〈言いくるめ〉、〈歴史〉などの技能が推奨される。

導入1:探偵、およびその協力者
あなたはある事象の調査を依頼される。

導入2:高校生、またはそのクラスを担当する教師
あなたは桜塚洋子(高1)の友人、または担任である

※学生探索者について
学生探索者については「クトゥルフ2010」P.140の学生探索者のルールを適用するか、また簡略化のため次のハウスルールを適用しても良い。
・職業は既存職業を将来の職業・得意分野などという扱いで自由に選択
・能力値は通常通り、ただしEDUだけは年齢-6で決定する


NPC


桜塚 洋子(さくらづか ようこ)、宿命付けられた死
幼いころガンで父親を失い、現在は唯一の肉親である母と2人で暮らし。この秋から原因不明の病に倒れて現在自宅で療養している。肺の病気で症状は風邪に似ているが、体は衰弱し医師からはもう長くないと言われている。

年齢:15歳 職業:高校1年生
STR 11 CON 7 SIZ 10 INT 14 POW 15 DEX 9 APP 12 EDU 10
正気度 75 耐久力 9

桜塚 結衣子(さくらづか ゆいこ)、呪われた血脈
洋子の母。桜塚家の呪われた血を継ぎ、シュブ=ニグラスに通じる力を持つ。彼女の呪詛は周囲の者から命を奪い、それを乳母桜に捧げることで開花を促進させるものである。そして花が満開となった時、自身の母がそうしたように、自らの命を引き換えに最愛の娘を救うことを願う。

年齢:秘密 職業:資産家
STR 10 CON 12 SIZ 12 INT 21 POW 23 DEX 12 APP 16 EDU 25
正気度 25 耐久力 12
呪文:《膿汁の呪印》《黒い仔山羊の召喚/従属》

古田 幸三郎(ふるた こうざぶろう)
HO1探索者の知り合いで熟年の刑事。「桜坂1丁目」で多発する自殺・精神疾患に不審を感じ、HO1探索者に調査を依頼する。

年齢:51歳 職業:刑事
STR 9 CON 12 SIZ 11 INT 17 POW 15 DEX 9 APP 13 EDU 16
正気度 75 耐久力 12
技能:目星70%、聞き耳65%、心理学81%、追跡45%、言いくるめ40%、法律50%

アリッサ・シャトレーヌ、銀の黄昏教団のマスター
本名:アン・シャトレーヌ。復活した銀の黄昏教団のマスターであり魔女。詳細はクトゥルフカルト・ナウP.21を参照。
桜塚家の血の秘密を知っており「膿の母」を地上に顕現させるべく、その復活を阻む結衣子を探索者に殺害させようと目論む。

栄田 仁美(さかえだ ひとみ)、未亡人
最近、夫を自殺で失う。彼からは死の直前「黒山羊がやってくる」という話を聞いていますが、彼女の家を訪れたアリッサ・シャトレーヌより口止め料を渡されて、そのことを他の者には秘密にしている。
年齢:33歳 職業:主婦

藤沢トネ、大家
自殺した椎名 茜のアパートの大家。
年齢:72歳 職業:大家


オリジナル呪文

本シナリオでは、桜塚結衣子が使う特殊な呪文として、次の呪文が登場する。この呪文は探索者が覚えることはできない。この呪文は「膿の母(マレウス・モンストロルム P.146)」の能力を元に設定している。

《膿汁の呪印》
この呪詛は半径2km圏内に足を踏み入れた者を対象に発動する。犠牲者にはじくじくした潰瘍性の傷が体のどこかに現れて、その傷は次第に体全体へと広がっていき、犠牲者の耐久力ポイントを吸い取っていく。一度に吸い取る耐久力ポイントの量は任意。さらに犠牲者は悍ましい悪夢を見るようになり、耐えられず発狂する者も現れる。犠牲者たちから奪われた耐久力ポイントは乳母桜に与えられ、合計(探索者の人数×80)点に達した所で花は満開となる。

<参考にした神話生物>
・シュブ=ニグラス「マレウス・モンストロルム P.178」
・黒い子山羊「クトゥルフ神話TRPG P.177-178」「マレウス・モンストロルム P.43」
・膿の母「マレウス・モンストロルム P.146」
・銀の黄昏教団「クトゥルフカルト・ナウ P.15」


シナリオの進行

今回のシナリオは閉鎖空間を舞台としたものと異なり行動範囲は広く、探索者の行動によって物語の展開が大きく変化する。以下には想定される大まかなストーリーラインを提示する。キーパーはこれを参考にイベントの管理と物語の進行を整理するとよいだろう。

1.依頼
探偵探索者(HO1)は最近になって自殺や精神障害が相次ぐ地域の調査を依頼される。
向かった先で、探偵探索者は冬に咲く桜の花を見つける。

2.桜塚家
洋子の知り合いである探索者(HO2)は病欠中の彼女の家を訪れる。
そしてそこに、捜査中の探偵探索者(HO1)がやってくる。
屋敷では結衣子から、洋子の病気の話を聞かされる。
その屋敷では、雪の降る冬であるにも関わらず桜の花が咲き始めていた。

3.悪夢
探索を始めると、探索者は白昼夢を見るようになる。桜の花の舞い散る幻想的な空間で、黒い子山羊に遭遇し、夢と現実を行き来しながら、探索者の正気は徐々に削られていく。

4.事件の捜査
事件の捜査を進めるうち、共通点として現場付近に現れるアリッサ・シャトレーヌの噂を耳にする。やがてしろがねクリニックへと行き着く。

5.しろがねクリニック
捜査を進めるうち、しろがねクリニックに行き着いた探索者はアリッサ・シャトレーヌという人物に出会う。彼女は探索者たちに、結衣子を殺害するようにと依頼をする。

6.選択
最終的に結衣子に疑いを持った探索者たちは彼女を問い詰める。彼女は真相を打ち明け、あと1日だけ待ってほしいと探索者に懇願する。罪なき者たちの命か、母の愛か、それとも。探索者たちは最後の決断を迫られる。

探索パートでは探索を進める毎に時間経過が生じます。おおよそ次の目安で進むことを想定している。
・1日目:桜塚家を訪れた後、もう1〜2箇所
・2日目:3〜4箇所+しろがねクリニック
・3日目:桜塚家




導入


導入1

季節は冬。時間は金曜日の昼下がり。雪が降りしきるこの日、導入1探索者の事務所に知り合いの刑事、古田がやってくる。彼は「桜坂1丁目」という地域でここ数週間前から多発する自殺・精神疾患患者に疑問を抱き、裏に何かの事件が絡んでいるのではと睨んでいる。証拠が見つからず警察では事件性なしと処理されているため、彼はこの件を捜査することができないらしい。そこでこの謎を解明するために、彼は探偵である探索者の力を借りたいと言う。ここで探索者は古田より次の情報を得ることができる。

<桜坂1丁目の自殺者>
ここ2週間で3件。いずれも公園や河川敷などで木に縄をかけ、首を吊っていたという。これは日本の自殺者率と比較して突出した数値だ。古田からは自殺者の住所と自殺場所を教えてもらうことができる。
・栄田 一郎(39)、会社員、2週間前、河川敷
・日島 幸太(27)、フリーター、1週間前、無夜神社
・椎名 茜(19)、美大生、桜坂公園、3日前

<精神疾患患者>
症状は人によって様々である。具体的には「クトゥルフ神話TRPG」P.90の一時的狂気表(短期、長期)に従う。

古田は今ここで分かる情報は以上であり、あとは現地で直接調査をする必要があると伝える。雪の降る中、現地に赴いた探索者は雪に混じって舞う桜の花弁に気づくだろう。そして近くの屋敷の庭に咲く五分咲きの桜の木が目に入る。ここで導入シーンは終了する。


導入2

導入2の探索者には、高校の友人または生徒である桜塚洋子がいる。彼女は1ヶ月ほど前から体調を崩して現在自宅で療養している。そこで探索者は彼女の見舞いにと、彼女の家へと訪れる。彼女の自宅は「桜坂1丁目」という場所にある大きな日本屋敷で、庭には立派な桜の木が植えられている。探索者が屋敷に近づくと、雪に混じって白い桜の花びらが舞っているのに気づく。

〈博物学〉あるいは〈生物学〉などで判定:
成功すれば「エドヒガン」という白い花弁が特徴の品種であることが分かる。

屋敷の呼び鈴を鳴らすと、結衣子が出てきて玄関先で簡単な世間話をする。ここでの会話では以下の情報が含まれる。

<庭の桜について>
昔、先祖の手によって植えられたものである。しかし詳細については伝え聞かされておらず、何も知らない。花をつけ始めたのは数日前のことで、このようなことは初めてである。

ここで結衣子は嘘をついてる。彼女は乳母桜の言い伝えを知っているからだ。〈心理学〉に成功すれば彼女が何かを隠していることが分かるだろう。しかし指摘されてもはぐらかし、彼女は決して口にすることはない。ここで不用意に彼女に踏み込む探索者がいた場合、彼女の警戒心を仰ぐこととなり、その探索者への【膿汁の呪印】の効果が強化される。

<洋子の容態について>
1ヶ月ほど前から、風邪のような症状であるが医者にも原因は分かっていない。現在は離れにある自室で休んでいる。

<家族構成について>
父親は洋子が幼いころガンで他界し、現在は結衣子と洋子の2人暮らし。先祖からの財産があるため生活にこまることはないが、屋敷は2人で暮らすには広すぎると感じている。

そして話を聞いている途中、この付近の調査をしていた導入1探索者がやってきて合流する。結衣子は探索者たちをせっかくなのでと屋敷へ招き入れて、洋子の元に案内する。


桜塚洋子

洋子の部屋は屋敷の離れにある。彼女はベッドの上に横になっていて、結衣子が探索者たちが見舞いに来たことを告げると弱ってか細い声で、しかし嬉しそうに了承する。洋子は自分の病気について少し風邪をこじらせただけだからと気丈に振る舞い、早く治して学校に行きたい・皆と遊びたいといったことを探索者に告げる。

洋子に対して〈心理学〉で判定する:
成功した探索者は、彼女がそう言いながらも本心では長引く病気を不安に感じていることが分かる。

〈目星〉または〈心理学〉で判定する:
成功した探索者は、そんな洋子を見ながら物憂げな表情を浮かべる結衣子に気づくことができる。

しばらく世間話をした後は疲れた洋子を休ませることにして、探索者は屋敷を後にすることになる。結衣子はここで探索者に来てくれたことに対する礼を言い「これからも洋子のことをお願いします」と深々と頭を下げる。

結衣子に対して〈心理学〉で判定する:
成功した探索者は彼女から娘に対する深い愛情と、何かの強い覚悟のようなものを感じ取ることができる。

<RPの指針>
桜塚邸のシーンでは、母子の心理的な描写が重要になる。そこでここでは彼女たちのRPに関する指針を記載する。

この時点で母、結衣子は自身の経験から洋子の体に起こっていることを全て知っている。彼女はこのままでは洋子の命がないこと、そして彼女を救うためには【膿汁の呪印】によって乳母桜の開花を促し、満開になったところで自分の命を乳母桜に捧げるほかないことを知っている。彼女は全てを犠牲にしてでも娘を救う覚悟を決めており、ただ自分の死後、身寄りのない洋子のことを憂いている。一方で洋子は自分の体に起きていることについて「風邪」としか知らされてはおらず、詳しいことは何も知らない。長引く症状に徐々に自分が何か重大な病気を抱えているのではないかと考え始めているものの、結衣子に心配をかけまいと可能な限り明るく振る舞っている。


map

<プレイヤー資料:桜坂1丁目>


悪夢

以降の探索中に探索者はいくらかの頻度で悪夢を見ることになる。キーパーは探索中、以降に記すイベントを差し込む。これはおおよそ次の目安で発生する。
・夢ヴィネット1:1日目の夜
・夢ヴィネット2:2日目の探索中
・夢ヴィネット3:しろがねクリニック後


夢ヴィネット1:桜の木の枝に

1日目の探索で、1〜2箇所程度を回った後に次のイベントを差し込む。探索者たちが気づくと、いつの間にか周りに人通りがなくなっている。そして降りしきる雪に混じって、白い桜の花弁が舞っていることに気づく。

開花した桜の木の太い枝にロープのようなものが垂れ下がり、その先に何か黒いものがぶら下がってゆらゆらと揺れている。よく見ればそれが人であることが分かるだろう。

それは首をゆっくりと曲げ、血走った目玉があなたたちをじろりと見る。その顔は、手や足の露出した皮膚はおぞましい潰瘍性のじくじくとした傷に覆われ、そこから血にまみれた膿をにじませて、辺りに強い悪臭──腐肉が放つもの──を漂わせている。

そしてそれがあなたを見ると、腐って自重を支えきれなくなった首がちぎれて落ちる。転がり落ちたその首は、あなた自身のものだった。

この光景を見た探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。

探索者は自室のベッドで目を覚まし、今見たそれが夢であったことを自覚する。索者は昨夜は翌日集まる約束をして一旦解散、皆それぞれの自宅に帰ったことを思い出す。ここで探索者は自身の腕(右か左、どちらでも)に違和感を覚える。確認してみるとそこにはじくじくとした潰瘍性の小さな傷があることが分かる。

探索者は1点のダメージを受ける。また桜塚家で不用意に結衣子の警戒を煽った探索者は1点ではなく1D3点の耐久力ポイントを失う。
いずれの場合も、このダメージは《医学》や《応急手当》では回復できない。


夢ヴィネット2:膿汁の呪い

このイベントは、2日目の捜査中、2箇所程度を回った所で差し込む。いつの間にか寒さが増し、まるで白い花びらのような雪がしんしんと降りしきっている。探索者が手のひらに舞い落ちた雪を見ると、それが雪ではなく桜の花弁であることが分かる。気がつけば探索者の視界は真っ白な花弁に覆われて、その幻想的な白い闇の向こうから何かの声を聞く。

それはまるで子供をあやす子守唄のようで、その声は優しく唄う。

───「いあ しゅぶ・にぐらす」と。

声を聞いた途端、腐敗した肉の塊のような強い悪臭を感じ、ボトリと何かが落ちた音に気づく。それは自分の腕だった。ずり落ちた肉片はじくじくとした潰瘍性の傷に覆われていた。 見れば降りつもる桜の花弁が付着した部位から穢れた泥のような膿が広がっていく。
それは悪臭を放ちながらあなたの体全身を蝕んで、やがて残った方の腕と両の足も腐り落ち、あなたは白く降り積もった花弁の上に為す術もなく倒れ込んだ……

気がつくと探索者たちは無事で、元いた場所にいる。

この恐ろしくリアルな幻に探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う

さらに目を覚ました探索者は腕の膿んだ傷が前日より大きく広がっていることに気づく。

探索者は1点のダメージを受ける。また桜塚家で不用意に結衣子の警戒を煽った探索者は1点ではなく1D3点の耐久力ポイントを失う。
いずれの場合も、このダメージは《医学》や《応急手当》では回復できない。


夢ヴィネット3:黒い仔山羊

このイベントはしろがねクリニックでアリッサの話を聞いた後に差し込まれる。外に出た所で探索者は辺りを覆う雪に白い花弁が混じっていることに気づく。辺りに漂う悪臭。いつの間にか周りに人影はなく、探索者はじわりと膿んだ傷が広がるのを感じる。

白い花弁が舞い散る先にはあの女性、桜塚結衣子がいた。
物憂げな表情を浮かべる彼女の横、一本の黒い木がそびえている。

──彼女は再びあの言葉を唱える。

木がゆっくりと動き始める。そして探索者たちは気づく。
よく見ればそれは木ではなく、黒く長いロープのような枝が何本も生えた悍ましい怪物で、4本に分かれた太い根のようなものは蹄がついた脚だった。
ネバネバしたゼリー状の木、蹄と口と蛇のような腕を持つその怪物は、ホウホウと唸りるような声を上げ、その長くしなる触肢を探索者に伸ばす。

「黒い仔山羊」を目撃した探索者は1D3/1D10の正気度ポイントを失う

その後「黒い仔山羊」(「クトゥルフ神話TRPG」P.177-178)との戦闘が始まる。「黒い仔山羊」は1ターンに4回攻撃を行う。「黒い仔山羊」は容赦なく触肢で探索者に攻撃を仕掛ける。もし桜塚家で不用意に結衣子の警戒を煽っていた探索者がいた場合、「黒い仔山羊」はその探索者を優先的に狙う。ある程度探索者側に被害が出たところ(1〜2ターン程度を想定しています)で探索者は自分のベッドの上で目を覚まし、夢を見ていたことを自覚する。

目を覚ました探索者は戦闘で受けたダメージを回復し、気絶・死亡なども解除される。

夢の中の戦闘で死を体験した探索者は、そのリアルで恐ろしい体験に0/1D4+1の正気度ポイントを失う。
さらに目を覚ました探索者は、腕の膿んだ傷が前日より大きく広がっていることに気づく。

探索者は1点のダメージを受ける。このダメージは《医学》や《応急手当》では回復できない。


探索パート


栄田 一郎の自宅

平凡なサラリーマンであった彼の家は河川敷の近くにあり、探索者が訪ねると彼の妻、仁美が対応する。彼女は焦燥して疲れ切った表情をしている。彼女から亡くなった夫のことを聞くと、彼女はおどおどとした様子で探索者に視線を合わせようとしない。彼女は夫が2週間ほど前から突然おかしくなり、普段から何かに怯えるようになっていったといい「なぜそうなったのか私には何も分かりません。何も話すことはありません」とだけ淡々と伝える。

仁美に対して〈心理学〉で判定する:
成功した探索者は彼女が何かを隠しているだろうと感じる。そしてそのように隠すことに対して後ろめたさを感じていることを推測することができる。

彼女をさらに問い詰める場合は〈言いくるめ〉や〈信用〉〈説得〉で判定を行う:
判定に成功すると、夫が生前「しろがねクリニック」に通っていたこと、そして「体中が腐っていく。黒山羊がやってくる」と口にしていたこと、彼の遺体の腕には直径15cm程度の膿んだ傷があったことを探索者に教えてくれる。さらに彼女は1週間ほど前、ある人物から同じことを尋ねられ、他の者には口外しないようにと言われていたことを探索者に話す。

この「ある人物」とは神話的事象が表に出ることを阻むために裏で暗躍していたアリッサ・シャトレーヌのことを指している。アリッサは仁美の夫が生前通っていた「しろがねクリニック」の理事長の娘であると称し、仁美に同情したフリをしながら近づいた。そして彼女から「自分までおかしくなったと周りに思われないよう、この事は他の人には言わない方が良い」と忠告されたため、仁美は最初、探索者に口を割ることを躊躇っていたのだ。


日島 幸太のアパート

日島はアパートで一人暮らしのフリーターだ。彼が自殺した後、既に彼の部屋は引き払われている。周囲で聞き込みを行えば、彼の死後、外国人風の若く美しい女性が流暢な日本語で「彼が自殺する前、何かを言っていなかったか?」と聞いて回っていたことを知ることができる。


椎名 茜のアパート

一人暮らしだった彼女のアパートへ行くと、丁度部屋を片付けている大家の藤沢トネ(72)に会うことができる。椎名茜について訪ねると、彼女のことは集金くらいでしか顔を見ることはなく詳しくは知らないと返す。現在は彼女の部屋を片付け中で家具や家電などの大きなものは遺族が持っていってくれたものの、最後の掃除が残っており、年寄りには堪える作業だと愚痴を言う。

探索者は彼女の掃除を手伝うよう申し出ることができる。掃除を手伝う場合、〈目星〉の判定に成功すると、彼女のスケッチブックと病院の領収書を発見することができる。

<スケッチブック>
スケッチブックには、ここ数週間に彼女が描いたと思われる絵が残されている。そこには恐ろしく膿んだ傷を持つ人間の顔、花の咲く桜の木に吊るされた腐乱死体など、悍ましい光景ばかりが描かれている。

そして最後のページには、黒く巨大で何本ものロープのような枝をくねらせた木のようなものの姿がある。その絵は何かぞっとする悪夢を見ているかのようにも思えてくる。

この絵を見た探索者は0/1の正気度ポイントを失う。

<病院の領収書>
「しろがねクリニック」と病院の名前が書かれていることに気づく。住所からこの病院がこの近くにある心療内科のクリニックであることが分かる。


河川敷、桜坂公園

この2箇所については同じ情報が得られる。栄田一郎、椎名茜の遺体が発見された河川敷、桜坂公園で聞き込みを行えば、彼らが桜の木で首を吊ったというのが分かる。現在の季節は冬で、当然のように葉は落ち、花などは咲いていない。

〈知識〉または〈博物学〉で判定:
それらの木が「エドヒガン」と呼ばれる白い花弁が特徴の桜の品種であるとが分かる。

さらに近辺で聞き込みを行うと、彼らの死後、これらの場所で若く美しい外国人風の女性を見かけたという証言を得ることができる。

〈幸運〉や〈信用〉〈言いくるめ〉などで判定する:
成功すれば、この女性が「しろがねクリニック」の理事長の娘である「アリッサ・シャトレーヌ」であるとの証言を得ることができる。


無夜神社

無夜神社は古く寂れた神社だ。近くに人の姿はないが、境内には神社の歴史を記す立て札を見つけることができる。そこにはこの神社が300年ほど昔に一度焼け落ち、その際にご神体が紛失していることが書かれている。その後この神社は近辺の人々によって建て直されている。

〈歴史〉に成功した場合:
300年前の火事の際に多くの文書が消失し、以来この神社の由来が不明になっていることを思い出す。

〈目星〉に成功した場合:
境内には根本に花が供えられた木を発見し、それが日島幸太が自殺したであろう木であることが分かる。

桜の木を見つけた場合、さらに〈博物学〉〈生物学〉で判定:
それが冬になって葉の落ちた桜の木で、「エドヒガン」と呼ばれる白い花弁が特徴の品種であることに気づく。


聞き込みや文献調査などによって入手可能な関連情報

これらは聞き込みや図書館、インターネットなどの調査によって得られる。キーパーは自殺者の調査を進める過程で、タイミングを見図らないながらこれらの情報を差し込むことができる。


化膿した傷

この情報は、自殺者たちの調査を行う過程で人々から聞き込みを行うシーンの途中などに差し込むことができる。

通行人や町の住民から話を聞いている途中で〈目星〉で判定する:
成功した探索者は、彼らの手や顔にある小さく膿んだ傷に気が付くことができる。

彼らにそのことを指摘すると、それは数日〜数週間前くらいにいつの間にかでき始めたものだと説明する。「そういえばその頃から変な夢を見るようになったんだ」。彼らが説明する夢の詳細は「夢ヴィネット1」と同じものだ。夢の内容について尋ねれば「桜の木で首を吊っている人を見つけて近寄るんだ。よく見ると、それは膿んだ傷が全身に広がった自分なんだ。まったく気味の悪い話だよ」などと語る。


30年前の開花

聞き込みをする場合、〈信用〉やAPP×5など適当な判定を行う。成功すればこの地域の年配者に聞き込みを行うことで28年前の地方紙で「冬に桜塚家の桜が咲いた」という証言を入手することができる。

さらに調べれば、およそ20〜30年ほどの周期で桜塚家の桜が冬に咲いていることが分かる。この情報は図書館などで昔の新聞記事などを探すことでも判明する。この場合は〈図書館〉技能で判定を行う。また同様にこの時期の他の地方紙を調べると、桜坂一丁目で数件の自殺者が出たという記事を見つけることもできる


乳母桜

桜塚家の桜について調べる場合は、図書館にて〈図書館〉技能の判定を行う。この判定に成功すれば、この地域にまつわる伝承が書かれた本を発見することができる。そこには桜塚家の桜について次のようなことが書かれている。

今から400年ほど前、村に1人の豪族がおりました。彼は善良な男でしたが40の歳を迎えても父親になる幸せを知りませんでした。そこで無夜様に願かけを行ったところ、ようやく娘を授かります。娘は「露」と名付けられ、彼女のために「お袖」という名の乳母が雇われます。やがて露はたいそう美しい少女へと育ちますが、15の歳に病に倒れ、医者からは死が近いことを告げられてしまいます。

母親同然の愛情で露を育てたお袖は、無夜様に自らの命と引き換えに露の命を助けてほしいと願います。するとほどなくして露の病気が全快しますが、代わりにお袖は病に倒れ亡くなってしまいます。彼女は亡くなる直前、皆が悲しみに暮れる中で全てを打ち明け、自分が死んだら屋敷に桜の木を植えて欲しいと伝えました。こうして彼女の死後、屋敷の庭には桜の木が植えられました。以来その桜は人々から乳母桜と呼ばれ、その花が満開となる時、”等価の代償と引き換えに病を癒やす”と云われるようになりました。

この話を読んだ探索者は《歴史》で判定を行う:
成功した探索者は、この話にいくつかの違和感を覚える。

「乳母桜」の話はラフカディオ・ハーン(日本では小泉八雲として知られる)の「怪談」に掲載された話が有名であり、またこれは大宝寺という寺に伝えられる昔話を元にしたものだ。しかしこれらの話で男やお袖が願をかけたのは「不動明王」や「薬師如来」とされており、「無夜様」などというものは聞いたことがない。また元の話には彼の妻の話が多少なりとも含まれているはずなのに、この話の中には一切登場していない。それはなぜなのか。彼に妻がいなかったとしたら一体どうやって娘を授かったのか。さらに最後の「等価の代償と引き換えに病を癒やす」という点。それは従来の「乳母桜」の話にはないものだ。


「しろがねクリニック」について

「しろがねクリニック」についてはインターネットや周辺の住人からの聞き込みから情報を入手することができる。心療内科を専門とするこの病院は、つい2ヶ月ほど前に「銀の黄昏教団」という宗教団体に売却され、現在はラタナシア・シャトレーヌという人物によって運営されている。「銀の黄昏教団」についてはヨーロッパをルーツとする宗教団体であることは分かるが、その教義や信仰の詳細は信者でなければ分からない。ただ世界的に活動を展開し、様々な企業、学園の運営から慈善団体への寄付、社会奉仕活動などまでも余念なく行っていることが分かる。


しろがねクリニック

探索者は捜査を進めるうち、やがて「しろがねクリニック」へと行き着くだろう。探索者が「しろがねクリニック」を訪ねると看護師が対応した後、美しい17歳ほどの外国人風の少女がやってきて「その件に関しましては、わたくしが対応致します」と探索者に声をかける。彼女が「アリッサ・シャトレーヌ」です。探索者たちは、奥の応接室に通される。探索者たちが応接室のソファーに腰をかけたところで、アリッサが丁寧な言葉使いで話を切り出す。

「そろそろ皆さんのような方がいらっしゃる頃だと思っておりました。この近辺に蔓延する病と、そしてあの桜のことですね。実は私からも、皆さんに話があります。」

アリッサは「まずはこちらを御覧ください」と一冊の古い書物を差し出す。それはこの付近の伝承を書き記したものだ。そしてその中を読み進めると、次の内容が書かれている(尚、この内容は図書館で桜塚家の桜について調べた場合と同じ内容になるため、既に調査済みの場合は省略もできる)。

今から400年ほど前、村に1人の豪族がおりました。彼は善良な男でしたが40の歳を迎えても父親になる幸せを知りませんでした。そこで無夜様に願かけを行ったところ、ようやく娘を授かります。娘は「露」と名付けられ、彼女のために「お袖」という名の乳母が雇われます。やがて露はたいそう美しい少女へと育ちますが、15の歳に病に倒れ、医者からは死が近いことを告げられてしまいます。

母親同然の愛情で露を育てたお袖は、無夜様に自らの命と引き換えに露の命を助けてほしいと願います。するとほどなくして露の病気が全快しますが、代わりにお袖は病に倒れ亡くなってしまいます。彼女は亡くなる直前、皆が悲しみに暮れる中で全てを打ち明け、自分が死んだら屋敷に桜の木を植えて欲しいと伝えました。こうして彼女の死後、屋敷の庭には桜の木が植えられました。以来その桜は人々から乳母桜と呼ばれ、その花が満開となる時、”等価の代償と引き換えに病を癒やす”と云われるようになりました。

この話を読んだ探索者は〈歴史〉で判定を行う:
成功した探索者は、この話にいくつかの違和感を覚える。

「乳母桜」の話はラフカディオ・ハーン(日本では小泉八雲として知られる)の「怪談」に掲載された話が有名であり、またこれは大宝寺という寺に伝えられる昔話を元にしたものだ。しかしこれらの話で男やお袖が願をかけたのは「不動明王」や「薬師如来」とされており、「無夜様」などというものは聞いたことがない。また元の話には彼の妻の話が多少なりとも含まれているはずなのに、この話の中には一切登場していない。それはなぜなのか。彼に妻がいなかったとしたら一体どうやって娘を授かったのか。さらに最後の「等価の代償と引き換えに病を癒やす」という点。それは従来の「乳母桜」の話にはないものだ。


真相

「乳母桜」の話を読んだ後、アリッサはこの伝承についてさらに補足する。彼女が語るのは桜塚家の先祖、露の出生と桜塚の家系に流れる血に関する悍ましい真実だ。

この話には、一部不完全な部分があります。我々の調べではこの話に出てくる男、つまり桜塚家の先祖の妻は子を授かる前に病で亡くなっていることが判明しています。では「露」の母親は一体何者なのでしょうか……。

ここで1つ、真実の話を致しましょう。皆様は普段から『理性』を持ち、自らを律し、他者を思いやり、正しく毎日を送られていることでしょう。しかしご存知でしょうか。この大宇宙全体で見れば、人間の『理性』なるものは極めて異質で異常な存在であるということを。この世界には、みなさんが想像もつかないような真実、人間のことなど気にもかけない白痴の神々、巨大な怪物たちが存在しているのです。

そして「露」の母親もその1柱。桜塚家の者には今も、人間と女神シュブ=ニグラスとの冒涜的な交配で生み出された祖先…その忌むべき血が紡がれているのです。しかし人の器に余るその力は自らの身をも滅ぼす…故に、彼女たちは15歳で命を落とすよう宿命付けられているのです。

そしてアリッサは探索者に語る。伝承にある「等価の代償と引き換えに病を癒やす」という話。桜塚家の人々はその力によって自らの命を犠牲に自分たちの子の命を紡いできた。しかしそれには「桜が満開である」必要がある。このため桜塚結衣子は次の呪文で周囲の住民から生命の力を奪い、それを乳母桜に与えることで開花を促進させていた。これは人間とシュブ=ニグラスの交配によって生まれた「膿の母」に通じる能力によるものだ。

《膿汁の呪印》
この呪詛は半径2km圏内に足を踏み入れた者を対象に発動する。犠牲者にはじくじくした潰瘍性の傷が体のどこかに現れて、その傷は次第に体全体へと広がっていき、犠牲者の耐久力ポイントを吸い取っていく。一度に吸い取る耐久力ポイントの量は任意。さらに犠牲者は悍ましい悪夢を見るようになり、耐えられず発狂する者も現れる。犠牲者たちから奪われた耐久力ポイントは乳母桜に与えられ、合計(探索者の人数×80)点に達した所で花は満開となる。
※探索者に提示する場合、()内は計算後の数値を提示して計算式は提示しない。

ここまでの話を聞いた探索者は世界の真実、冒涜的な知識に接したことで0/1D6の正気度ポイントを失い、〈クトゥルフ神話〉技能を+5%獲得する。


アリッサからの依頼

ここまでの話の後、アリッサは探索者に「実は、皆様にお願いがあります」と言い、一振りの銀の短剣を取り出す。そしてこの短剣は彼女が魔力を込めたものであり、神の血を引く桜塚の家系の者であっても命を奪うことが出来るものだと伝える。

彼女は自分の娘を救うため、これからも邪悪な法で人々の命を吸い続けるのでしょう。
そして桜の花が咲ききるまでに一体何人の、罪のない人々が犠牲になるのでしょうか。
私からのお願いです。そうなる前に、彼女を殺害してください。
もちろん皆様が警察に捕まることなどのないよう、後の始末は私が致します。

彼女の依頼を受けるか受けないかは探索者に委ねられる。依頼を受けない場合も彼女は探索者を止めることはしない。どちらの場合でも、探索者が望めば彼女は短剣を探索者に渡す。このナイフのデータは「クトゥルフ神話TRPG」P.70の「小型ナイフ」と同一であるものの、魔力が付与されており、物理攻撃が通用しない神話的存在に対してもダメージを与えることができる。さらにこの短剣は桜塚の家系の者に対して、通常の命中判定の代わりにDEX×5で判定を行い、成功すれば一撃で死に至らしめることができるものだ。

彼女に対して〈心理学〉で判定した場合:
成功した探索者は彼女が言っていることに嘘はないものの、他に何か重要なことを隠しているように感じ取ることができる。しかし彼女はそれを指摘されても、無表情に「私の話をどう受け止められるかはあなた方の自由です」と答えるだけだ。


アリッサへの攻撃

探索者の中には(過去に彼女と因縁がある場合など)彼女に危害を及ぼそうと攻撃をしかけるケースも考えられる。しかしこの場合、どのような攻撃も彼女の手前で見えない壁のようなものに阻まれて届くことはない。そして彼女が探索者に向け手をかざすと、見えない拳で殴られたかのような衝撃を受けて後方に吹き飛ばされる。

探索者は耐久力に1D4ポイントのダメージを受ける。

彼女は無駄だから大人しくするように伝えるが、愚かにもさらに向かってくるようならば探索者が気絶するか大人しくなるまで同じ攻撃を繰り返すことになるだろう。


桜塚家

桜塚の屋敷へ再び足を運ぶと、庭の桜は七分咲きになっている。

〈博物学〉または〈生物学〉で判定する:
成功した探索者は桜の満開とは八分咲きのことであり、あと1割程で桜が満開になることが分かる。

<キーパー向け情報>
桜の開花状態はこれまでに捧げられたHPに対応している。満開(八分咲き)になるまでに必要なHPは(探索者の人数×80)点であるため、残りはその1/8にあたる「探索者の人数×10」点の耐久力ポイントを捧げることで、満開になる計算となる(ただ残りどれだけ必要かはプレイヤーに公開しない)。

入り口の門の鍵は開いていて、その先の庭に桜塚結衣子がいるのが分かる。彼女は桜の木の下に立ち、彼女の周囲を桜の花弁と雪が舞っている。再びやってきた探索者たちを彼女は悲哀の感情が篭った笑みを浮かべて迎える。その表情は何もかもを受け入れて、覚悟を決めたものであるようにも見えるだろう。探索者が問い詰めれば、彼女は自らの行いを釈明することなくただ懇願する。

明日には全てを終わらせるつもりです。
どうか、あと一晩だけ見逃して下さい。

この時点で彼女にとっての選択肢は、桜の開花を促した後に自らの命を捧げることしかない。ここではどのような感情的な説得にも彼女は応じることはない。この先の展開としては次のものが考えられる。

・結衣子を見逃す:
彼女は涙を流しながら探索者に対して礼を伝える。そして自分の死後のことを考え「洋子のことをお願いします」と探索者たちに伝えた後、エンディングAへと進む。

・結衣子を殺害する:
アリッサ・シャトレーヌに言われた通りに彼女を短剣で殺害する場合、彼女は必死の思いで探索者たちに抵抗する。彼女にとって、娘のために捧げる命をここで失うわけにはいかない。彼女は可能な限り回避に専念しながら、隙があれば《黒い仔山羊の召喚》を唱える。呪文が成功した場合、次のラウンドには黒い仔山羊が出現し、その次のラウンドから探索者に襲いかかる。結衣子にはアリッサ・シャトレーヌから渡された銀の短剣以外ではダメージを与えることはできない。しかし銀の短剣の攻撃が命中すれば、一撃で彼女の命を奪うことができる。彼女が倒れると召喚された黒い仔山羊も消失する。彼女は洋子への謝罪の言葉を残して息絶える。この後、エンディングBへと進む。

・自らの命を差し出す:
(探索者の人数×10)点の耐久力ポイントを結衣子に差し出すことで、桜の開花を促進して八分先(満開)の状態にすることができる。この時、差し出すことが可能な耐久力ポイントは、現在の耐久力によらず最大値の2倍までとする(現在の耐久力を超えて差し出す場合、耐久力がマイナスとなり死亡することを意味する)。これを結衣子に提案する場合、彼女は提案を拒む。またそれによって探索者の耐久力が0以下になるような場合は、探索者の命がないであろうことを明確に伝える。諦める、あるいは差し出す耐久力ポイントが足りない場合はエンディングAへと進む。それでも探索者が食い下がる場合、結衣子はその提案を受け入れてエンディングCへと進む。




エンディング


エンディングA

翌日、桜塚家の乳母桜は満開を迎えて結衣子の願いは成就する。洋子の病は完治して、彼女は遠い親戚に引き取られることとなる。ただしその代償として失われたものもある。既に犠牲になっていた栄田一郎の妻、栄田仁美を始め、新聞には数人の自殺者の名前が連ねられるだろう。結衣子は最愛の娘のため他者の命を犠牲にその願いを遂げ、そして自らの命も落とす。


エンディングB

結衣子を殺した探索者は、0/1D6の正気度ポイントを失う。彼女が倒れた後、探索者は後ろから聞こえる物音に気づく。そこにはこの様子を偶然見ていた洋子が立っている。彼女はフラフラとした足取りで母親の傍へやってきて、涙を流す。そして彼女の中で何かが砕ける。目の前で母親を失い、発狂した彼女は急速に「膿の母」へと変異する。その体は不快な粘着質と悪臭を放つ液状の泥へと代わり、急激に膨張して辺り一面を飲み込みはじめる。

探索者は1D3/2D10の正気度ポイントを失う。

この時点で探索者には1度だけチャンスが与えられる。ここで洋子が完全に変異する前に、銀の短剣で彼女を突くことができれば、洋子は死亡して「膿の母」への変異を止めることができる。しかしこれに失敗した場合、彼女の変異は完了し、やがて不浄な膿の化身と化した彼女は周囲の全てを飲み込んでいく。


エンディングC

耐久力を差し出した探索者は、結衣子の呪詛によって腕の化膿した傷が一挙に体全体へと広がっていく。それと同時に桜が満開を迎える。舞い散る白い花弁の中、結衣子は桜に願いをかける。そして探索者たちに向き直り、もう一度深く頭を下げて礼を言うと、その場に倒れる。彼女が倒れると急速に桜の花が散り始め、雪のように舞う花弁の中で探索者の体に広がった傷が急速に消えていく(耐久力が0以下になった探索者がいた場合も、元の点数まで回復して息を吹き返す)。こうして結衣子の願いは成就して、結衣子は命を落とし、探索者はこれ以上の犠牲を出すことなく洋子を救うことができる。


クリア報酬

・シナリオクリア:1D10
・洋子の生存:1D6


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