シナリオ概要

この世は黄昏。かりそめの時にして、次なる世界の前兆──
海底遺跡に建設された海洋テーマパーク『R’LyEH』を訪れた探索者たちの周りに起きる不可解な現象。
些細な違和感から始まったそれはやがて世界の命運をかけた事態へと発展していく。

推奨人数:2〜5人
想定プレイ時間:3〜4時間(オンラインのテキストセッションの場合は9〜12時間)



キーパー向け情報

銀の黄昏教団マスター、アリッサ・シャトレーヌは海洋テーマパーク「R’LyEH」(ルルイエ)の観客を生贄とした大いなるものの復活を企て、施設に爆弾を設置する。また同施設には、父親の研究を引き継いでタイムトラベルの理論を打ち立てた天才科学者・秋月若菜も遊びに来ている。彼女は失踪した父親が残したという、形見の時計を所持している。これはハイパーボリア人の残したアーティファクトであり、短い時間、時を戻す力が宿っているのだ。アリッサの目論見は一度は成功し、探索者は大いなるものの復活を目の当たりにするだろう。若菜は時計の効果で探索者の時間を巻き戻すが、この際、彼女と探索者たちはティンダロスの猟犬にも発見されてしまう。猟犬はアリッサの企てを阻止しようと試みる探索者を阻み、探索者は同じ時間を再びやり直すことになる。

切り札は3週目に発見することになるイ・スの隠し部屋だ。そこにはイ・スの大いなる種族と精神交換をした若菜の父のタイムマシーンと猟犬を封じるための呪文が残されている。探索者は切り札を手に、過去へのタイムスリップを行うことになる。 今回のシナリオは、複数の時間軸で発生する各イベントのタイミングが重要になる。特に最初の周回では、未来からタイムスリップをしてきた探索者たちが起こした行動の片鱗を見ることになる。これらの行動は最後の周回、未来からやってきた探索者たちがシナリオクリアを目指すための重要なヒントになっているため、キーパーは状況を描写し、これらの情報を探索者に伝えること。

またシナリオでは探索者たちが一緒にテーマーパークに遊びに行くところから始まることを想定している。このため探索者は仲の良い友人同士とする。年齢はなるべく近く、10代後半〜20代程が良いだろう。このシナリオに推奨技能の指定は特に無い。キーパーは、迫りくる危機に対して逃げるのではなく立ち向かう勇気を持った探索者を作成するよう、事前にプレイヤーにしっかりと伝え、シナリオに挑むスタンスの共有を図ること。


NPC

◆ 秋月 若菜(あきづき わかな)、若き天才物理学者
17歳にして博士号を取得。失踪した父の研究を引き継ぎ、タイムトラベルの実験に成功した天才少女。実験に成功したのはまだ小さな粒子のみではあるものの、人類初の快挙であると一躍脚光を浴びている。

彼女は父の残した形見の時計を所有している。時計は2つのリングを重ね合わせた、地球ゴマのような形状をしており、どういう仕組かは分からないが、片方のリングが24時間で1周回転するようになっている。これはハイパーボリア人の残したアーティファクトで、リングを逆回転させることで自分の周辺にいる者の時間を巻き戻し、その精神を数時間前の過去に転送する能力を持っているが、同時にこれを発動させた者・効果を受けた者は、ティンダロスの猟犬に発見され、追われることになってしまう。

年齢:17歳 職業:物理学者
STR 9 CON 11 SIZ 10 INT 17 POW 13 DEX 10 APP 14 EDU 11
正気度 65 耐久力 11
ダメージボーナス:0
技能:物理学 90% 電子工学 81% 図書館 60% 英語 70% 博物学 50%
若菜

◆ アリッサ・シャトレーヌ、銀の黄昏教団のマスター
復活した銀の黄昏教団マスターの複製体の1人。オリジナルの彼女は1920年代にクトゥルフ復活を目論むも失敗、他のマスターたちと共にルルイエと共に海へ沈んだはずだった。
狂信的な信者たちの手によって現代に甦った彼女は海洋テーマパーク『R’LyEH』に爆弾を設置、観客たちの数多の命を生贄に再びグレート・オールド・ワンの復活を企てる。

年齢:300歳以上(外見は17歳) 職業:銀の黄昏教団マスター
詳細なデータについて興味がある場合は「クトゥルフカルト・ナウ」P.21を参照のこと。
アリッサ

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chapter1


導入パート


導入:開園待ちの列 #9:50

このシナリオの季節は夏。探索者たちは友人同士、休日を利用して最近オープンした海洋テーマパーク『R’LyEH』(ルルイエ)へ遊びに行く。『R’LyEH』は近年発見された海底遺跡に隣接する土地に建設され、地上から海底、地下3階まであるテーマパークで、特に海底3階には遺跡に由来するというグッズを販売する様々な店舗、水族館、海底を走る全面ガラス張りのジェットコースターなどが話題を呼んでいる。

シナリオは午前9:50から始まる。テーマパークの開園時間は10:00からで探索者たちは開園を前に列に並び開園を待っている間、スマートフォンをいじっている探索者はSNSやニュースサイトで気になるニュースを発見する。キーパーは探索者に「海底テーマパーク、連日大賑わい」「大量の火薬、盗難被害」「タイムマシーンが現実に」の3つの情報を公開する。

<海底テーマパーク、連日大賑わい>
『R’LyEH』は海底に作られたアミューズメントパーク。周辺海域には、近年発見された海底遺跡があり、その中を通り抜ける、全面ガラス張りのジェットコースターが話題を呼んでいる
<大量の火薬、盗難被害>
明朝、火薬庫から大量の爆薬が盗まれる事件が発生。組織的な犯行の可能性もあるとして、警察は捜査を開始。
<タイムマシーンが現実に!?17歳の天才物理学者>
「秋月若菜」という若干17歳の天才物理学者が、時間遡行の実験に成功。転送したのは極小の粒子のみであるが、人類初の快挙であると騒がれている。


導入:開園 #10:00

午前10:00になると開園を告げる放送が流れる。スタッフたちが入場門に配置され、入場受付が始まる。入場待ちの列は徐々に前へと進みはじめ、探索者らも入場手続きを済ませて施設へと足を踏み入れる。パークに入ると、入り口近くには様々なグッズショップが並び、背中に羽が生えたタコのようなゆるキャラ─このテーマパークのマスコット、『くとぅるー君』が歩き回っている。園内はこの日を楽しみにやってきた観客で賑わい始めている。

● キーパーはこのシーンでさり気なくクトゥルー君の存在をアピールすること。

この後探索者たちはパーク内を散策しながら、最下層である海底の地下3階フロアまでやってくる。途中、キーパーは自由にパーク内の様子を楽しげに演出しても良い。ただし今回のシナリオの舞台はこの地下3階フロアであるため、地下3階フロアに到達した時点で、キーパーは他のフロアには何事もないことをプレイヤーに明示しておくとよいだろう。

map

<プレイヤー資料:地下3Fマップ>

探索パート:1周目


謎の集団 #11:30

11:30。探索者たちは地下3階へとやってくる。キーパーは現在時刻をプレイヤーに伝えること。エレベータを降り、少し進んだところで〈目星〉による判定を行うようプレイヤーに伝える。〈目星〉に成功した場合、次の情報を公開する。

【11:30】
遠くに、黒いスーツに身を包んだ4人ほどの集団がいるのが目に留まる。中央にいるのはまるで人形のような外見の外国女性で、年齢は高校生くらいにも見える。その服装や外見は、どうみてもテーマパークに遊びに来るにしては浮いている。彼女らはまだ午前中だというのに、出口の方へと歩いて行く。

ここで彼女たちを追いかけようとする探索者がいる場合、キーパーはパーク内が混雑していて彼女たちに近づくことは出来ないことを伝え、パーク内にそのまま留まるよう探索者を誘導する。


老人と真球の石 #12:30

昼食時になると、探索者たちは食事を取るためレストラン街の付近に向かうことになる(CON×5判定に失敗したら空腹を感じるなどの演出を入れて誘導しても良いだろう)。そして時刻は12:30。食事を終えて店を出た所で、探索者たちは突然声をかけられる。声をかけてきたのは、深くフードを被った背の低い老人で、彼はキャラクターショップの前に机を出し、占いをしている。机の上には2枚のカードが伏せられた状態で置かれており、探索者が興味を示すと彼はそのカードを開く。開かれたカードは「塔」の正位置と「運命の輪」の逆位置。彼は探索者たちが「これから逃れられない災厄に出会う定め」にあることを伝え、次のように助言する。

「ラッキーカラーは青、ラッキーアイテムは丸い石でございます」

そう言う彼の背後、ショップの棚には直径1cmほどの丸い宝石が填められたペンダントが並んでいるのが分かる。残るは最後の1個のようだ。占い師は「今なら1000円ぽっきり。いかがですか?」等とそのペンダントを探索者に勧める。

● ペンダントの石に対して〈地質学〉と〈アイデア〉による判定を行うことができる。
地質学に成功した場合、その石は今まで見たことのないような材質であると感じる。またアイデアに成功した場合は、その石が完全な球体(真球)であることに気づくことができる。

ここでキーパーは何としてもそのペンダントを探索者に買わせるよう誘導すること。値段を下げたり、最終的にはタダにしても構わない。どうしても買わなかった場合は、いつの間にかポケットに入っている演出をしても良い。この場合、不思議な現象に探索者の正気度ポイントが0/1減少する。探索者がペンダントを入手したら、その後のイベントのために、誰がそれを所有するかをはっきりと決めておくこと。


自由時間 #12:30〜14:45

ここからしばらくの間は、何もイベントがない。探索者にはパーク内を自由に散策させる。いくつかのアトラクションを演出するのもよい。またスキップしてしまっても問題ない。ただし、ジェットコースターは長蛇の列が出来ており乗ることが出来ない。この間、次の異変が起きるまで、探索者は楽しい時を送ることが出来る。14:45からは、複数のイベントが連続して発生する。キーパーは時刻を明示しながらプレイヤーを誘導する。


ペンダント盗難事件 #14:45

14:45。広場の付近などにいる探索者たちが、次はどこに行こうかなどと、仲間同士の会話に気を取られているところでこのイベントが発生する。突然、ペンダントを所有している探索者に後ろからドンッ、とマスコットのくとぅるー君がぶつかり、そして走り去っていく。ペンダントを所持していた探索者は、それがいつの間にかなくなっていることに気づくことが出来る。ここで走り去っていくくとぅるー君を見れば、その手に先ほど購入したペンダントが握られていることが分かる。

● 探索者がくとぅるー君を追いかける場合、〈追跡〉による判定が必要になる。失敗した場合は、その場でくとぅるー君を見失ってしまう。また成功した探索者がいた場合、次のように進行する。

【見失った!】
くとぅるー君は広場へと向かい、キャラクターグッズ店の周りをまわる。しかし、曲がり角を曲がった所であなたの足が止まる。そこには何体もの同じ姿の着ぐるみが、子供たちに風船や飴を配っている。どれも見た目は同じで、見分けることは出来そうにない。


立ち止まっていると、追跡に失敗した/追跡しなかった探索者も追いついて合流することになる。そして「謎のメール #15:00」のイベントが発生する。


謎のメール #15:00

15:00。ここでキーパーはダイスを振り、スマートフォンを所有している探索者の中からランダムで1名を選ぶ。選ばれた探索者のスマートフォンにメールの着信が入る。中身を見た場合、次の内容を開示する。
この後、探索者は水族館の「☓」印の場所へ向かうかもしれない。しかしその場所はただの通路で、左右に壁があるだけで何もない。この数字は時刻17:05を表しており、「☓」はその時間(実際はその時間以降)にその場所に行くように、という指示を意味している。17:05以降に「☓」の場所へ向かった場合は、秋月若菜の父が残したイ・スの隠し部屋への入り口が出現している。しかし、実際に探索者がそこに至ることが出来るのは、3週目に入ってからだろう。

件名: Re:
差出人:{メールを受け取った探索者の名前}
本文はなく、1枚の画像だけが添付されている。画像はこのテーマパーク地下3F、このフロアのもののようだ。水族館の南西部に「☓」印と「1705」という数字が書かれている。


自由時間2 #16:15

15:00から16:15の間も、探索者が自由に動ける時間となる。この間、探索者は『水族館の「☓」印を見に行く』『ジェットコースターの列に並ぶ』等の行動が可能だ。水族館の「☓」印の場所は前述の通り、通路があるだけで何も発見することは出来ない。ジェットコースターはまだ長い列が出来ている。客は減り始めているが、空き始めるにはもう少し時間がかかるだろう。


若菜との出会い #16:15

16:15。この頃になってくると、ジェットコースターの客が減り始めている。キーパーは今ならしばらく待てば乗れるかもしれないことを探索者に伝え、広場〜ジェットコースターの前あたりまで、探索者を誘導する。探索者が広場にさしかかった所で、誰かが声をかけてくる。

【16:15】
「やっと見つけた…!」
そう言って呼び止めてきたのは10代後半の高校生くらいの少女だ。彼女はあなたたちを知っている様子だが、探索者には全く覚えがない。

● 朝のニュースを見た探索者はアイデアロール、またニュースを見ていない探索者も〈物理学〉で判定を行うことができる。
この判定に成功した探索者は、彼女がタイムトラベルの実験に成功したという天才物理学者、秋月若菜であることに気付く。


彼女は15:30にカフェテリア(※)にいたところ、突然探索者たちがやってきて呪文のようなものを唱えた後、彼女が持っていた携帯用のソーイングセットを借りて逃げていってしまったと言うが、探索者たちには身に覚えがない。 ※15:30に探索者がカフェテリアにいた場合は、水族館、広場など別の場所に変更してもよい。


消失 #16:30

16:30。次のイベントは若菜とのやり取りの途中に発生する。ソーイングセットの話が出た後の適当なタイミングで差し込むこと。話の途中、突如として「キィィン」と耳をつんざくような強烈な高周波が探索者を襲い、探索者は思わず耳を塞いで目を閉じてしまう。音は一瞬で収まり、探索者がゆっくり目を開けると、今さっきまで目の前で話をしていた若菜の姿が消えているのに気づく。周囲の観客に聞いても、彼女のことを見た者はおらず、それどころか、最初から探索者たちしかいなかったと答える。

● 目の前にいた少女の姿が突然消えるという不可思議な現象に遭遇した探索者は0/1の正気度ポイントを失う。


運命の足音 #16:50

突然目の前から消えた若菜に困惑しているうちに、時間が経過していく。探索者は若菜を探すかもしれないし、そのままジェットコースターの列に並ぶかもしれないが、いずれにしてもキーパーは探索者をジェットコースター乗り場と広場の間付近へ向かうよう誘導する。あまり描写を挟まず、若菜が消えた後、困惑している間に時間が経過したことにしてしまっても構わない。16:50をまわった所でイベントが発生する。


【16:50】
突如、パーク各所に設置されたモニタが乱れる。不快な電子音が館内に設置されたスピーカーから流れると、モニタに若い女の姿が映し出される。

「皆様、ごきげんよう。お楽しみのところ失礼致します。わたくしの名前はアリッサ・シャトレーヌ」
「銀の黄昏教団のマスターとして、皆様にご挨拶をさせて頂きます」


アリッサ・シャトレーヌと名乗った女は丁寧な口調で告げる。突然の放送に館内はざわつきはじめる。アリッサ・シャトレーヌは、淡々とした口調で演説を開始する。

<アリッサの演説>
『理性』ある皆様は日頃から自らを律し、他者を思いやり、正しく毎日を送られていることでしょう。しかしご存知でしょうか?この大宇宙全体から見れば、人間の『理性』というものは極めて異質で、異常な存在に過ぎないということを。この宇宙には人間のことなど気にもかけない白痴の神や巨大な怪物たちが存在しているのです。では取るに足りない我々人間が、この世界に存在する意味とは何なのでしょう?それは今、この世界が『黄昏』であることを知ることです。黄昏とは仮初の時にして、次なる世界の前兆──。さあ始めましょう。あなた方の命を以て、遍く世界に思い知らせるのです。地上の支配者を、宇宙の真実を、大いなるものたちの帰還を──!

突如として大きな爆発音が響きわたる。人々の悲鳴があがる。爆発音が聞こえたコースターの入り口付近からは舞い上がる黒煙が見える(※ここの爆弾は、探索者の現在位置に応じて、広場から先に爆発したことにしても良い。その場合は第二の爆弾がコースターになる)。

● ここで探索者は全員アイデアロールを行う。

<第二の爆弾>
アイデアロールに成功した探索者は、広場の入り口、あなたのすぐ近くのベンチの影に、不審な黒いカバンが置かれているのに気付く。持ち主らしき人物は、近くにはいない。そして、さらなる音と閃光。この爆弾の爆発によって、アイデアロールに成功した探索者は2D6、気付かず逃げ遅れた探索者は3D6のダメージを受ける。


第二の爆弾は17:00に発生する。キーパーはこの時刻をプレイヤーに伝えること。このダメージにより、気絶、もしくは死亡するキャラクターが出て来るかもしれない。その際は状況に応じ、次のように処理をして次のイベントに進む。

● 意識を保ったキャラクターがいる場合:
死亡したキャラクターはしばらくの間、死亡のまま処理を進める。気絶しているキャラクターは、応急処置によって意識を取り戻すことが出来る。また、応急処置が出来ない場合も、再度CON×5に成功すれば目を覚ますことが出来る。その後、「黄昏 #17:05」へ進む。


●生きているキャラクターがおり、意識を保ったキャラクターがいない:
この場合、再度CON×5を行い、成功すれば目を覚ますことが出来る。意識を取り戻したキャラクターがいた場合は「黄昏 #17:05」へ。もしここでも全員が失敗し、意識を取り戻せなかった場合、「消えゆく意識 #17:05」へと進む。


●全員が死亡:
「消えゆく意識 #17:05」へと進む。


黄昏 #17:05

17:05。爆発の衝撃が収まり、ようやく身動きが取れるようになる。探索者たちの前にはまさに悪夢のような光景が広がっている。至る所に人が倒れ、血が飛散している。動かぬ我が子の名前を呼び続ける母親や泣きながら親を必死に探す子供、腕や足を失い苦痛に苦しむ者がいる。元の形さえ分からない肉片までもが、そこかしこに転がっている。

● 悪夢のような光景に探索者の現実は崩壊していく。探索者は1D3/1D8の正気度ポイントを失う。

この後さらに施設の崩壊が始まっていく。強化ガラスの外壁にヒビが入り、徐々に施設内に海水が流れ込んでくる。「逃げろ!」と誰からともなく声が上がると、生き延びた人間たちは慌てふためいてエレベータホールへ向っていく。水に沈んだ電線がバチバチと音を立て、緊急警報のブザーがけたたましく鳴り響く中、探索者は脱出を急ぐだろう。手負いの体を引きずり互いに支え合うように出口を目指す探索者は、朦朧とする意識の中で秋月若菜の姿を発見する。彼女も重症を負い、大量の血を流して倒れている。金属の破片が腹に深く突き刺さり、もう手遅れであろうことは容易に想像出来る。彼女はあなたたちを発見すると、必死に手を伸ばす。

「お願い…この、時計を…」
彼女の手には、何か奇妙なものが握られていた。それは不思議な形をした銀色のペンダントで、その尖端には2つの輪が重なった、丁度、地球ゴマのような形状のリングが付いている。一見して、時計のようには見えない。あなたたちが近づくと、彼女はリングの一方を反時計回りに回す。
「…私に会って、伝えて。15:20…カフェテリアの窓側の席…」
そして、彼女は息絶える。

この後、「クトゥルフの帰還」へと進む。


消え行く意識 #17:05

2回目の爆発の後、全探索者が意識を失うか死亡していた場合はこちらのイベントを進む。消え行く意識の中、探索者たちの元へ若菜がやってくる。彼女は重症を負いながらも、生存者を必死に探してる。

「…まだ…息がある……」
若菜はあなたたちに近づくと何かを取り出す。それは不思議な形をした銀色のペンダントで、その尖端には2つの輪が重なった、丁度、地球ゴマのような形状のリングが付いている。彼女はリングの一方を反時計回りに回す。
「お願い…私に会って、伝えて。15:20…カフェテリアの窓側の席…」

時計を探索者に渡すと、彼女は力なく崩れ落ちる。直後、大きな揺れを感じる。強化ガラスの外壁が割れ、施設内に海水が流入してくる。この後、「クトゥルフの帰還」へと進む。


クトゥルフの帰還

若菜が探索者たちに願いを託したところで、1周目最後のイベントが発生する。広場に設置されたモニタから惨状を見下ろして、アリッサ・シャトレーヌが最後の仕上げを開始する。 アリッサ・シャトレーヌはモニタの中からこの惨状を見下ろして言う。
















「この宇宙にとっては、人間などほんの小さな泡沫に過ぎない存在。何もかもを受け入れて、そして知るのです。そうすれば、あなた方は高位の存在として生まれ変わり、全ての苦しみを解き放ち、安寧を手に入れることが出来るでしょう。」
































「黄昏を断ち切り…青き深淵なる世界へ」































最後の言葉は爆弾を解体する際に切るコードの色のヒントにもなるものなので、なるべく強調して探索者に伝える。そして彼女は呪文を詠唱する。
















ふんぐるい むぐるうなふ















くとぅるふ るるいえ















うがなぐる ふたぐん
















詠唱が終了すると、エレベーターホールで最後の爆弾が炸裂する。人々の悲鳴に混じり、大きな地鳴りが響く。外壁が割れ、海水が全てを押し流す。 そしてそれは目を覚ます。破滅と狂気を携えて───。

● ”大いなるクトゥルフの帰還”を目撃した探索者は1D10/1D100の正気度ポイントを失う。


このイベントで1周目は終了し、時間が巻き戻されて2周目へと移行する。

chapter2



探索パート:2周目


帰還 #15:17

探索者は若菜の持つ時計の効果で、15:17に戻る。探索者が気がつくと、最初の周回で同時刻にいた場所に立っている。周囲からは来場客たちの楽しげな声。探索者には先ほどの光景がまるで夢だったかのように感じられる。

● ここではまず、以下の処理行う。
・探索者は、全てのダメージを回復する(ファンブル等で15:17前に負ったもの以外)
・直前のSANチェックで失ったSAN値の9/10(端数切り捨て)を回復する(永続的狂気に陥った探索者も対象)
・永続的狂気を含む全ての狂気を解除する(キーパーの裁量でしばらくの間狂気の効果を継続させてもよい)

処理が終わり、時計を見ると15:17を指していることが分かる。


カフェテリア #15:20

15:20。約束の時間にカフェテリアへ向かうと、窓際の席で本を読む秋月若菜の姿を見つけることが出来る。彼女に未来の記憶は残っておらず、探索者が話しかけると怪訝そうな顔で「誰?」と答える。彼女の協力を得るためには、探索者たちが未来で起きたこと、そして時計の話を若菜に切り出すことが必要になるだろう。彼女は父親の言いつけにより時計の存在を他の誰にも秘密にしており、安易に「時計」を使わないことを心に決めている。このため彼女が時計を使ったことを説明すれば、そうせざるを得ない事態が発生したことを理解して探索者たちに協力してくれるようになる。ここでは彼女から時計や時間遡行についていくらか話を聞くことができる。以下には受け答えの例をいくつか示す。

● 時計について
行方不明になった彼女の父親が残したもので、彼女の父親が海外に旅行した際に手に入れたものらしい。この時計にインスピレーションを得て彼女の父はタイムスリップの理論を打ち立てたのだという。
「でも……誰もそれを信じてはくれなかった。父は学会からも追放されて、私たち家族の前からも姿を消したんです。この時計を残して」

● 時計の力について
「父は言っていました。このリングを反時計周りに回すことで、周囲の人間の時間を少しだけ巻き戻すことができると。でも決して回してはいけないとも言っていました。回せば『猟犬』がやってくると」

● 猟犬とは?
「何も分かりません。でも、とても恐ろしいものだと言っていました。父の言葉の意味は分かりませんでしたが、私は父の言いつけを守ることにしていたんです。余程の事が、起きない限りは…」

探索者から爆弾の話を聞くと、彼女は自らそれを解体することを提案する。彼女はかつて父親から教えられたのだといい、簡単な爆弾程度なら自分でも解体できるのだという。もし探索者たちが係員や警察に連絡しようとするなら、キーパーは若菜の口から『下手に動くとテロリストにバレて爆破される可能性がある』ことを伝え、探索者たちの手でこの件に立ち向かうよう誘導すること。


逃走の果てに #15:20

過去に戻った後、もし探索者が施設から逃げ出すことを選択した場合、そこには滅びの運命が待ち受けている。キーパーはプレイヤーに対して十分に警告を行い、それでも探索者がこの道を選択した場合には、次のエンディングへと進む。

施設から逃れた探索者は、沈む夕日を眺めている。全てが終わった世界を・・・。それは海から現れ、人類の文明の全てを破壊した。黄昏の終焉と、大いなるものたちの復活。地上の真なる支配者を前に探索者の理性は深淵へと飲み込まれていく。

●探索者は1D10/1D100の正気度ポイントを失う。


そしてSANチェックの結果によらず、運命に立ち向かうことを諦め、逃げ出した時点で道は潰えるだろう。文明は破壊され、もはや運命を覆す手段は残されていない。やがては地上に現れた真の支配者たちに蹂躙されて、探索者たちの物語は終わりを迎える。


爆弾解体 #15:40〜

探索者はカフェテリアで秋月若菜の協力を得た後、爆弾の解体に向かうことになる。カフェテリアでのやり取りの後、時刻は15:40を回っている。爆弾の解体には、次の手順を踏む必要がある。

● 爆弾を探す

先の周回で、探索者は爆弾のだいたいの位置は把握出来ているものの、探索者の目の前で爆発した広場入口の爆弾を除く、ジェットコースター入り口、エレベーターホール付近の爆弾について正確な位置までは分からない。ジェットコースター入り口、エレベータホール付近の爆弾を探す場合は、探索者に〈目星〉による判定が必要である(探索者たちの〈目星〉技能がいずれも低い場合には幸運でも構わない)。成功すればすぐに爆弾を発見することが出来る。また、失敗すれば時間をかけ、再度挑戦することが出来る。再挑戦にかかる時間の目安は、5分程度が良いだろう。

● 爆弾を解体する

爆弾を発見すると若菜はソーイングセットから糸切りバサミを取り出して爆弾を解体していく。爆弾の構造は単純なものだが、下手に動かすと爆発する危険があると若菜は説明する。そして爆弾の解体を近くで見ている探索者はINT×5、または〈機械修理〉〈電気修理〉〈電子工作〉などの判定に成功すると爆弾の解体手順を覚えることができる。爆弾の解体方法を覚えた場合、以降はDEX×5またはINT×5に成功することで爆弾を解体することが可能になる。爆弾解体にかかる時間は1個あたり15分~20分程度を目安とする。

● また、爆弾は次の3箇所に仕掛けられている:
1個目:ジェットコースター乗り場の脇にあるゴミ箱の横
2個目:広場入口のベンチ
3個目:エレベータホール奥の植木の影

最初の爆弾を解体し、別の爆弾の解体へと移ろうとしたところで次のイベントが発生する。
※ ここで場合によっては、探索者が爆弾を探すグループと解体するグループに別れる可能性がある。次のイベントは全員が集まった状態で発生させる必要があるため、探索者が分散している場合は最初の爆弾を解体した後でなくともよい。その場合、爆弾を3つとも解体する前に、探索者が合流するタイミングをうまく作り出して、イベントを発生させること。


ティンダロスの猟犬 #16:xx

探索者は〈目星〉または〈聞き耳〉の判定を行う(ここでの〈聞き耳〉は嗅覚を代替するものである)。成功した探索者は次のことに気付くことが出来る。

フロアの角……そこから青黒い煙のようなものが立ち昇る。同時に気付くのは臭いだ。酷い刺激を伴った悪臭────。
突然、若菜が「あ…」と小さく声をもらす。探索者が振り返ると、太く、曲がりくねった鋭い注射針のようなものが、背中から秋月若菜の胸を貫通しているのを目撃する。その尖端から、そして若菜の口元から、赤い液体が滴る。そして、引き抜かれるとともに、大量の血液が吹き出す。

それは痩せて、飢えていた。宇宙の邪悪さの全てが集約されているかのようなその姿は、体なのかどうかさえ確信は持てないが…連想される言葉は『猟犬』。その『猟犬』は太く曲がりくねって鋭く伸びた注射針のような舌を垂らし、原形質に似ているが酵素を持たない、青みがかった脳漿のようなものを全身から垂らしていた。

● 悍ましい邪悪な存在を目にした探索者たちは1D3/1D20の正気度ポイントを失う。

倒れた若菜は最後の力を振り絞り、探索者たちに逃げてと伝えながら、ペンダントへと手を伸ばす。そして再び、『時計』の針が戻される。

chapter3



探索パート:3周目


帰還その2 #15:17

探索者は再び若菜の持つ時計の効果で、15:17に戻る。例によって周囲からは客たちの楽しげな声。探索者には先ほどの光景がまるで夢だったかのように感じられる。

● ここではまず、以下の処理行う。
・探索者は、全てのダメージを回復する(ファンブル等で15:17前に負ったもの以外)
・直前のSANチェックで失ったSAN値の9/10(端数切り捨て)を回復する(永続的狂気に陥った探索者も対象)
・永続的狂気を含む全ての狂気を解除する(キーパーの裁量でしばらくの間狂気の効果を継続させてもよい)

処理が終わり、時計を見ると15:17を指していることが分かる。ここから3週目に入った探索者は、1周目、2周目の出来事を元に様々な行動を取ることが予測される。このため、この周回ではキーパーのアドリブと時間管理が非常に重要となる。様々なケースが考えられるため、ここには全体的な指針のみを記していく。ただし次のポイントは必ず抑えられるよう、キーパーは探索者を誘導すること。

・爆弾の解体方法を、探索者の少なくとも1人が記憶する
・ティンダロスの猟犬が若菜を殺害し、時計を破壊する
・爆弾の解体はティンダロスの猟犬が阻む
・16:50からアリッサの演説が始まり、仕掛けられた爆弾が起爆
・17:05にイ・スの隠し部屋へ行く


3週目の流れ

爆弾を解体し、爆発を阻止する試みは全て、ティンダロスの猟犬によって阻まれる。キーパーは時間の経過を描写して、探索者を追い詰めること。若菜も猟犬の前に倒れ、また頼りの時計も破壊されてしまいく。やがて、時間になるとアリッサの演説が始まり、施設内に設置された爆弾が起爆される。探索者たちは最後の望をかけてメールにあった水族館の「☓」印の場所へと向かい、そこで最後の切り札である呪文とタイムマシーンを入手し、過去へと跳ぶことにる。


秋月若菜との再会

探索者は再びカフェテリアにいる彼女に接触を図るかもしれない。また、猟犬の出現を畏れて、別行動を取る可能性もある。いずれの場合も、探索者はどこかで彼女と出会うように仕向ける必要がある。以下に、それぞれのケースでの進行を記載する。

●カフェテリアにいる彼女に接触する
この場合のケースでは、2周目と同じ流れになる。2周目と同じやりとりは描写をスキップしても構わない。その後、2周目と同じく共に爆弾解体に向かうことになる。爆弾の解体に向かう頃、時刻は15:40を回っている。

●自分たちだけで爆弾を解体する
2周目に探索者が爆弾の解体手順を記憶していた場合、若菜に会わず、自分たちで爆弾を解体しようとするかもしれない。この場合は別途、爆弾解体に必要な刃物を入手する必要がある。刃物を入手すると、時刻は15:40を回っている。そして向った先、いずれかの爆弾の近くで偶然、彼女に出会う。


爆弾の解体

爆弾の解体に向かった探索者はまず、発見されていない爆弾がある場合、爆弾の位置を特定する必要がある。爆弾を見つけるには〈目星〉または〈幸運〉の判定に成功する必要がある。失敗した場合は5分程度、時間が経過した上で再挑戦することが可能だ。次に爆弾を解体する必要がある。爆弾の解体が可能なのは若菜、あるいは爆弾の解体手順を覚えている探索者だけだ。2周目で爆弾の解体方法を記憶していた探索者はDEX×5またはINT×5の判定に成功すれば、爆弾を解体することができる。しかし判定の成否に関わらず(判定に成功した場合はあと一歩で爆弾を解体という所で)ティンダロスの猟犬が出現し、爆弾の解体は阻止されて、探索者は逃亡を余儀なくされる。


そして再び、猟犬は鋭角から現れる

若菜と共に爆弾を解体しているか、または探索者たちだけで爆弾を解体している途中に若菜と再会したところで、ティンダロスの猟犬が出現する。探索者は再びあの酷い刺激臭を感じ、そして若菜が下げた時計の鋭角から青黒い煙が立ち上っているのを目撃する。そして気づいた時点では既に遅く、猟犬は探索者が動くより早くに若菜と彼女の持つ時計をその舌で貫く。心臓を一突きにされた彼女はその場に倒れ、へし曲げられた時計が床に転がる。猟犬は時計を無慈悲に踏みつけて探索者たちを睨みつける。時計の損傷は、これ以上の時間遡行が不可能になったこと、そして再び若菜の命を取り戻す術がなくなったことを意味している。キーパーはそのことを探索者たちに告げ、絶望感を煽っていくとよいだろう。

これ以降、探索者が爆弾を解体する行為は全てティンダロスの猟犬が阻まれる。猟犬は爆弾に近づこうとする探索者の前に必ず現れて、接近を阻止する。またこの際、探索者が戦闘技能に振っている場合はティンダロスの猟犬と戦闘させても良い。その場合は適当に攻撃を受けたところで一旦黒い煙になって姿を消し(あまり長引かせず1~2ターンくらいで逃走させて下さい)、直後に再び別の鋭角から黒い煙が立ち昇りはじめる。猟犬は決して死ぬことはない。猟犬が煙の状態であれば、探索者はその場から逃走することが可能である。その後、逃げる先々で猟犬は角から出現してくる。〈目星〉や〈聞き耳〉に成功すれば、いち早く察知して逃げることが可能である。

いずれにしても、探索者は爆弾に近づくことが出来ず、爆弾を解体しようとする試みは全て失敗に終わる。そして、猟犬との戦闘や逃走の度に時間が経過していき、やがて、運命の時間がやってくる。


ティンダロスの猟犬

時間の角に住まう猟犬。今回現れた個体は、時計を使用した若菜と彼女が持つ時計、そして時計による時間跳躍を行った探索者を追尾する。データは「クトゥルフ神話TRPG」P.183-184を参照のこと。能力値はP.184に記載された「平均値」のうち低い方の値を用いる。ただし、探索者がティンダロスの猟犬と戦闘することになってしまった場合に「前脚」による攻撃を多用すると探索者が死亡する可能性が非常に高い。キーパーはダイスで攻撃方法を決定するのではなく、戦闘開始後しばらくは「舌」固定にしてもよいだろう。


黄昏の扉 #16:50〜17:05

16:50。猟犬の前に探索者は為す術無く追い詰められ、その時を迎える。再びモニタにアリッサの姿が映し出され、彼女の演説が始まる。猟犬は爆弾の前に居座り、探索者を近づけようとしない。やがて第一の爆弾が爆発する。施設は大きく揺れ、強化ガラスの外壁にヒビが入る。さらに17:00には第二の爆弾が起爆される。崩壊していく施設。キーパーは、施設が傾き、東側が浸水して水族館の側に追い詰められていくなどの描写で探索者が水族館の「☓」に向かうよう誘導すること。

探索者が水族館の「☓」印の場所に17:05より前にやってきた場合、そこには何もない通路の壁があるだけだ。そして17:05になると施設の崩壊が始まる。激しい振動に施設を支える支柱が折れる。強化ガラスが割れて、大量の水が流れ込む。大きく施設が傾く。その時、探索者の目の前の壁が崩れる。探索者たちは崩れた壁の先に深く奥へと続く洞窟のようなものが口を開けているのを目にする。この洞窟は若菜の父が残した隠し部屋へと繋がっている。

探索者たちがその奥へと進むと、しばらく進んだところで再び背後からあの声が聞こえてくる。

「この宇宙にとっては、人間などほんの小さな泡沫に過ぎない存在。何もかもを受け入れて、そして知るのです。そうすれば、あなた方は高位の存在として生まれ変わり、全ての苦しみを解き放ち、安寧を手に入れることが出来るでしょう。」




































「黄昏を断ち切り…青き深淵なる世界へ」



































直後には何かが決定的に破壊される音が響く。そしてさらに奥へと進んでいくとやがて探索者は開けた広い部屋に出る。


イ・スの隠し部屋

そこにあるのは、奇妙な装置だった。部屋の中には奇妙な機械が並べられている。壁からはいくつもの金属の管が這い回り、中央にある巨大なカプセルのようなものに接続されている。カプセルには入り口があり、内部は探索者たち全員が入れるほどの大きさがある。探索者が部屋に踏み入れるとカプセルの周りの機械が起動音をたて、ランプに光が灯っていく。そしてホログラムによる幻覚のような光景が探索者の目の前に映し出されて、誰かが探索者に語りかける。

『ようやく……たどり着いたようだな』

それは巨大な円錐体の生物で、その頂部からはくねくねとした器官が伸びている。

『君たちがこれを聞いているということは、運命の時が迫っているということなのだろう。私は今、彼らと意識を交換して、君たちにとっての遥かなる過去、神話の刻に存在している。全ては・・・滅びの宿命を変えるために』

『そしてこれが『時間を遡る』ための装置、その試作品であり、精神だけではなく物質までもを過去へと送ることのできる・・・私が君たちに託す時空転移装置、”タイムマシーン”だ』

探索者に語りかけてきたのはイ・スの大いなる種族と精神交換をした若菜の父親だ。イ・スの大いなる種族は6億年前に地球に飛来した種族で、時間を超え、様々な時代の生物の優れた知識を持つ個体と精神を交換することで様々な時代の知識・情報を収集している。精神交換によって彼らの時代にたどり着いた彼は、人類と娘を救うために彼らの優れた技術を借りて探索者へと対抗手段を託すのだった。

彼が言うには、今までの時間遡行はあくまで精神のみを短い時間だけを巻き戻すものに過ぎなかった。また重大な欠点もはらんでいた。それがあの『ティンダロスの猟犬』だ。あの痩せて飢えた不死の猟犬は時間の「角」に住まい、時間に干渉する者を監視し、発見したものを追い続け、時間の果てまで、次元を超えてやってくる。しかし、彼は長年の研究の末、ついにその猟犬を克服する術を発見した。それがこのタイムマシーンであり……

『君たちのために、猟犬への対抗手段をここに残そう────』

彼がそう伝えると、膨大な量の知識が探索者の頭に流れ込み、探索者は次の呪文を習得する。

<ジレルスの結界石>
必要なのは、角のない”真球の石”と”呪文”である。石を猟犬に向けてかざし、任意の人数の探索者が、任意の点数のマジック・ポイントを消費する。こうして消費されたマジック・ポイントの総計×5%を目標に呪文の使用者のうち1名が代表で判定を行う。成功した場合、石の中に猟犬を封じる事ができる。

● 呪文を習得した探索者は1D5ポイントの正気度ポイントを失い、クトゥルフ神話技能を5%獲得する。

呪文を習得すると、彼は探索者に伝える。

『この時間跳躍はイレギュラーなものだ。決して、過去の自分に未来から来た自分の存在を気づかれてはいけない。それは重大なパラドックスを引き起こし、不測の事態を巻き起こすだろう』

『だがお前たちは既に見てきたはずだ。最初の世界でお前たちが何をしたのか。知っているはずだ。何をすべきかを』
『行き先は14:30、地下3Fの倉庫の中。チャンスは一度きりだ。行け、そして運命を変えろ。世界が、黄昏に沈む前に』


こうして、幻影は彼の最後の言葉を残して消えていく。



































『──娘を……若菜のことを、頼む』




































幻影が消えるとカプセルの入り口が開く。探索者がそれに乗り込むとタイムマシーンは起動する。


タイムアップ #17:05

もし、探索者が17:05までに水族館の「☓」印に行くことを思い付かず、そこにたどり着くことができなかった場合、こちらのエンディングに移行する。この場合、最後の爆発が発生し、アリッサ・シャトレーヌの詠唱が完了する。再び、大いなるクトゥルフは蘇り、真なる地上の支配者が帰還することになる。探索者たちは再び1D10/1D100の正気度ポイントを喪失する。そしてその結果に依らず、崩壊する施設と共に、海底へと沈んでいく。

chapter4



クライマックス


帰還その3 #14:30

光が晴れ、気がつけば探索者たちは薄暗い部屋で目を覚ます。探索者は倉庫に転送されている。周りには様々な備品の入った段ボールや大道具、風船や飴などの小道具、パークのマスコット「くとぅるー君」の着ぐるみ等が複数置かれている。時計を確認すると、現在14:30であることが分かるだろう。

<ここからの展開について>
ここからは、探索者は1周目で体験した事象を手がかりに、ティンダロスの猟犬を封印、爆弾を解体し、クトゥルフの召喚を阻止する必要がある。そのためにはそれぞれの事象が発生した時間に添って、細かな手順をクリアしていく必要がある。キーパーは一旦ここでゲーム内の時計を止め、プレイヤーたちに状況を整理して作戦会議を行う時間を与えると良いだろう。ここで探索者が達成しなければいけないイベントは、次の通りである:
#14:45 真球の石が付いたペンダントを手に入れる
#15:00 過去の自分にイ・スの隠し部屋の場所を示したメールを送信する
#15:30 カフェテリアにて、若菜に襲いかかるティンダロスの猟犬を封印する
#15:30 若菜からソーイングセットを借りる
#15:40〜16:30 爆弾を解体する

もし途中で小さなやり忘れ(メールの送り忘れ、ソーイングセットを借り忘れる等)が発生した場合、エンディング後の展開が若干変化する。また途中で過去の探索者に自分たちの存在を知られたり(ペンダント奪還時に発生する可能性がある)、猟犬の封印に失敗した等の場合は、バッドエンドに繋がることになる。探索者があまりに慎重になりすぎても話が進まないため、過去の探索者との接触については、直接正面から向き合う・余程の至近距離で顔を見られる、といったことがない限り、多少近くを通り過ぎても気づかれることはないことをキーパーは探索者に伝えておくと良いだろう。


ペンダントの入手 #14:45

ペンダントを入手するには、倉庫に置かれている「くとぅるー君」の着ぐるみを着て過去の自分たちからペンダントを盗み出す必要がある。「くとぅるー君」の着ぐるみは倉庫に探索者の人数分発見できる。また、妨害のための小道具(1周目で「くとぅるー君」たちが配っていた風船や飴)が置かれている。これらは特に判定を行わなくても入手可能であるが、探索者の技能が高ければ〈目星〉を振らせても構わない。過去の探索者たちは話に気を取られているため、「くとぅるー君」に扮して後ろから近づき、ペンダントを奪う行為は自動成功となる。しかしその後、過去の探索者はペンダントを奪った追いかけてくる可能性がある(これは最初の周回での探索者の行動に依存する)。この場合、1周目に「くとぅるー君」の〈追跡〉に成功した探索者とのDEXの対抗ロールが発生する。DEX対抗ロールに成功すれば逃げ切ることが出来る。また残りのメンバーが「くとぅるー君」に扮して曲がり角の先に待機しておくことで、過去の探索者を撹乱することも可能だ。この場合、DEX対抗ロールに失敗しても過去の探索者は対象を見失い、逃走は成功となる。

尚、撹乱を行わずDEX対抗ロールにも失敗した場合、探索者は過去の自分たちに捕まってしまう。この後、脱出するためにSTR対抗ロールを行ってもよい。それでも逃れることができず過去の自分たちに正体がバレてしまった場合、即座に視界が暗転しバッドエンドとなる。


メールの送信 #15:00

「☓」印のされたメールは探索者たちがイ・スの秘密部屋にたどり着くために必要な情報である。このため、これを忘れるとタイム・パラドクスが発生する(エンディング後の展開が変化する)。メールの送信は1周目にメールを受信した探索者が自分自信に宛てて同じメールを送信することを宣言すれば、自動で成功するだろう。


ジレルスの結界石 #15:30

次の行き先は1周目、若菜が15:30に探索者たちに会ったという場所(カフェテリアを想定しているが、1周目の展開によっては別の場所となる。1周目を参照)である。探索者たちがそこに行き着くと、彼女の背後で青黒い煙が立ち上り始める。キーパーは探索者に〈目星〉または〈聞き耳〉(嗅覚扱い)で判定させる。

● 目星、または聞き耳に成功した場合
探索者は気づく。あの臭いだ──

● 目星、聞き耳に失敗した場合
彼女を発見した探索者たち。しかしあなたたちが気づいた時には異変は既に始まっていた。

若菜の背後に近くの鋭角から青黒い煙が立ち上り、忌々しい姿を形作っていく。ティンダロスの猟犬が姿を現すが、若菜は突然やってきた探索者たちに困惑していて猟犬の出現には気付かない。ここからは戦闘ラウンドに突入する。ティンダロスの猟犬は出現したばかりであるため1ラウンド目は何も行動をせず、探索者が先制することができる。不死の猟犬に対抗することができる唯一の手段は若菜の父に教えられた呪文を使うことだ。そして探索者が呪文の発動に成功すれば、猟犬を石の中に封印することが出来る。猟犬は必死に抗おうと抵抗するが、やがて吸い込まれるように石の中へと消えていく。一方の若菜は状況が飲み込めずに狼狽えているだろう。


不死の猟犬 #15:30

探索者たちが真球の石のペンダントを持たないまま若菜の元を訪れた場合、猟犬は容赦なく探索者と若菜に襲いかかる。ティンダロスの猟犬は物質的なダメージを一切受け付けず、受けてもすぐに回復してしまう。大ダメージを受けても、一旦掻き消えた後、すぐに再び鋭角から登場する。またその場から逃げ出せたとしても、すぐに鋭角から現れる。抗う術を持たない探索者は、やがて最後の時を迎えることになるだろう。


ソーイングセット #15:30

ティンダロスの猟犬を封印した探索者たちは、そのままの勢いで、若菜からソーイングセットを借りることが出来る。彼女は呆気に囚われたままソーイングセット貸してくれるだろう。探索者たちが去った後、彼女は思い出したように探索者たちを探すため、走り去っていく。一周目で出会った彼女は、この彼女だったのだ。ここでもし借りるのを忘れた場合、後に1周目の探索者たちと彼女が出会う機会を失うことになり、タイム・パラドクスが発生し、エンディング後の展開が変化する。


爆弾解体 #15:40〜16:30

猟犬を封印して準備が整えば、残るは爆弾を解体するだけである。爆弾の解体方法を覚えている探索者はDEX×5またはINT×5に成功することで爆弾を解体することが出来る。爆弾の解体には刃物が必要になる。これには若菜から借りたソーイングセットに入っているハサミを利用することが出来る。また探索者が機転を効かせて刃物を入手(店で購入する、何らかの所持品を使うなど)し、分担して爆弾の解体に当たることもあるだろう。この場合、刃物の調達にも時間が必要である。キーパーは10分ほどを目安に調整するとよい。

● 解体の判定に失敗した場合
探索者は緊張と焦る気持ちから、手が震えうまく作業が進まない。探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。

爆弾の解体が失敗した場合は、5分程度の時間を経過させて再チャレンジすることができる。再チャレンジの際は+10%の修正が付く。これは再チャレンジする毎に累積していくものとする。成功すれば、爆弾は1個あたり5分~20分程度で解体することが出来る。キーパーは全ての爆弾を解体した時点で16:30になるよう調整しながら時間を進めること。


最後のコード #16:30

最後の爆弾では、最後の一本のコードを切断する直前で、解体中の探索者の手が止まる。探索者の眼の前には赤と青のコードが映る。最後に仕掛けられたブービートラップ。探索者は意を決し、どちらかのコードを切断しなければならない。この選択の答えは「青を切る」ことだ。ヒントは占いのラッキーカラーに加え、アリッサ・シャトレーヌの演説にある「黄昏を断ち切り…青き深淵なる世界へ」という言葉である。彼女の野望を阻止するには、彼女の言葉の逆をする必要がある。すなわち青を断ち切り、黄昏を超えるのだ。探索者が青のコードを切って全ての爆弾の解体が完了すれば、無事にエンディングを迎えることが出来る。


青き深淵なる世界 #16:30

赤のコードを切ってしまった場合、その場で爆弾が爆発する。近くにいた探索者は10D6のダメージを受ける。またその爆発は施設に甚大なダメージを与え、海水が施設内に押し寄せる。間もなくして、アリッサが姿を現しクトゥルフが復活する。生き残った探索者がいた場合は1D10/1D100の正気度ポイントを失う。やがて世界は青き深淵へと飲み込まれて行く。

ending



エンディング


黄昏を超えて

全ての条件を達成して爆弾を解体し終えた場合、このエンディングに到達する。

・過去の探索者に気づかれず、真球の石を手に入れる
・イ・スの隠し部屋の場所を示すメールを過去の自分に送る
・ティンダロスの猟犬を封印し、若菜を救う
・若菜からソーイングセットを借りる
・16:30までに爆弾を全て解体する

最後のコードを切った途端、探索者たちは耳を割くような音に思わず目を閉じてしまう。静寂があたりを包む。やがてガヤガヤと来場客たちの楽しそうな声が聞こえてくる。

「…ねえ。ねえ、聞いているの?ねえってば」
目の前には、若菜が立っていた。
「ちょっと、話の途中でボーっとしないでよ!」

16:30。この時間は1周目。若菜が消えた時間に繋がっている。1周目、彼女が消えたのは探索者たちの手によって時間が書き換えられたことが原因だった。何も知らない彼女は、探索者たちに借りていったソーイングセットを返すようせがむ。気がつけば、探索者は彼女から借りたソーイングセットを持っている。また、ジェットコースターの列も人が減り、今なら丁度乗ることも出来る。沈む夕日は海底に赤と青が入り交じる幻想的な光景を映し出し、探索者たちは実感する。困難の刻を乗り越えて、運命を変えることができたことを。


何かが違う

爆弾は解体したものの、途中のフラグを取りこぼした場合はこちらのエンディングへと進む。主にメールを送り忘れた、ソーイングセットを借りなかった、などの場合が考えられる。メールを送らなかった場合は探索者たちがイ・スの隠し部屋にたどり着けなかったことになり、またソーイングセットを借りなかった場合は若菜に出会うチャンスを失う。これらのケースではタイムパラドクスが発生し、探索者は再び、時間の歪みからティンダロスの猟犬に発見されることになる。このエンディングでは、一旦最後の描写までは通常の「トゥルーエンド」と同じように進める。ただし、探索者の手にソーイングセットはない。そして何も知らない探索者の背後、鋭角から青黒い煙が立ち上ってくるシーンで終りとなる。


クリア報酬

・シナリオクリア:2D10
・パラドクスを回避して、若菜を救った(トゥルーエンド達成):+1D6
・クリアはしたが、フラグを取り逃した:-1D4 さらに猟犬に追われることになる


シナリオチャート

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