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諸注意:

本シナリオは、推理小説の犯人側を演じてみよう、という試みの元制作したシナリオです。流血や暴力的な表現が含まれる場合が御座いますので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。そうでない方はお進み下さい。

かくして、イゴーロナクは人の世を歩むために帰還し、待機するのである。すなわち、この地上から邪魔者が一掃され、クトゥルーが緑なす墓所から立ち上がり、グラーキが水晶の跳ね上げ戸を押し開け、アイホートの眷属が白昼に生まれ、シュブ=ニグラスがムーン・レンズを砕くために歩みを進め、バイアティスが獄舎を破り、ダオロスが幻影を引きはがして背後に隠されている真実を露呈させるときが来るまで。──『グラーキの黙示録』第十二巻

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(ラムジー・キャンベル著、野村芳夫訳、「コールド・プリント」より)

シナリオの概要

このシナリオのテーマは「推理小説の犯人側を演じてみよう」というものです。”クトゥルフ神話TRPG”に対応し、探索者は35人向けにデザインされています。プレイ時間は探索者の作成時間を含まないで3~4時間程度、特殊なシナリオであるためプレイヤーは”クトゥルフ神話TRPG”経験者の方が望ましいでしょう。

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このシナリオは、資産家の夜志摩 兼文(やしま かねふみ)に騙されて借金を負った探索者が、共謀して彼の屋敷へと乗り込んで彼を殺害した所から始まります。恨みを晴らした探索者たちですが、本題はここから。夜志摩の屋敷には彼の莫大な隠し財産が眠っていることを、探索者たちは知っているのです。さあ、さっさと金を見つけてずらかろうじゃないか。逃げてしまえばこっちのものだ。こうして探索者たちの生き残りをかけた戦いが、今始まる・・・!

このシナリオについて

このシナリオには、シナリオクリアとゲームオーバーの条件が存在

します。キーパーはプレイヤーに次の情報を提示してください。

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<クリア条件>

・夜志摩の隠し金を探して、盗み出す

・その後屋敷を脱出する

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<ゲームオーバー条件>

・死亡、または正気度ポイントの全喪失

・途中で誰かに発見されて警察に通報される

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探索者たちは事前知識として夜志摩が自宅に大金を隠していることを知っているものとしてください。どこに隠されているかは彼を殺した後で探し出すしかありません。

また犯行が誰かにバレて通報されそうになっても、その前に相手を口封じに殺害すればゲームオーバーを回避することが出来ます。尚、処理を簡略化するためこの口封じは探索者が宣言すれば自動で成功するとしても構いません。

探索者の作成について

このシナリオは騙されて借金を負った探索者が、共謀して騙した相手を殺害した場面から始まる設定です。このため何度もプレイした探索者より、探索者を作成する方が推奨されます。

探索者は最初から互いに顔見知りとしておけば導入はスムーズに進むでしょう。

職業は何でも構いませんが、探索者は最初から1D100×1D100万円の借金を背負っているものとします。

推奨技能は〈目星〉に加えて〈隠す〉〈言いくるめ〉〈図書館〉など。また終盤には少しだけ戦闘も発生します。

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また、今回のシナリオには金や恨みのためなら殺しも厭わない邪悪な心を秘めた探索者がふさわしいでしょう。あからさまに邪悪でなくても、つい犯罪に手を染めてしまう心の弱い探索者でも構いません。また騙されて借金を背負った背景や、切羽詰まった事情、夜志摩に対して強い恨みを持つことになったエピソードなどを決めておいても面白いかもしれません。

主なNPC

◆夜志摩 兼文(やしま かねふみ)、イゴーロナクの司祭

年齢:44歳 職業:古物収集家資産家

STR 13  CON 10  SIZ 12  INT 14  POW 5  DEX 7  APP 8  EDU 17

正気度 13  耐久力 0(既に死んでいる)

探索者たちの知り合いで、他人を騙しては金をむしり取る人間のクズ。その正体はイゴーロナクを崇拝する彼の大司祭であったが、探索者たちの手によって殺害される。彼の屋敷の中には、これまで多くの人々から騙し取ってきた大金を隠し持っている。

◆朝比奈 千夏(あさひな ちなつ)、イゴーロナクの情人

年齢:21歳 職業:大学生、狂信者

STR 9  CON 11  SIZ 12  INT 13  POW 10  DEX 12  APP 17  EDU 15

正気度 0 耐久力 12

夜志摩の屋敷に監禁されて拷問まがいの仕打ちを受けているが、実際はイゴーロナクを崇拝する彼女が自ら望んだことである。セッション中、彼女が他の探索者と2人きりになった場合、その探索者に肉体的な関係を求めても良い。応じた者は肉体と同様に精神を堕落させて1/1D3の正気度を失うと共に、失った正気度と同じ数値分、罪状カウンターが上昇する。彼女の背中には夜志摩の手によって金庫の暗証番号が刻み込まれている。

◆明智 義正(あけち よしまさ)、探偵

年齢:43 職業:探偵

STR 12  CON 13  SIZ 12  INT 11  POW 10  DEX 12  APP 10  EDU 14

技能:目星70%、心理学70%、組み付き75%、追跡30%、聞き耳60%、ギャンブル50%

夜志摩と以前から交友のある売れない探偵。夜志摩の悪事のことなどはつゆ知らず、「うまい酒が手に入ったから一緒に飲もう」という夜志摩の誘いに乗ってやってくる。キーパーの裁量で、事ある毎に「あれれ?」とほのめかす小学生やマーシャツアーツキックを使いこなす女子高生の娘を連れている設定に変更してもよい。

罪状カウンター

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本セッション中、探索者が悪事を働くと、罪状カウンターが上昇します。罪状カウンターは探索者毎に、探索者に判らないようキーパーが管理してください。罪状カウンターの初期値は0です。罪状カウンタが一定数に達した探索者には、次のようなイベントが発生します。

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4点:

誰かの声を聞く。それはあなたの頭の中に直接響いてきた。

「さあ、何をするべきか分かっているな」

    

6点:

再び頭の中にあの声が響く。

「何をしている?ぐずぐずするな。くだらないことを考えている暇はない」

そして次第にあなたは周りに対する怒りや欲望、失望などの負の感情を抑えられなくなってくる。プレイヤーはこの結果をロールプレイに反映する。

    

8点:

頭の中にイライラとした声が響く。

「お前はのろますぎる。このクズが。私を失望させるな」

あなたは1/1D6の正気度ポイントを失う。さらにあなたは一層、自分の負の感情を抑えきれなくなり、周りに当たり散らしたり、言葉または実際の暴力に走る。プレイヤーはこの結果をロールプレイに反映する。

    

10点(以降は、罪状カウンターが上昇する毎に毎回):

あなたの頭の中にはあの声が、相も変わらずこだまする。あなたは「するべき事」を知り、一時的に発狂する。効果は「6:自殺癖または殺人癖」だ。

    

13点:

一時的発狂に加えて、セッション終了時イゴーロナクに憑依される可能性がある。エンディング「Yの帰還」を参照すること。

シナリオ 導入

シナリオは夜志摩兼文の屋敷のリビング、探索者たちが彼を殺害した場面から始まります。

窓の外は激しい雨で、時折雷鳴が鳴り響く。

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まだ日が沈むには早い時間であるが、空は真っ黒な雲に覆われて周囲は闇に沈んでいる。フローリングの床の上には血のついた1本のナイフが落ちており、血溜まりの中に資産家、夜志摩兼文の死体が転がっている。肺に達した背中の傷と恐怖と苦痛に歪んだその表情が、人体が酸素を取り入れるための機能を失い、苦しみぬいた憎むべき男の最後を物語っていた。

さらに彼の死体の右手には、死の間際に彼が懐から取り出した手帳が、最初のページを開いた状態で握られています。そこには次のような一文が記されています。

……クトゥルーの手先さえ、イゴーロナクについては口にする勇気がない。

しかし、人間のもとに再び歩み出すため、イゴーロナクが永劫の孤独に

決別を告げるときが来るであろう……

これは「グラーキの黙示録」第十二巻に記された文章で、探索者は無意識にもその文章を読んでしまいます。これにより、イゴーロナクの存在を知ってしまった探索者は彼に狙われることになるのです。こうして、自分たちの手で人を殺してしまった探索者たちは1/1D4+1の正気度ポイントを失います。さらに失った正気度と同じポイント分、罪状カウンターが上昇します。ここで最も多くの正気度ポイントを失った探索者が、彼にとどめを刺したことにしてもよいでしょう。

探索パート

■ 探索パート:夜志摩邸 1F

<資料1>夜志摩邸 見取り図 1F

■リビング

座り心地の良い高級ソファーやテーブル、大型のテレビが置かれたリビングです。部屋の中央には夜志摩の死体が血溜まりの中に転がっており、また部屋の端の棚には奇妙な木彫りの像が立てられています。それはずんぐりとした裸の男性の立像で、なぜか頭部が欠けています。

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●死体

死体の手には手帳が握られており、冒頭の文章を記したページが開かれた状態になっています。しかしその後には、買い物や人と合う予定など当たり障りがないものが続くだけです。また死体のポケットを探るか〈目星〉ロールに成功すると、彼の財布と1枚の写真が上着の内ポケットに入っているのに気づきます。財布には2D10万円の現金が入っており、カードの類は入っていません。おそらく彼はカード類を使わない主義なのだろうと推測出来ます。

写真には傷だらけの若い女性があられもない姿で、拷問を受ける様子が写っている。顔は写っていないが、被写体は20代前半くらいの年齢であることが推測できるだろう。また女の身体の所々にはいくつかの歯で噛みつかれたような痕跡があることが見て取れる。写真の背景は暗く薄汚れたレンガの壁で囲まれた部屋で、写真の裏には最近の日付で「○月○日 自宅にて 朝比奈千夏」というメモと「かの堕落と退廃の証に、我が神聖なる神の名を捧ぐ」という一文が書かれている。

写真を見た探索者は0/1の正気度ポイントを失います。さらに〈目星〉ロールに成功すると、彼女の後ろに、壁に設置された金庫のようなものが僅かに写り込んでいることに気づきます。金庫の蓋は開いており、その中には札束が詰まっているのが見えます。低く見積もっても億は下らない額に思えます。手帳や写真、財布等を持ち出す場合、その探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

※この写真は地下の隠し部屋で撮影されたもので、隠し部屋の場所は朝比奈を助け出した際に彼女から教えてもらうことが出来ます。

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●立像

木彫りの立像でずんぐりとした頭部のない裸の男性を形どっています。〈目星〉ロールに成功するとその像の両手には口のようなものが開いていることに気づきます。さらに〈クトゥルフ神話〉技能に成功すれば、それがイゴーロナクを形どったものであることに気づき、0/1の正気度ポイントを失います。像の価値はよく分かりませんが、勝手に持ち出す場合は、その探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

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●棚

〈目星〉に成功すると、いくつかのワイングラスと1本1D100万円のワインを1D6本発見することが出来ます。勝手に持ち出したり飲んだりする場合は、その探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

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■ダイニング

シャンデリアの下に光沢のある大きなダイニングテーブルが備えられており、その周囲には椅子が並べられ、テーブルの中央には銀の燭台が飾られています。〈地質学〉または〈知識〉/2に成功すれば、燭台は純度の高い銀で出来ていることが分かります。この燭台の価格は1D6万円程度です。燭台を盗み出そうとする場合、その探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

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●隠し階段

開かずの間で朝比奈の話を聞いた後であれば、床を調べることで地下室への隠し階段を発見することが出来ます。この階段は、地下の礼拝室へとつながっています。

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■キッチン

整理されたキッチンです。ここでは包丁などの刃物、布巾や食器用の石鹸、バケツなどが入手出来ます。武器として使用する場合は、小型ナイフ(「クトゥルフ神話TRPG」P.70)として扱って下さい。この場合、キッチンの物品を持ち出す探索者は罪状カウンタが1点上昇します。またキッチンにある大型の冷蔵庫の中には酒のつまみ類以外はほとんど何も入っておらず、〈隠す〉または〈アイデア〉ロールに成功すれば、人間の大人1人くらいなら入りそうなスペースがあることに気づくことが出来るでしょう。中の食品を勝手に持ち出したり食べたりする場合、その探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

■ 探索パート:夜志摩邸 2F

<資料2>夜志摩邸 見取り図 2F

■書斎

様々な古びた書物の詰まった本棚が並び、窓際には木製の大きな机が1台座しています。床には高級そうではあるが趣味の悪い絨毯が敷かれており、照明は天井に供えられた数個の白熱灯のみで全体的に薄暗い印象を受けます。

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●本棚

本棚にあるのはほとんどが海外の猟奇事件やオカルト、残虐な小説ばかりです。〈図書館〉ロールに成功すれば、その中に1冊、夜志摩の手によって書かれたと思われるノートを発見することが出来ます。それは「グラーキの黙示録」と呼ばれる12巻から成る手稿本について彼が研究した内容を記したものです。ノートの内容全てを理解するには平均8週間の時間が必要で、シナリオ中にこれを読み切ることは出来ません。しかしノートには2箇所ほど付箋が貼られてたページがあり、そのうちの1つにはイゴーロナクと呼ばれる邪悪な存在についてのことが書かれているのが分かります。

イゴーロナクは、地中の夜の深淵を超えた先、レンガの壁の向こう側で眠る存在である。だがひとたびその名が口の端に登り、あるいは人目にさらされると、邪神は崇拝者や餌を求めて再び現れ、そして自らが常食とするものを貪り、その形態と魂を真似、再び人の世を歩み出すために帰還するのである。彼は邪悪なものを読み心のうちにその姿を探す者を求め、そのような人間を彼の司祭たる現世の肉体に仕立て上げようとする。

さらにもう一方のページについて〈日本語〉ロールに成功した探索者は、そこに書かれた次の呪文を習得することが出来ます。

<ナイハーゴの葬送歌>

この呪文は、実体を持った不死なる存在を討ち滅ぼすために使用される。術者は12点のMPと1D6の正気度ポイントを消費して詠唱を行う。対象はPOWによる対抗ロールを行い、失敗すると即座に灰と化す。

これを読んだ探索者は〈クトゥルフ神話〉を+1%獲得し1/1D2の正気度ポイントを失います。尚、このノートを持ち出す場合は、その探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

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●机

机の引き出しを開けると、小さな鍵を発見することが出来ます。これは「開かずの間」のもので、鍵を持ち去る場合、その探索者は罪状カウンタが1点上昇します。

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■寝室

部屋の西側の壁にはクローゼットの扉があり、奥には白いシーツと布団の敷かれた幅広のベッドが置かれています。

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●ベッド

〈アイデア〉または〈隠す〉ロールに成功すれば、ベッドに敷かれたシーツが死体をくるむのに丁度よい大きさであることに気づきます。また、ベッドの下を覗いた場合、探索者は3D10万円分のへそくりを発見することが出来ます。これを持ち出す探索者は罪状カウンタが1点上昇します。

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●クローゼット

夜志摩の衣服やスーツなどが几帳面に折りたたまれ、あるいはハンガーに掛けられてしまわれています。名の知れた高級ブランド品や装飾品も少なくはありません。ここでクローゼットを調べたり〈目星〉に成功した探索者は、男物の衣服に混じって若い女性が身につけるような衣服や下着を発見することが出来ます。これらを持ち出す探索者は、罪状カウンタが1点上昇します。

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■客室

1部屋に2台ずつベッドが置かれていて、布団と白いシーツが用意されています。〈アイデア〉または〈隠す〉ロールに成功すると、そのシーツが死体を包むには丁度よい大きさに思えます。他には特にめぼしいものはありません。

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■倉庫

ダンボール箱や使わなくなった家具日用品などが押し込まれた倉庫です。〈アイデア〉または〈隠す〉ロールに成功すれば、雑多なものが置かれたこの場所は小さなものを隠すには打ってつけの場所だろうと感じることが出来ます。さらに〈目星〉ロールに成功すると何かを破壊するために使えそうな金槌やノコギリといった大工道具、バールのようなものなどを発見することが出来ます。またその他にプレイヤーが望むものがあれば、キーパーの裁量で〈幸運〉と〈目星〉の組み合わせロールなどを行い発見出来ることにしてもいいでしょう。ただし勝手に倉庫のものを持ち出す場合、その探索者の罪状カウンタは1点上昇します。

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■開かずの間

入り口には鍵がかけられており、開けるには書斎の机の引き出しから入手できる鍵を使うか〈鍵開け〉に成功する、または破壊する必要があります。鍵を使わずに扉を開ける場合、探索者の罪状カウンタが1点上昇します。

扉を開けるとそこは明かりがないまっくらな部屋だった。そして廊下から差し込む光を避けるように、その奥でかすかに何かが動く。「ひっ」と、小さな悲鳴が聞こえる。暗闇に目が慣れた頃、探索者はそこに1人の女がいることに気づく。

女は20代前半ほどの整った顔立ちの女性であるが、頭をすくめて傷だらけの顔を庇い、ひどく怯えたよう震えながら部屋の角で身体を丸め、恐る恐る探索者を見上げる。

●朝比奈 千夏

開かずの間に閉じ込められていたのは朝比奈千夏という名の大学生で、年齢は21歳。探索者が自分は夜志摩ではないことや、危害を加えるつもりはないということを伝えれば、恐る恐る顔を上げます。

「もしかして私を、助けに来てくれたんですか?」

彼女は夜志摩に無理やり連れ込まれてこの部屋で監禁されていたこと、さらに地下室で何度も酷い目に合わされたことを説明し「ここから逃してくれるなら何でもします。だからお願い、助けて下さい」と懇願します。探索者が了承したり彼女に対して優しく接すると、彼女は一生出られないと思っていたと、安心感からか目に涙を浮かべて、探索者に何度も礼を伝えます。

彼女は探索者に夜志摩の隠し金のことを問われると、彼女は1階のダイニングの床に隠し扉があることを教えてくれます。彼女は夜志摩に何度もその部屋に連れ込まれては拷問まがいの仕打ちを受けており、その際、地下室に札束の詰まった金庫を見たと言います。さらに彼女に対して自分たちが夜志摩を殺したことを伝えた場合、彼女は驚きながらも殺されて当然の男だったと吐き捨てて、探索者たちに協力的な態度を取ります。彼女は探索者たちに好意を示し、金を手に入れて逃げるなら自分も連れて行って欲しいと懇願します。

■ イベント

■イベント:イゴーロナクの従者

部屋を移動している場合、または何らかの行為を行っている途中、1D100を振り25%の確率で巡回中のイゴーロナクの従者(「マレウスモンストロルム」P.21)に遭遇します。ボロをまとった奇形で目のない子どものような存在は、手のひらに口があり、探索者に対して遭遇の度に両手のひらの口と顔の口で合計3回噛みつきを試みて、その後はそそくさと逃げていきます。またイゴーロナクの従者を初めて見た探索者はSANチェックを行い、0/1D4の正気度を喪失します。

イゴーロナクの従者、ボロを纏った眼のない闇のもの

STR 7 CON 10 SIZ 5 INT 2 POW 7 DEX 10

移動 10

耐久力 8 DB:-1D6

武器:噛みつき 30%、ダメージ 1D2+db、1ラウンドに3回攻撃

正気度喪失:0/1D4

■イベント:刑事の登場

このイベントは、屋敷内の探索がある程度進んだ所で差し込んで下さい。順調に進んでいる場合は朝比奈とのやりとりが終わった後あたりが良いでしょうか。途中で探索者が証拠隠滅などの行為に出ようとしている場合は、あまり隠されないうちに差し込んで下さい。探索者に〈目星〉または〈聞き耳〉で判定を行わせて下さい。成功すると屋敷に1台の車が近づいてくるのに気づきます。判定に成功すれば、探索者は彼が屋敷にやってくる間に事件の痕跡を急いで隠す猶予が生まれます。この時隠す必要があるのは次のものになります。

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    - 床の血痕

    - 凶器のナイフ

    - 夜志摩の死体

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判定は〈隠す〉ないしは適切であると思われる技能で行い、それぞれに対して探索者の誰か1名が1回だけ試みることが可能です。さらに隠す行為を1回行う毎に、探索者の罪状カウンターは1ポイント上昇します。またキーパーは探索者の提案する方法に応じて、適宜判定にボーナスを与えてください。

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●明智の捜査

やってきたのは40歳弱ほどの男で、明智と名乗ります。彼は夜志摩の古くからの友人で、今夜彼がいい酒が手に入ったから一緒に飲む約束をしていたのだと言います。探索者が夜志摩は今いないという話をしても、彼はいつものことだから問題ない、しばらく中で待っていると屋敷に上がろうとしてきます。

彼は探索者への質問や屋敷内の探索(《目星》)を行い、何かに疑いを持つ度、彼の【疑惑ポイント】が上昇していきます。そして一定量に達することで、彼は次のような行動に出ます。

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【疑惑ポイント】

3: 彼は屋敷の状況について怪しいとは感じるものの、まだ探りを入れている段階です。

5: 彼は夜志摩に何かがあったのではないかと思い始める。RPに反映し、探索者への追求を強めます。

: 彼は夜志摩に何かがあったことを確信し、それを探索者に追求すると共に、警察に連絡を取り始めます。

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6ポイント以上溜まってしまった場合は、彼を殺害しなければゲームオーバーです。探索者は宣言するだけで、問答無用で彼を殺害することが出来ますが、彼を殺害した探索者はSANチェックを行います。正気度喪失は1/1D6の正気度です。またさらに、この探索者は罪状カウンタが1D10ポイント上昇します。

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●呼び鈴に出ない

明智は「おかしいな、中に人の気配はしたのだが……」などと言いながら、留守を怪しむような素振りを見せます。疑惑ポイントが+1ポイントされます。尚も応じない場合、さらに+1されていきます。4ポイントまで上昇した所で、窓から侵入を試みるなどの強硬手段に及び始めます。

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●目星

〈目星〉(70%)での判定を行い、残された痕跡を見つける毎に疑惑ポイントが+3されます。また死体を発見してしまった場合は、問答無用で疑惑ポイントが6点まで上昇します。事前に証拠品や死体に対して〈隠す〉に成功していた場合、明智の〈目星〉の目標値は1/2、クリティカルで成功していれば自動失敗になります。一切隠していない場合や〈隠す〉に失敗した場合、明智の〈目星〉は自動成功になります。

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●心理学

彼は探索者の嘘やに対して〈心理学〉(70%)を振ることが可能です。この時〈言いくるめ〉や〈信用〉に成功すれば〈心理学〉の目標値を1/2にすることが可能です。探索者の嘘に対して〈心理学〉ロールが成功すると、疑惑ポイントが+1されます。尚、探索者が明智を騙そうとする場合、1つの嘘につき罪状カウンターが1点上昇します。

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最終的に技能を35回程度振ったところで何も見つからなければ〈明智〉は諦めて帰っていきます。

クライマックス:地下室

■地下礼拝堂

地下室の入り口はダイニングの床にあります。朝比奈から話を聞いてダイニングを確認すれば、ダイニングテーブルの下、巧妙に隠された扉を発見することが出来ます。扉を開けると地下へ降りる階段があり、その先は地下礼拝室へとつながっています。

地下礼拝堂は20畳ほどの広い空間で天井は2.5mほどの高さがあり、奥には祭壇のようなものがあります。祭壇の上には金属できた右手を形どった像が祀られており、その手の平には鋭い歯が生えそろった口のようなものが開いています。

ここでは〈目星〉または〈アイデア〉ロールに成功すると、祭壇の左側の床に祭壇を引きずってずらしたような跡があることに気が付くことが出来ます。そして祭壇を跡が付いている方向に押せば、その裏にある隠し扉を発見することが出来ます。

<資料3>夜志摩邸 見取り図 B1F ①

<資料4>夜志摩邸 見取り図 B1F ②

■隠し部屋

礼拝堂の隠し扉を先に進むと、隠し部屋に到着します。

そこは薄汚れたレンガ作りの部屋で、壁やベッドには幾つもの拘束具が取り付けられた拷問室のような出で立ちで、様々な肉体的・精神的苦痛を与えるための道具が転がっている。棚には何度も使い回された注射器の残骸や何のものか分からない薬品などが並んでおり、そんな中、部屋の奥の壁には大きな金庫の扉が取り付けられている。

●拷問器具

この部屋では様々な刃物、鈍器、または薬品の入った注射器などを手に入れることが出来ます。キーパーの裁量で、探索者の提案に応じ適切と思われるペナルティを課した上で〈幸運〉ロールに成功すれば、それらを発見出来たことにしても構いません。

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●金庫

ダイヤル式の金庫で、5桁の数字による暗証番号で開くことが出来る仕組みになっています。〈鍵開け〉で開くことはできず、物理的に破壊することも出来ません。この数字のヒントは夜志摩の手帳にあった「かの堕落と退廃の証に、我が神聖なる神の名を刻む」の一文です。この金庫の鍵は、彼が信仰するイゴーロナクの名前を5桁の数字に変換した「15679」の順にダイヤルを回せば開くことが出来ます。またこの数字は朝比奈の身体にも刻まれており、彼女の服を剥がせば、背中にその数字を発見することが出来ます。金庫の中には1D10億円相当の札束が入っています。探索者たちがこれを盗む場合、1D6ポイントの罪状カウンタが上昇します。

エンディング

■エンディング:イゴーロナクの情人

金を手に入れた後、罪状カウンタが13に達した探索者がいない場合はこちらのルートへと進みます。大金を手に入れて皆が喜ぶ中、探索者は朝比奈が俯いているのに気付くことが出来ます。彼女はいらいらとした声で、探索者たちを罵倒します。

「使えないクズども・・・所詮はこの程度。どうやらあなたたちは”失格”だったようね」

途端、探索者の見る前でみるみるその美しい顔が崩れ始めます。皮膚はまるで死者のように青白くくすみ、目は消失し、体中にはいくつもの大きな噛み傷が口を開けて鋭い歯をギチギチと軋ませます。そのような彼女の悍ましい変異を見た探索者は1/1D6の正気度ポイントを失います。彼女はイゴーロナクの情人へと変異を遂げ、探索者に襲いかかります。

朝比奈 千夏、イゴーロナクの情人、自ら望んで恋人となる事により復活した犠牲者

STR 20 CON 22 SIZ 10 INT 13  POW 10 DEX 17

移動 15 耐久力 16

ダメージボーナス:+1D4

武器:爪 45%、ダメージ 1D3+db

組みつき 55%、ダメージ 1D3の噛みつき+1/1D4ポイントの正気度を失う

噛みつき 50%、ダメージ 1D4

装甲:なし。ただし魔力を付与されていない物理的な攻撃からは最低限のダメージしか受けない。

正気度喪失:1/1D6

イゴーロナクの情人である朝比奈に対して、物理的な攻撃では最低限のダメージしか与えることは出来ません。ここでの撃退方法は、[ナイハーゴの葬送歌]を使う、拘束具で拘束する、いち早く逃げて地下に閉じ込める、などが適当でしょうか。

[ナイハーゴの葬送歌]を使う場合、MPと正気度ポイントを消費して朝比奈がPOW対抗ロールに失敗すれば、イゴーロナクの情人を撃退することが出来ます。その場合、彼女は直ちに灰となって崩れていきます。また拘束具にイゴーロナクの情人を縛り付ける場合、朝比奈のSTR20とのSTR対抗ロールになります。2人までの探索者が協力することで、その合計値と彼女のSTRで対抗ロールを行うことが出来ることにしても良いでしょう。彼女から逃げ出す場合は、礼拝堂へ抜けて階段を上り、彼女を閉じ込めるまでの間、都合2回のDEX対抗ロールに勝利する必要があります。またその際〈幸運〉ロールに失敗すると、せっかく入手した大金を落としてしまうかもしれません。その他、キーパーの裁量で適切と思われる探索者の提案を採用してシーンを演出してください。ともあれ彼女から逃れた探索者は、無事に大金を手に屋敷から脱出することが出来ます。

■エンディング:Yの帰還

このイベントは罪状カウンタが13点に到達した探索者がいた場合に発生します。罪状カウンタが13点に達した者のうち、最も数値が高い探索者の耳に、再びあの声が聞こえます。そんな中、朝比奈はうっとりと蕩けた表情で言います。

「ああ、わが主よ。お戻りになられたのですね」

​

途端、その視線の先にいる探索者の身体が膨張し、その衣服がひどい音をたてて内側から裂ける。中から現れたそびえ立つ人影はなぜか頭部が欠けており、両手の平には鋭い歯が並ぶ、濡れた赤い口が開いていた・・・

──そう、あなたは「やるべきこと」を知ったのだ。

人間がイゴーロナクに変異するのを目撃した探索者は、1/1D20の正気度ポイントを失います。そしてイゴーロナクへと変異を遂げた探索者は、他の探索者へと襲いかかります。イゴーロナクから逃れるには、次のターンで彼のDEX14との対抗ロールに成功する必要があります。さらに逃れたとしても、幸運ロールに失敗すると、逃げる途中でここまでに手に入れた金を落とす可能性もあります。その他、キーパーの裁量で適切と思われる探索者の提案を採用してシーンを演出してください。命からがら屋敷から脱出した探索者はシナリオクリアとなりますが、今後警察や借金取りから追われる生活を送ることになるのかもしれません。

クリア報酬

  • シナリオクリア:2D6
  • 明智を殺害しなかった:1D4
  • (借金額以上の)大金を手に入れた:1D6

【参考文献】

[1] 『コールド・プリント』、著:ラムジー・キャンベル、訳:野村芳夫、NIGHT LAND vol.1(2012)

  • 冒頭の文章、および夜志摩の手帳の一文を、作中『グラーキの黙示録』第十二巻の内容から引用。
  • 『イゴーロナク』神話生物の設定及び描写の参考にした。

​

[2] Shane Ivy, “Y.GOLO.NET”, http://www.delta-green.com/2012/04/y-golo-net/, 2014

  • 『イゴーロナク』神話生物の設定及び描写の参考にした。

​

[3]『クトゥルフ神話TRPG』、著:サンディ・ピーターセン/リン・ウィリス他、訳:中山てい子/坂本雅之(2004)

  • シナリオ作成にあたり必要な基本ルールは本書を参考にした。

​

[4]『マレウス・モンストロルム』、著:スコット・アニオロフスキーほか、訳:坂本雅之、立花圭一(2008)

  • 「イゴーロナクの従者」エネミーのデータ、設定・描写はP.21を参考にした。

​

[5]  Oscar Rios, “Paramour of Y’golonac”, The Unspeakable Oath 19 for Kindle, ARC Dream Publishing

  • 「イゴーロナクの情人」エネミーのデータ、設定について参考にした。

​

[6]『湖の隣人の小屋』、http://www5d.biglobe.ne.jp/~lake-god/uo_19_poy.html

  • 「イゴーロナクの情人」”Paramour Y’golonac”のエネミー名の日本語訳として同HPの表記を使用。

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