魔女の夢の終わりに

シナリオ概要

その学園にはこんな噂があった。
毎年4月の終わりになると、1〜2人の生徒が行方不明になるのだと。
行方不明になった生徒は、不思議な夢を見たと言っていたのだと。

これは、友達のともだちに聞いた話なんだけど───

推奨人数:1〜3人
想定プレイ時間:3〜4時間(オンラインのテキストセッションの場合は9〜12時間)




本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


※注意:以下にはシナリオのネタバレが含まれます。























キーパー向け情報

このシナリオでは、幾人かの登場人物がストーリーの裏で暗躍する。行方不明事件の黒幕は、探索者の担任である相崎夕子だ。さらにその裏には、ニャルラトテップの化身である暗黒の男がいる。暗黒の男は、1学年上の先輩、坂本祐希として、探索者が通う高校に潜んでいる。

探索者が通う高校では、毎年4月になると、必ず1人か2人、行方不明になる生徒がいると噂されている。さらに行方不明になる生徒は皆、行方不明になる直前に気味の悪い夢を見た、と言っていたというのである。この噂は本当で、探索者が入学してきたこの年は、探索者自身とその友人である田辺絵美の2人が狙われ、事件に巻き込まれていく、というのがシナリオの流れだ。

相崎は田辺絵美の持つ高い魔力的素質に目を付けて、アザトースへと捧げる生贄として彼女を選んだ。相崎はアザトースを信仰する魔女で、4/30の夜から5/1にかけてのヴァルプルギスの夜に、かの神へ生贄を捧げる儀式を行おうとしている。一方、探索者が狙われたのには別の理由がある。外なる神ニャルラトテップと次元を操る魔術に精通した相崎は、探索者が持つ特異性、探索者を通してこの世界を覗き見る「外の世界の住人」、つまり「プレイヤー」の存在に感づいたのだ。彼らはこの世界の特異点である探索者を通して「プレイヤー」への接触を試み、その力をアザトースに捧げようとしている。

ニャルラトテップも相崎も、高校生である探索者には強大な敵であるが、この学校には彼らに反旗を翻し、探索者の力になってくれる協力者も存在する。それが昨年行方をくらました生徒、間宮麻美である。彼女は以前から、セイレムの魔女ケザイア・メーソンの持つ次元を超越する力に憧れ、独学で魔術の研究に勤しんできた。しかし昨年の4月、そんな彼女の行動が相崎に目を付けられてしまう。魔女としての力量で上回る相崎に追い詰められた間宮は、《タフ=クレイトゥールの逆角度》を使ってどうにか逃げ出し、身を隠して反撃の機会を伺っていたのだ。



プレイヤー向け情報

シナリオの時代設定は現代の日本。舞台は春、高校に入学したばかりの探索者が、学園を舞台とした事件に巻き込まれていくという展開を想定している。このため探索者は15歳または16歳の高校に入学したばかりの学生として作成する。高校生の探索者は、EDUを[年齢-6]固定とし、EDU以外は他の探索者と同じように作成する。職業は親の職業・将来目指している職業・得意分野といった扱いで自由に選択してよい。2名以上でプレイする場合は1名を事件に巻き込まれるメインキャラクター、他をそのキャラクターを助ける友人として作成する。



主なNPC


◆ 田辺絵美(たなべ えみ)、探索者の友人
探索者の仲のよい友人であり、この春から同じ高校に通うことになった15歳。探索者が望めば、同じ中学出身や幼馴染ということにしてもよい。性格は人懐っこく、それでいてしっかりしており、面倒見もよい。またこっそりとオカルトに興味を持ち、このため毎年春に起きるという行方不明事件の噂を知っていた。高いPOWを持っており、それがために相崎に狙われることになる。

年齢:15歳 職業:学生
STR 10 CON 9 SIZ 11 INT 14 POW 17 DEX 10 APP 12 EDU 9
正気度 85 耐久力 10
技能:英語 40%、コンピュータ 5%、言いくるめ 30%、友人におせっかいを焼く 50%、応急手当 40%、目星 50%、オカルト 70%


◆ 相崎夕子(あいさき ゆうこ)、探索者の担任、邪悪な魔女
探索者のクラスの担任で、化学の教師。理路整然とした知性的な考えの持ち主で、細く尖ったメガネをかけ、厳しく冷血そうな顔付きから生徒たちに恐れられる存在。独身。
彼女の正体は、セイレムの魔女、ケザイア・メーソンの流れを組む邪悪な魔女だ。彼女はアザトースを信仰し、ニャルラトテップの意思に従い、毎年魔力的に優秀な生徒を神に捧げる生贄としている。彼女は魔女の血で育てたネズミの使い魔、ブラウン・ジェンキン(クトゥルフ神話TRPG P.246)を使役して犠牲者に接触し、徐々にその生気を奪っていく。やがて犠牲者が弱ったところで誘拐し、4/30から5/1にかけて行われるヴァルプルギスの夜に、犠牲者をアザトースへと捧げる儀式を行うのだ。

年齢:29歳 職業:高校教師
STR 12 CON 13 SIZ 10 INT 21 POW 23 DEX 10 APP 12 EDU 25
正気度 0 耐久力 12
ダメージボーナス なし
武器:肉切りナイフ40% 1D6+DB
組み付き 50%⇒窒息(毎ターンCON×(10-経過ラウンド)に失敗すると1D6ダメージ)
技能:天文学 35%、化学 75%、言いくるめ 70%、心理学 60%、薬学 60%、誘拐 70%、生徒に説教をする 65%
呪文:ニャルラトテップとの接触、アザトースの呪詛、外なる神の従者の召喚/従属、ヴールの印、タフ=クレイトゥールの逆角度
正気度喪失:魔女の姿になった彼女を見て失う正気度ポイントは0/1D4。


◆ 坂本祐希(さかもと ゆうき)、ニャルラトテップの化身
探索者たちの1つ上の先輩で、高校2年生。1年前は間宮麻美のクラスメイトでもあった。図書委員をしており、放課後に図書館を訪れると会えることがある。人当たりがよく優しそうな顔つきで、後輩である探索者に対しても親切に接してくれる。
しかしその正体は這い寄る混沌、ニャルラトテップの化身であり、相崎と共に学園に忍びこみ、興味をもった人間を自身が使えるアザトースの元へと誘う役割を担っている。

年齢:16歳 職業:学生、図書委員
データに関しては、クトゥルフ神話TRPG P.222を参照。


◆ 間宮麻美(まみや まみ)、行方不明の生徒、外なる世界への接触者
探索者たちの1つ上の先輩。学校にいる間は、親しい友人はおらず、オカルトグッズや古い本を持ち歩き、いつも1人でいる変人として名が通っていた。1年前の4月に急遽、両親が暮らす外国へと転校して行ったと言われているが、実際には毎年4月に発生する行方不明事件を追う途中、相崎に目を付けられ、姿を消したのだ。彼女自身もまた次元を操る魔術の使い手であり、学園を守り、相崎の野望を阻止するため、虎視眈々と機会を伺っていた。

年齢:16歳 職業:学生
STR 10 CON 14 SIZ 13 INT 21 POW 18 DEX 12 APP 15 EDU 9
正気度 25 耐久力 14
ダメージボーナス なし
技能:回避 50%、天文学 50%、言いくるめ 70%、目星 60%、聞き耳 70%、経理 40%、コンピュータ 70%、心理学 50%、変装 60%
呪文:木々への司令、タフ=クレイトゥールの逆角度、ヴールの印、プリンのアンサタ十字、エイボンの霧の車輪



導入パート


4月の夢

この物語は2018年の4月、この春から高校に通うことになった探索者が新しい環境にも馴染み始めた頃から始まる。探索者が眠っていると、深夜にふと、天井を駆ける小さな音に目を覚ます。それは小さく軽い足音を響かせて、天井裏を駆けていく。音の主はやがて壁を伝い、探索者の部屋の角へと降りていく。探索者がその方向を見ると、薄暗い部屋の片隅に、小さなこぶし大ほどの穴が空いていることに気づく。その穴は先が見えないほど深く、昏く、そしてその穴からは何かが顔を出して、探索者の顔を覗き込む。

穴から顔を出したのは、ケザイア・メーソンの使い魔であるネズミの怪物、ブラウン・ジェンキンである。一見はネズミのような生き物だが、ヒゲの生えたその顔はまるで人間のようで、4本の指が生えた前足はさながら人間のそれである。そしてそれは探索者を見ると、あざ笑うような声で笑う。

この不気味な姿をしたネズミを見て、探索者は0/1D4の正気度ポイントを失う。

探索者はいつの間にか再び眠りに落ち、気が付けば4月23日(月)の朝になっている。部屋の角を見れば、穴などないことが分かる。気味の悪い悪夢にうなされて目を覚ました探索者は全身に疲労感のようなものを感じ、耐久力を1ポイント失う。このダメージは応急手当や医学で回復することはできない。



4/23 朝:学校

朝、学校に登校すると、教室で探索者の友人である田辺絵美が声をかけてくる。彼女は探索者の疲れたような顔を見て、何かあったのかと心配している様子だ。昨夜見た夢の話をする場合、彼女は少し考え込むような素振りを見せた後に、「実は、友達のともだちに聞いた話なんだけれども…」と話を切り出す。彼女が言うには、探索者たちが通うこの学校には、毎年4月になると1〜2人、行方不明になる生徒が出るのだという。「しかも、その生徒は行方不明になる数日前から、変な夢を見たって言ってたんだって」。キーパーはそのように、彼女の口から探索者の今の状況と学校の噂に類似点があることを指摘して、探索者の不安を煽る。

そんな話をしていると適当なタイミングでガラガラと音をたてて、教室の扉が開かれる。そして担任教師の相崎夕子が教室に入ってくる。彼女は探索者のクラスで化学を担当している。彼女は教壇の上に教科書とプリントを置くと、「そこ、いつまで遊んでいる。授業を始めるぞ」と、探索者と絵美に注意して話を遮る。

授業が進むと探索者は[CON✕5]で判定を行う。

この判定に失敗すると、探索者は昨夜の疲労からつい眠ってしまう。成功した場合は、眠りそうになりながらもどうにか耐えることができる。いずれの場合でも、探索者は相崎からしっかりするようにと注意を受ける。眠っていた場合はここで目を覚ます。そして相崎は探索者に対して、罰として今日の放課後、化学準備室から資料を運ぶのを手伝うようにと伝える。



放課後のお使い

放課後、言われたとおり化学準備室から職員室の相崎の席までプリントの束を運ぶと、彼女はありがとうと探索者にねぎらいの言葉をかける。

探索者は〈目星〉ロールを行う。

成功した探索者は職員室の相崎の机の上に広げられたうす茶けたノートに気づく。ノートの開かれたページには見慣れない数式と図形が描かれている。それは三角形と円を組み合わせたような図形で、これまで授業でも習ったことがない数式や図形だ。相崎は探索者がノートに気づいたことを察すると、ノートをすぐに閉じて机の中にしまってしまう。
失敗した場合も、ノートの上にチラリと見慣れない幾何学図形を見つけることはできるが、相崎はすぐにノートを閉じてしまい、詳しく見ることはできない。もし探索者が、今のは何かと相崎に質問する場合、彼女はそのうち授業で教える内容だからまだ見ちゃダメだと探索者に優しく答える。

またここで探索者は相崎に対して、4月になると行方不明になる生徒がいるという話を聞きたがるかもしれない。その場合、彼女は探索者に対して、自分は昨年赴任してきたばかりだからそれ以前のことは知らないが、少なくとも昨年はそんな事件はなかったと答える。

〈心理学〉で判定を行った場合:
成功した探索者は彼女が何かを隠しているような印象を受ける。しかし探索者がそれを問い詰めようとすると、丁度下校のチャイムが鳴り始め、彼女は探索者に早く帰るよう促す。



4/23 夜:悪夢

このイベントは1日目の夜に発生する。夜、自分の部屋で眠りについた探索者は気がつくと真っ暗な闇の中にいて、背後から何者かの気配を感じる。振り向くと、そこに人間の顔をしたネズミと共に誰かがいる。探索者は意識がはっきりとせず、その人物が誰かを判別することはできない。〈アイデア〉ロールに成功すると、なんとなくその人物に見覚えがあるように感じる。そして、その人物はしわがれた、男とも女ともとれない声で次のように探索者に語りかける。

「お前は、あのお方に会わなければならない。さあ、行くぞ」

探索者は〈アイデア〉ロールを行う:
成功すると、探索者は”ここで行ってしまえばもう戻ってこれなくなる”という漠然とした恐怖と予感のようなものを感じ取り、0/1D3の正気度ポイントを失う。

探索者はいつの間にか再び眠りに落ち、気が付けば4/24(火)の朝になっている。気味の悪い悪夢にうなされて目を覚ました探索者は全身に疲労感のようなものを感じ、耐久力を1点喪失する。このダメージは応急手当や医学で回復することはできない。



4/24 朝:学校

学校へ行くと、再び友人の絵美が声をかけてくる。彼女は探索者の顔色が悪いのを心配して、保健室で休んだほうがよいのではないかと言う。キーパーは、保健室で休むことで耐久力を1D3ポイント回復できることを探索者に伝える。さらに彼女は、昨日の噂について次のように伝える。

「実は気になって知り合いの先輩に聞いてみたんだけど、昨年の4月に本当にいなくなった生徒がいたらしいの」

絵美が話を聞いた先輩は坂本祐希といい、探索者たちの1学年上で図書委員をしているという。彼女はいなくなった生徒について詳しくは聞いていないらしく、気になるなら直接先輩と話をしてみるとよいだろうと探索者に伝える。坂本先輩は放課後、図書室に行けば会えるかもしれないという。



探索パート

ここまでで導入は終わり、ここから探索者は自由に探索を行うことになる。キーパーは、学生である探索者には時間に限りがあるため、目安として1日につき1箇所、または1つの事柄についてのみ探索を行うことができると予め伝える。さらに土・日は学校が休みであるため、学校内での聞き込みは行うことが出来ない。
本シナリオでは探索者の行動によって調査の進行が前後する可能性はあるが、おおよそ次のような流れを想定している。間宮麻美の家の探索と日記の解読は休日に行うため、それまでに「行方不明になった生徒について」の2回目の探索が完了している必要がある。
金曜までに「行方不明になった生徒について」の2回目の探索が完了していない場合、多少強引ではあるが、キーパーは情報を持つNPCと帰り道に偶然会う、知り合いから電話がかかってくる、などのイベントを発生させて、探索者が情報を取り逃がさないよう調整するとよい。

4/23(月):導入
4/24(火):保健室 or 行方不明になった生徒について(1)
4/25(水):保健室 or 行方不明になった生徒について(1)
4/26(木):田辺絵美の家
4/27(金):行方不明になった生徒について(2)
4/28(土):間宮麻美の家
4/29(日):間宮麻美の日記の解読
4/30(月):ヴァルプルギスの夜、相崎夕子との戦い

また学校での探索中、探索者は25%の確率で相崎に遭遇する可能性がある。キーパーはプレイヤーに見えないようにダイスを振り、25以下が出たら探索者の前に相崎が現れる。彼女は探索者に早く帰るように告げ、どこかへ行ってしまう。彼女と遭遇した夜、探索者は再び部屋に人面ネズミが現れる悪夢を見る。人面ネズミはあざ笑うような声を上げながら、金縛りで動けない探索者に這い寄り、四肢のどこかに鋭い牙を突き立てる。探索者は0/1D3の正気度ポイントを失う。
翌朝、気味の悪い悪夢にうなされて目を覚ました探索者は全身に疲労感のようなものを感じ、耐久力を1点喪失する。このダメージは応急手当や医学で回復することはできない。そして夢で噛みつかれた箇所を見ると、そこには小さな噛み跡があり、血が滴っている。



行方不明になった生徒について

行方不明になった生徒について調べるには、先輩に聞く、先生に聞く、図書館などで資料を調べるなどの方法がある。行方不明の生徒については、1回で全ての情報を手に入れることはできず、間宮麻美の情報を手に入れるまで最低でも2日間の調査が必要である。坂本先輩に会うために図書室に来た場合、1回目は別の図書委員の生徒がカウンターに座っており、坂本先輩は今日は当番ではなく、明日来たら会えるだろうということを教えてくれる。

<1回目の調査> 1回目の調査では、〈言いくるめ〉〈信用〉もしくは[APP✕5]などによる聞き込み、または〈図書館〉〈コンピュータ〉などで調査することで、次の情報を手に入れることができる。

・一昨年、さらにその前と、立て続けに生徒が行方不明になっている
・しかし、昨年は行方不明になった生徒はいない
・一昨年以前の事件については、同級生もおらず先生も口を閉ざし、これ以上の情報は得られない

<2回目の調査>
翌日、図書館に行くと坂本先輩に会うことが出来る。彼に昨年いなくなったという生徒の話を聞くと「ああ、それはたぶん間宮のことだね」と答えてくれる。彼女、間宮麻美は坂本と同級生で、当時入学したての1年生だった。彼がいうには、彼女がいなくなったのは本当の話だが、行方不明になったのではなく、突然転校していったのだという。

「彼女がいなくなったっていう話は確かなんだけど、行方不明じゃなくて彼女は転校したんだよ。突然決まったことでね。元々彼女のご両親は海外で暮らしていたそうなんだけど、突然両親の所に行くことになったらしいんだ。街外れに古い洋館があるだろ。間宮のやつ、あそこに1人で住んでたんだ。前日まで普通にしてたのに急にいなくなって、それでいつの間にかそんな噂になっちゃったんじゃないかな。」

坂本が言うには、間宮には親しい友人がおらず、いつも1人でいる変わり者だったという。さらにオカルト好きで、カバンにはいつもよく分からないグッズや本などを持っていたらしい。彼の話を聞き〈知識〉ロールに成功すれば、坂本が言うように街外れに古めかしい洋館が建っていることを思い出す。失敗しても、洋館の場所を坂本から教えてもらうことができる。
尚、洋館は学校から離れた場所にあり、平日に行くことは出来ない。キーパーは間宮の屋敷を探索するのに、休日を1日使う必要がありそうだと探索者に伝え、次の休日に屋敷の探索に向かうよう探索者を誘導する。



保健室

保健室の扉を開けるとかすかに消毒液の香りが鼻をつく。戸棚にはいくらかの薬品が並べられていて、部屋に設置された3台のベッドは白いカーテンで仕切られている。窓際に置かれた机にはパソコンといくつかのファイルが並べられて、その前に自分より少し上くらいの年上らしい女生徒が1人、椅子に座っている。彼女は探索者を見ると「いらっしゃい。顔色が悪いわね、そこのベッドがあるから休んでなさい。先生には私から伝えておくから」と淡々とした口調で伝える。
彼女を見た探索者は〈知識〉ロールを行う。このロールについては判定結果によらず、探索者は彼女について、この学校で見たことがない生徒だと感じる。ここで彼女から何か話を聞こうとしても、彼女の声を聞いた探索者はなぜか彼女に促されるままベットに向かってしまい、そしてそのまま深い眠りへと落ちていく。尚、この女生徒は昨年行方不明になった間宮麻美だが、この時点では彼女の正体は探索者には明かさない。

しばらくして、探索者は保健室のベッドで目を覚ます。保健室で休息を取った探索者は耐久力を1D3ポイント回復する。目が覚めた時点でいつの間にかもう下校時刻となっており、この日の探索は行うことができない。
さらに探索者は自分の手に何かが握られていることに気づく。見ればそれが、銀色の十字架のネックレスであることが分かる。〈アイデア〉ロールに成功すると、眠りに落ちていく意識の中、先ほどの女生徒が探索者の手にそれを握らせたことを思い出す。失敗した場合、誰かがそれを握らせたことを思い出すが、それが誰だったかまでは分からない。そしていずれの場合も、その時かけられた次の言葉を思い出す。

「決してそれを手放さないように。ヴァルプルギスの夜に気をつけなさい」

ベッドから起きてカーテンを開けると、そこに先ほどの生徒の姿はなく、代わりに保健の先生が机に向かっている。彼女は「あら、あなたいつの間にそこにいたの?」と驚いた表情を見せる。彼女に女生徒のことを聞いても、彼女はずっとそこにいたが、誰も見ていないと話す。

不可思議な現象に遭遇した探索者は0/1の正気度ポイントを失う。



ヴァルプルギスの夜

保健室で女生徒が言っていた「ヴァルプルギスの夜」については〈オカルト〉、または〈図書館〉〈コンピュータ〉などを使って調査することが可能である。判定に成功すると、次の情報を得る。

主にヨーロッパに伝えられる春の祭りで4月30日、または5月1日に行われる。この祭りの前夜がヴァルプルギスの夜などと呼ばれ魔女たちがサバトを開き跋扈するなどと伝えられていた。



間宮の家

彼女の家は川向の寂れた一角にある。その家はひどく老朽化しており、また奇妙に歪んだ壁と天井は斜めに傾いている。1階にはリビング、台所、物置部屋、客間などがある。いずれの部屋も家具などは持ち出されたもぬけの殻で、埃が堆積している。探索中〈幸運〉ロールに失敗すると、古くなった床板を踏み抜いてしまい、1点のダメージを受ける。2階に上がる階段は古くギシギシと軋む音を立てる。2階にはいくつかの空き部屋の他に、古い木製の扉を1つ発見する。
扉を開けると中は書斎で、空の本棚の奥には引き出しの付いた古い木製の机がある。〈目星〉ロールに成功するか机の引き出しを探すと、そこでは一冊の手記を発見することができる。

日記の1ページ目には間宮麻美のサインが書かれている。日記を読み進めれば、そこには魔女ケザイア=メーソンと、彼女が従えるネズミの使い魔について書かれている。ケザイア・メーソンは空間を自由に行き来する術を操り、セイレムの刑務所から忽然と姿を消した。魔女が姿を消した牢獄の壁には、曲線と角度を組み合わせた不可解な図形が描かれていたという。彼女が従える大型のネズミは人の顔を持ち、冒涜的な声で笑う。
日記を斜め読みすると、間宮麻子はケザイア・メーソンに心酔し、彼女の謎を暴こうとしている記述が諸所に見受けられる。この日記に書かれた内容を完全に理解するには、1日かけてじっくりと読まなければならず、実質休日を1日使う必要がある。間宮麻美の日記を持ち帰って1日かけて読めば、彼女によって書かれた次の情報を得る。


彼女の日記を読み、冒涜的な知識に触れた探索者は1/1D4の正気度ポイントを失い、5%のクトゥルフ神話技能を獲得する。

そして、探索者は最後のページには次の呪文が書かれている。

木々への司令(黒い仔山羊の従属)
任意のマジック・ポイントを消費して、1D3の正気度ポイントを失う。消費したMP1点につき10%を目標に判定を行う。成功すると『黒い仔山羊』を従属させることができる。96〜00は常に失敗である。この呪文は「黒い仔山羊の召喚/従属」(クトゥルフ神話TRPG P.282)の不完全なもので、『黒い仔山羊』を呼び出すことはできない。

タフ=クレイトゥールの逆角度
この呪文は「門の創造」の呪文(クトゥルフ神話TRPG P.289)の亜種である。高度に数学的な呪文であるため、INTが18以下の者が試みることはできない。ある種の曲線と角度を組み合わせた図形を用いて、時空を超える門を作り出す。この呪文で門を創造するには19以上のINTが必要であるが、既に開かれた門を超えるだけであれば門を創造する際に使用されたのと同じマジックポイントを消費することで空間を転移することができる。

探索者は「木々への司令(黒い仔山羊の従属)」と「タフ=クレイトゥールの逆角度」の呪文を習得することができる。ただし「タフ=クレイトゥールの逆角度」はINTが19以上なければ門を創造することはできない。「タフ=クレイトゥールの逆角度」についての記述を読んだ探索者は、この呪文で作り出す図形がかつて職員室で相崎がノートに書いていたものと同じであることに気づく。



イベント


4/25(水) 朝

このイベントは4/25(水)の朝に差し込む。探索者が学校へ行くと、絵美が心配そうに体調はどうかと話しかけてくる。ここで探索者が〈目星〉ロールに成功すると、彼女の腕に浮かび上がるミミズ腫れのような跡があることに気づく。見ればそれは複雑な曲線と角度を組み合わせたような模様で、職員室で相崎の机の上にあったノートに書かれていたものと似ている。
探索者がどうしたのかと問いかければ、彼女もそれに初めて気づいたようで、いつの間にと驚き、恥ずかしいから見ないでと慌てて隠す。彼女はこの模様についての知識はなく、〈心理学〉ロールに成功すれば、彼女が羞恥心から模様を隠そうとしており、心当たりがないという彼女の言葉に偽りはないと感じる。しかし〈心理学〉ロールに失敗した場合は、羞恥心から模様を隠そうとする彼女の様子を、何かを隠しているのではないかと誤認してしまう。



4/25(水) 放課後

このイベントは、4/25(水)の放課後までに探索者が保健室に行かなかった場合に発生する。探索者は学校の授業中、あるいは放課後廊下を歩いている際に、疲労感から立ちくらみを起こして倒れてしまう。近くにいた絵美が探索者にかけより、保健室へ同行してくれる。
この後の流れは探索パートにある「保健室」と同様である。絵美は保健室の中まで一緒に入ると、あとはそこにいた女生徒に任せて部屋を後にする。または、探索者が目を覚ますまで一緒にいてもよい。この場合、目を覚ました探索者に寄り添う彼女だが、なぜか保健室にいた女生徒(間宮麻美)のことを覚えておらず、最初から自分が看病していたという。



4/26(木) 朝

このイベントはシナリオ開始から4日が経過した4/26(木)の朝に差し込む。朝、探索者が学校へ行くと田辺絵美が学校に来ていない。クラスメイトや教師の相崎に聞けば、母親から体調不良で休むと連絡があったという。相崎は放課後、絵美にプリントを届けるよう探索者に伝える。絵美に電話やメッセージなどで連絡をとったり、放課後に彼女の家を訪れると、絵美は「ちょっと体調を崩しただけだから大丈夫。明日は学校に行けるから」と答える。

・〈アイデア〉ロールで判定した場合:
成功した探索者は、彼女の表情や声色に不安の色が浮かんでいることに気づく。

・〈心理学〉または〈精神分析〉で判定した場合:
成功した探索者は彼女が何かを隠していることが分かる。

直接彼女の家を訪問した場合、〈目星〉ロールに成功すれば、彼女の手首に巻かれた包帯にも気づくだろう。

絵美を問い詰めれば、彼女が昨晩、人間の顔をしたネズミに襲われた夢を見たことを教えてくれる。そして、驚いて目を冷ませば、手首にはネズミに噛まれたような跡から血が滴っており、強い疲労を感じたのだという。彼女は探索者とした話を思い出し、噂は本当なのではと怯えている。



4/26(木) 夜

このイベントは4/26(木)の夜、探索者がこの日の探索を終え、自宅で就寝中に発生する。探索者の夢の中に、再びあの老婆が現れる。彼女は探索者に次のように告げる。

『お前は行かなければならない。『暗黒の男』に会い、究極の混沌の中心、アザトースの玉座へ』

彼女は爪の長く伸びたシワだらけの手で探索者の腕を掴むと、その瞬間に、探索者の目の前が真っ暗になる。やがて視界が開け、気が付けば探索者は絵美の部屋にいる。横には探索者の手を取る老婆と、そして見たことのない、黒いローブに身を包んだ長身の男が一緒にいる。男は頭からフードを被っており、顔を伺うことはできない。ベッドの上には絵美が眠っている。老婆は探索者を男に預けると、ナイフを手に眠ったままの絵美の元へと歩いていき、それを大きく振り上げる。探索者が彼女を止めようとしても、体の自由が効かず大声を上げることもできない。そして、彼女に向けて老婆はナイフを振り下ろす。

老婆がナイフを振り下ろした所で、探索者は自分のベッドの上で目を覚ます。日付を見れば4/27(金)の朝になっている。探索者の足には土がついている。気味の悪い悪夢にうなされて目を覚ました探索者は全身に疲労感のようなものを感じ、耐久力を1点喪失する。このダメージは応急手当や医学で回復することはできない。



4/27 朝

絵美が襲われる夢を見た日、学校へ行くと学校に絵美の姿はない。彼女の席は空のままだが、周りの人間は誰一人、相崎すらも気にする様子はない。同級生や先生に話を聞けば、皆そんな生徒は知らないという。机やロッカーにも絵美がいた痕跡は見つからず、電話をかけても「この番号は現在使われておりません」との音声が帰ってくるだけだ。彼女の家があった場所は空き地になっており何もない。田辺絵美という存在が突然消えてしまったことを知った探索者は0/1D4の正気度ポイントを失う。



ヴァルプルギスの夜

このイベントは4/30、または5/1のヴァルプルギスの夜の祭日に発生する。キーパーは探索者の呪文の習得、探索の進行が遅れている場合、4/30を探索にあてて5/1にこのイベントを発生させてもよい。

探索者が調査に向かった先で《タフ=クレイトゥールの逆角度》の門が出現する。候補としては、以下の場所があるだろう。

① 絵美の部屋
② 相崎の家
③ 学校、職員室の相崎の机
④ 学校、保健室
⑤ 探索者自身の部屋

上記以外の場所でも、キーパーが適切だと考えれば門を出現させても良い。門は探索者がそこを詳しく調べるか〈目星〉ロールに成功すれば発見することができる。探索者は高度に数学的な曲線と角度で構成された図形のようなものを発見する。探索者が図形に近づくと、図形から強い光が発せられて探索者の意識はその図形の中へと引きずり込まれていく。

気がつくと、探索者は暗い森の奥のような場所にいる。そこは広場のような開けた一角で、中央には黒い自然の石でできたモノリスが立っている。モノリスの前には木製の台で作られた祭壇が設けられ、その上に絵美が横たえられている。彼女は目を閉じたまま、意識がない様子ではあるものの、規則正しく上下する胸から、まだ彼女が生きていることが分かる。周囲の木々には不気味な鳥がとまり、広場にいる探索者らを見下ろしている。〈生物学〉または〈博物学〉に成功すれば、それがウィップアーウィル(夜鷹)であることに気づくことができる。
探索者が絵美に近づこうとすると、モノリスの後ろから相崎と、フードをかぶった黒ずくめの男が姿を現す。相崎の足元にはあのネズミがいる。

相崎の正体はケザイア・メーソンの意思を継ぐ魔女だ。彼女は毎年ヴァルプルギスの夜に、崇拝する神、アザトースに生贄を捧げてきた。アザトースは究極の混沌の中心に眠る白痴の王にして、万物の創造主、この世界はかの神が見る夢であると彼女は語る。そして同時に、彼女は探索者に対して興味を示した。

「あなたは気づいていないかもしれないけれど、あなたはこの世界にとっての特異点──外の世界、高位の者との特別なつながりを持った存在。神がこの世界を視るための目のようなものなのよ。そう、今もそこにいるのでしょう?」

彼女は空を見上げ、誰ともない「あなた(プレイヤー)」に対して、そう語りかける。そして、彼女は特異点である探索者を、外なる神、アザトースの元へ運ぶ役割を持っているのだという。そして、一通りのやり取りが終わると彼女は正体を現し、彼女の肌はひび割れ、長い鼻・皺だらけ頬を持つ恐ろしい老婆の姿へと変化していく。
その姿は伝説に聞く邪悪な魔女そのものであり、その姿を見た探索者は0/1D4の正気度ポイントを失う。彼女は曲がりくねった肉切りナイフを手に、探索者へと襲いかかる。

◆ 相崎夕子、探索者の担任、邪悪な魔女
年齢:29歳、職業:高校教師
STR 12 CON 13 SIZ 10 INT 21 POW 23 DEX 10 APP 12 EDU 25
正気度 0 耐久力 12
ダメージボーナス なし
武器:肉切りナイフ40% 1D6+DB
組み付き 50%⇒窒息(毎ターンCON×(10-経過ラウンド)に失敗すると1D6ダメージ)
技能:天文学 35%、化学 75%、言いくるめ 70%、心理学 60%、薬学 60%、誘拐 70%、生徒に説教をする 65%
呪文:ニャルラトテップとの接触、アザトースの呪詛、外なる神の従者の召喚/従属、ヴールの印、タフ=クレイトゥールの逆角度
正気度喪失:魔女の姿になった彼女を見て失う正気度ポイントは0/1D4。


戦闘中、探索者は毎ラウンド、回避または他行動の後、幸運判定を行う。成功すると、女生徒(間宮)に以前もらった十字架を見た相崎が突如苦しみ始める。十字架は銀色の光を放ち、即座に相崎に1D6ポイントのダメージを与える。さらに以降のラウンド、〈こぶし〉や〈DEX✕5〉などの判定に成功すると、相崎に十字架を見せつけ、1D6のダメージを与えることができる。

相崎が倒されると、それまで黙っていた黒ずくめの男が前に出てくる。彼はフードを取ると、その下には坂本先輩の顔がある。彼は今回の件は十分に楽しませてもらったと満足そうに探索者に語りかける。探索者が彼に動機や正体を問いかければ、彼はただ暇つぶしでやっているだけだと答える。彼の正体はニャルラトテップの化身である暗黒の男だ。キーパーはこの他にも探索者からの問いかけに対して、トリックスターである彼をイメージしながら受け答えを行う。
やがて彼は探索者の努力に免じて絵美のことは返してやろうという。「ただし、生きて帰れたらだけどね」。彼はそう言って、呪文を詠唱する。

いえ!いえ!しゅぶ・にぐらす! 千匹の仔を孕みし森の黒山羊よ
いあーる むなーる うが なぐる となろろ よらならーく しらーりー
いむろくなるのいくろむ のいくろむ らじゃにー
いえ!いえ!しゅぶ・にぐらす!

探索者は重い足音と共に闇の中から何か黒いものがやってくるのに気づく。木とは違う、黒くて何本ものロープをつけているかのような何かがうずくまるように、その腕を弄るようにくねらせている。ネバネバしたゼリー状の木、ヒヅメと口と蛇のような腕を持つその怪物は、万物の母にして黒き豊穣の女神、千匹の仔を孕みしシュブ=ニグラスの落とし子───"黒い仔山羊"

黒い仔山羊を見た探索者は1D3/1D10の正気度ポイントを失う。仔山羊はその長いロープのような腕を探索者に伸ばす。この攻撃の命中率は80%で、受け流しはできず、回避に失敗した探索者は黒い仔山羊に掴み上げられる。仔山羊は一撃で探索者を屠ることもできるが、そうはせず弄ぶように、探索者から毎ターン1D3のSTRを吸収していく。そしてSTRが0になると、探索者は意識を失ってしまう。
この状況から逃れる唯一の方法は、間宮麻美の日記から習得した《木々への命令》を使うことだ。呪文の発動に成功すれば、黒い仔山羊は探索者に従属し、探索者の命令を実行してくれるだろう。

<暗黒の男に攻撃する>
暗黒の男を攻撃するように命令すれば、4本のロープのような触肢が暗黒の男に襲いかかる。そして、探索者は黒い仔山羊の触肢が暗黒の男を叩き潰すその瞬間を見てしまう。彼は不気味な笑みを浮かべたまま黒い仔山羊の触肢に叩き潰され、一瞬にして肉片と化す。

突如として、倒れた彼の死体が震えながら膨張していく。皮膚がやぶれ、赤黒い肉の塊が吹き出してくる。高くそびえ、膨張を続けるその肉塊には数え切れないほどの濡れてぴくぴくと蠢く触手が生え、そこらじゅうによだれを垂らした口が開く。黒いウジの塊であるかのような嘆きもだえるその塊は、聞くものの気を狂わすような金切り声をあげる。

現れたのはニャルラトテップの怪物的な姿の1つである嘆きもだえるもの(マレウス・モンストロルム P.216、またはインスマスからの脱出 P.129)である。嘆きもだえるものは空に向かって長細く伸び、そのまま天へと昇っていく。残された探索者は1D8/4D10の正気度ポイントを失い、やがて意識を失っていく(エンディングAへ)。

<逃げる>
黒い仔山羊に攻撃以外の司令(その場から逃走する、探索者たちを守るなど)を与えた場合、黒い仔山羊は触肢で探索者と絵美をつかみあげて、森のなかへと走り出す。やがて探索者の意識は疲労と振動で徐々に闇の中へと落ちていく(エンディングAへ)。

<呪文に失敗する>
探索者が呪文の発動に失敗してMPが底を付いてしまった場合、探索者はやがて黒い仔山羊に掴まれたまま、意識を失っていく。この場合、エンディングBへと進む。



結末


エンディングA

探索者は気がつくと、病院のベッドで横になっている。探索者が目を覚ますと、心配していた両親や友人が「よかった」と泣きついてくる。探索者は行方不明になり、翌日近くの公園で意識不明の状態で見つかったということだ。また探索者の横には、田辺絵美も一緒に倒れていたということで、彼女も同じ病院に運ばれ目を覚ます。

ここで探索者は〈アイデア〉ロールを行う。判定の成否によらず、探索者は眠っている間におぼろげに、朦朧とした意識の中で、誰かが声をかけてきたのを思い出す。彼女は学校の制服を着ていて、自分より少し年上くらいのように見えた。

「──よく、がんばったね。
 ────」

最後の言葉は聞き取ることができなかったが、ともあれ恐ろしい悪夢は終わりを告げ、平穏な日常へと生還したのだと探索者は実感することができる。

後日、学校へ行くと新しい担任が着任してくる。先任の相崎先生は家庭の事情で急遽退職することになったという。また坂本先輩に関しては、誰に聞いてもそんな人物は知らないという答えが返ってくる。学校のロッカーや生徒の名簿を調べても、彼に関する痕跡は、まるで最初からそんな人物などいなかったように、すっぽりと消えてしまっているのだ。

こうして、相崎を倒し、絵美を救いだした探索者は3D6の正気度ポイントを獲得する。また暗黒の男を倒した場合、追加で1D10の正気度ポイントを獲得し、さらに〈クトゥルフ神話〉技能を3%獲得する。



エンディングB

探索者は気がつくと、病院のベッドで横になっている。探索者が目を覚ますと、心配していた両親や友人が「よかった」と泣きついてくる。探索者は行方不明になり、翌日近くの公園で意識不明の状態で見つかったということだ。
しかし、発見されたのは探索者だけで、田辺絵美のことを聞いても、誰もそんな生徒のことは知らないという。後日、学校へ行くと新しい担任が着任してくる。先任の相崎先生は家庭の事情で急遽退職することになったという。また坂本先輩に関しても、絵美と同様に最初からそんな生徒がいなかったかのように、存在した痕跡そのものがすっぽりと消えてしまっている。
ともあれ恐ろしい悪夢は終わりを告げ、無事に生還した探索者は2D6ポイントの正気度ポイントを獲得する。

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